「パニック症」になりやすい人の特徴って? ストレスとの関連性、遺伝的な要素など、ウソホントを徹底解説!

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パニック症は、パニック発作をくり返す病気です。パニック発作は、身体的な原因はないにもかかわらず、さまざまな不快な症状が突然生じるもの。パニック症の本質は、「このまま死ぬかもしれない」という強い恐怖感・不安感にあります。恐怖や不安は、危険を避けて生き延びていくために必要なものですが、行きすぎれば生活に支障をきたします。発作を避けようとしてどんどん「できないこと」が増えていけば、自己否定感が強まり、うつ状態に陥ることもあります。そんな「パニック症」の最新情報や、正しい理解のための本『名医が答える! パニック症 治療大全』より一部抜粋してお届けします。

前編<発作を起こして救急搬送されたが「異常なし」! パニック発作では死なない、その仕組み>

ストレスや忙しさのせいでしょうか?

パニック発作を起こしたことに対し、「ストレスがたまっているせいだ」「忙しすぎるのだろう。休んだほうがいい」などと言われたり、自分でもそう感じたりしている人も多いでしょう。実際、ストレスが強かったり、非常に多忙であったりすることで体調が乱れ、パニック発作が起こりやすくなるおそれはあります。

ストレスの影響ストレスを感じているとき、脳内にはノルアドレナリンという神経伝達物質の分泌が増えるなどといった変化が生じ、交感神経の働きが高まります。交感神経の高ぶりが続くと自律神経症状が出やすくなります。つらいこと、いやなことが続いているときだけではありません。

一般的にはよいこととされ、自分自身、やる気に満ちているときも交感神経の高ぶりがみられます。

忙しさの影響忙しさはストレスになることもありますし、緊張も続きやすくなります。忙しい時期ほど、知らず知らずのうちにカフェインを含む飲料をたくさん摂取しているという人もいます。

・生活リズムの乱れによる体調の変化緊張が続いたり、忙しい生活が続くうち、睡眠不足に陥ったり、食事の時間が不規則になったりしがちです。生活リズムが乱れることで体調の変化が起こりやすくなります。

体調の変化はだれにでもみられることですが、それがパニック発作につながるかどうかは、体調の変化をどうとらえ、どのように反応していくかによります。つまり、ストレスや忙しさはパニック発作の「原因」とはいえませんが、「誘因」であるとはいえます。発作につながりやすい体調の変化を整えるという意味で、ストレス対策を考えたり、忙しすぎる生活を見直したりすることは必要です。

とはいえ、人生にストレスはつきものです。多少のストレスがあっても、また忙しく過ごしながらも発作に悩まずに暮らしていけるようにするために、適切な治療を受けることが大切です。

パニック症になりやすいのは、どんな人ですか?

パニック症の「なりやすさ」にかかわる要因はいくつかあります。その多くは避けがたいものです。

・遺伝的な要因パニック症になるかどうかは、遺伝的なことが大きく関係していると考えられています。家族にパニック症の人がいる人ほど、発症する確率は高くなります。血縁関係の近い家族(第一度近親者)にパニック症の人がいる場合、パニック症になる危険率は約8倍ともいわれます。

・男女差理由は定かではありませんが、パニック症は女性のほうがなりやすく、女性の有病率は男性の2〜3倍といわれています。

・年齢パニック症は、比較的若い年齢で発症しやすい傾向がみられます。とくに20歳代での発症が多くみられます。女性の場合は15〜24歳、そして更年期世代の45〜54歳も有病率が高めです。パニック症の生涯有病率(パニック症と診断されたことがある人の割合)は1.5〜2.5%とされますが、65歳以上の有病率は0.1%にすぎません。ただし患者数の総数が多いため、年配の患者さんや、男性の患者さんもめずらしいわけではありません。

・生活スタイル都会に住む人と郊外に住む人、喫煙者と非喫煙者では、いずれも前者のほうが発症率は高めであるとされています。

・過去の体験との関連つらい体験により危険を察知する能力が高まったり、ネガティブな考えをもちやすくなったりすることはあるでしょう。しかし、過去の生育環境やトラウマ体験が、直接パニック症の原因になるという考え方に科学的根拠があるわけではありません。過去の体験の影響でパニック発作が生じていることが明らかなら、それはパニック症ではなく、PTSDによるものと考えられます。

発作を起こして救急搬送されたが「異常なし」! パニック発作では死なない、その仕組み