早い人は「午後3時」にもう仕事を終えている…ドイツのビジネスパーソンの朝が「午前6時」に始まるワケ

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日本に比べて約1.5倍高い労働生産性、年間266時間短い労働時間、約40%多い平均賃金、GDPは日本を抜き世界第3位……。限られた時間で最高の効率を発揮し、結果を出すドイツのビジネスパーソン。そんな彼らはどのように1日を始めるのか? 『ドイツ人のすごい働き方』の著者で、商社駐在員としてドイツ在住17年の西村栄基氏が、日本人が知らないドイツ人の「モーニングルーティン」を教える。

朝早くから働き、夕方には帰宅する

ドイツ人の働き方を解説するにあたって、まずは彼らが実際にどのように1日を過ごしているのか、私が以前勤務していたドイツ企業を例にとって再現してみましょう。

朝6時。

人々はすでに1日の始まりに向けて動き出しています。

夜明けの空は、やわらかな光に包まれ、街は徐々に活気づき始めます。

トラム(路面電車)の中では、通勤客たちが静かに新聞を読んだり、音楽を聴いたりしています。車窓からは、目覚めつつある街の風景が見え、遠くではカフェが開店の準備を始めています。

ドイツでは、このように朝早くから働き、夕方には帰宅する生活が一般的です。

早起きの人は、7時前から出勤し、午後3時頃には1日の業務を終えていました。

会社の同僚ステファンに、この労働スタイルについて尋ねてみたことがあります。

「ステファン、どうしてドイツではこんなに早くから働いているの?」

「僕らは、仕事とプライベートのバランスを大切にしているんだ。早く働き始めて、効率よく仕事を済ませ、夕方は家族や趣味の時間に使うんだよ」

何よりも大切なのは「個人の時間」

このように、ドイツでは個人の時間を重視し、労働時間内で仕事を完結させる文化が根付いています。

ほとんどの企業でフレックスタイム制を採用しているため、出勤時間は自由に決められます。週に38.5時間から40時間の労働時間で、基本的に残業は一切しません。朝の時間帯に集中して仕事をし、労働時間内に終わらせることにフォーカスしています。

朝8時前、デュッセルドルフ市内の駅に降り立つと、清々しい朝の空気が私を迎えてくれました。ビジネス街には活気があふれ、人々のせわしげな足音が、1日の始まりを告げています。

オフィスに到着すると、すでに多くの従業員が仕事にとりかかっています。

耳と鼻に飛び込んでくるのは、エスプレッソマシンが奏でる心地よい音と、コーヒーの香りです。

従業員たちは、20平米ほどの「カフェ」エリアに集まると、「グーテンモルゲン!(Guten Morgen!)」と元気に朝の挨拶を交わします。

「カフェタイム」でエネルギーを高める

私のかつての勤務先では、この朝の15分間ほどのカフェタイムが、エネルギーを高める重要な役割を果たしていました。

この「カフェ」エリアには、ソフトドリンクやミネラルウォーターが入った冷蔵庫、エスプレッソマシーン、給湯器と小さな台所が備え付けられています。

ドイツの職場では、このようなスペースを設けるのが一般的で、当時私が働いていた職場のキッチンにはテーブルや椅子がなかったため、立ち話が中心となっていました。

「ねえ、週末はどうだった?」

とコーヒーを手にした同僚が尋ねると、別の同僚が答えます。

「子どもと公園に行ってきたよ。天気が良くてね、とてもリフレッシュできたよ」

その後、話題は仕事に移ります。

「そういえば、新しいプロジェクトの進捗はどう?」

「うん、昨日はプログラムがうまく動かなくて半日デバッグしてたんだけど、帰る前には問題が解決したから、夜にかけてジョブを流しているんだよ。その結果をこれから確認するところさ」

日本の職場も取り入れたいドイツの習慣

このように、カジュアルな会話から仕事の話題へと自然に移行するのが、このカフェタイムの特徴です。

この空間は、完全にフリーでフラットです。つまり、いつ、誰が、このスペースに入るのかは自由ですし、ここでは、職場の上下関係は存在しません。いわゆる「心理的安全性」が保たれていたことから、会話の中から自由な発想が生まれやすくなっていました。

日本では、男性を中心に喫煙率が高かった頃は、「喫煙室」がこの「カフェ」コーナーの一部の役割を担っていました。マネジメントクラスの多くが喫煙していたため、「重要な人事は、喫煙室で決まる」と言われていた時代もありましたね。

しかし、現代の日本では、大企業を中心にフリーアドレス制のオフィスが普及し、立ち話のスペースも設けられるようになってきました。

喫煙者でなくとも、オフィス内で自由に会話できる環境が整っています。「箱」は整ってきているのですから、ドイツのような文化が習慣として定着してほしいものです。

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