広大な敷地を誇る日野公園墓地(20日、横浜市港南区で)

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 横浜市港南区の市営日野公園墓地で、墓参者用のゴミ置き場に10年以上にわたり、家電や家具などの不法投棄が続いている。

 8月には不法投棄の疑いで男が書類送検された。周辺は閑静な住宅街。住民からは衛生面や治安を心配する声が上がる。(北川穂高)

家庭ゴミや残土

 美空ひばりさんも眠る日野公園墓地の広さは、東京ドーム6個分の約27万9000平方メートル。墓参りの際に出る枯れた供花や、敷地内で伐採した木々を捨てるためのゴミ置き場が計31か所設置されている。

 「一般家庭ゴミや粗大ゴミ等は捨てないでください」。そう書かれた看板の近くに20日、椅子やプラスチックのかごなどが放置され、別の日にはファストフードの袋が散乱していた。管理する市環境施設課によると、夜間を中心に家庭ゴミや残土、産業廃棄物の不法投棄が10年以上前から後を絶たないという。

誰でも出入り

 敷地内には市道が通っており、誰でも自由に出入りできる。市内5か所の市営墓地の中でも特に規模が大きく、不法投棄の被害が目立つというが、市の担当者は「夜間の立ち入りを禁止したくても公道なので閉鎖できない。防犯カメラの設置にも多大な費用がかかる」と打つ手がない状況だ。

 港南署が8月、廃棄物処理法違反の疑いで書類送検した戸塚区のタクシー運転手の男(51)は、オーディオ機器など約130キロのゴミを不法投棄した疑いがもたれている。男は以前から、この墓地で不法投棄が相次いでいることを知っていて、ゴミを捨てに来たという。

「罰当たりだ」

 近隣住民からは困惑の声が上がる。毎朝散歩している70歳代女性は「ゴミを見るといい気持ちはしない。なぜ家で処分しないのか」。墓参りに訪れた男性(75)も「大きなタンスが捨てられていたことがある。墓のそばに捨てるなんて罰当たりで非常識だ」と憤る。

 不法投棄の問題に詳しい関東学院大の津軽石昭彦教授(地域環境政策)は、一度ゴミが捨てられ始めると、不法投棄が続く傾向を指摘。「パトロールや啓発活動など、行政が利用者や住民を巻き込み、ゴミを捨てさせない環境を地域全体で作っていくことが大切だ」と語る。

神奈川県内投棄、年間250トン前後

 神奈川県資源循環推進課によると、県内の不法投棄量は近年、年間250トン前後で高止まり状態にある。引っ越しの際に出る家具や家電、解体工事による産業廃棄物などが大部分を占め、人目につきにくい山間部などに捨てられるケースが多い。

 神奈川県は市町村と合同でパトロールを行い、被害が多発する場所に監視カメラを設置するなど対策に乗り出している。担当者は「個人も事業者も、少しでも不法投棄すれば犯罪になる。軽い気持ちで捨てないで」と訴える。不法投棄物を見つけた場合は、かながわ不法投棄情報ダイヤル(045・210・4151)へ。