企業は、いまどきの新入社員たちにどう向き合い、何をしていけばよいか

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24卒の新入社員が各企業に入社して約半年が過ぎた。人事部では、25卒の内定者フォローに切り替えている採用・教育担当者が多いだろう。そうしたなか、キャリア志向のある、昨今の新入社員は、職場の不満を口にしないまま、入社1年も経たないうちに離職してしまうケースがある。企業の人事部は新入社員にどう向き合うべきか――「『フレッシャーズ・コース(FC)』(*1)を活用した自律型新入社員研修」のプログラム設計を手がけるほか、新入社員の入社後フォロー研修の講師としても活躍する内山厳さんに話を聞いた。(ダイヤモンド社 人材開発編集部、撮影/菅沢健治)

*1 「フレッシャーズ・コース2025」(ダイヤモンド社)は、全7巻ワンセットの新卒内定者フォローツール

演劇の“ワークショップ”の方法を研修に生かす

 現在、青山学院大学の「ワークショップデザイナー育成プログラム」の講師のほか、企業向けの研修講師として活躍している内山厳さん。内山さんは、研修講師以外に、“俳優”としてのキャリアも合わせ持っている。

内山 両親が俳優だったこともあって、私は、大学卒業後に就職せず、アルバイトをしながらプロの俳優として活動を続けていました。そんななか、25歳の時に、火事で実家が全焼するという事故が起きたのです。火元が我が家で、生活資金に困るだけでなく、周囲に見舞金なども支払わなくてはならない状況となってしまいました。支援を申し出てくださった方々の中に、たまたま、研修会社を経営されている方がいて、私はその会社で働きながら、俳優の仕事を続けることにしたのです。

 ある日、研修会社の方から、「研修の講師をやってみないか?」と声をかけられました。企業を対象にした大規模な研修があって、その1クラスの担当講師に空きが出てしまったとのこと。「いきなり“月9(ドラマ)”に俳優デビューするようなもの」と言われながら、研修講師を初めて務めてみたところ、なぜか、他の講師の方々に比べて、私の評価が高かったのです。

 当時の私は研修に関する知識もほとんどなく、在籍していた部署も、研修事業に直接に関わりのあるところではありませんでした。ただ、事前にいくつかの研修を見学させてもらっていて、「こういう状況をつくれば、受講者からこんな反応が起こる」とか、講師の方々の立居振る舞いを見て、「こういうふうにやればいいんだ」と理解していました。私(内山厳)という素材を使うなら、こういう進め方や話し方ができる――研修講師という仕事は、ステージ上での役作りに通じる、“演技”に似た側面があると思いました。そうして、思いがけないデビューをきっかけに、依頼がたくさん舞い込むようになり、いつの間にか、研修講師の道を歩んでいました。

内山厳 Gen UCHIYAMA

G office 代表
青山学院大学 プロジェクト教授

1969年、東京都出身。HB Studio(New York)とRADA(London)で演劇を学び、熊本大学大学院でインストラクショナルデザインを学ぶ。演劇分野では、自らの活動のほか、子どもから大人までの、演技・表現指導などにも携わる。人材開発分野では、企業向けの研修講師として、新入社員から管理職に至る幅広い層に向けて、主に、ワークショップ型の学習プログラムを提供している。「『フレッシャーズ・コース(FC)』を活用した自律型新入社員研修」(ダイヤモンド社)のプログラム設計を手がけるほか、新入社員の入社後フォロー研修にも登壇している。講師を担う、青山学院大学の「ワークショップデザイナー育成プログラム」は、2014年にHRアワードを、2015年にグッドデザイン賞を受賞した。

 研修講師の仕事が成功したのは、「“演技者”としての視点があったから」と、内山さんは自己分析する。そうして、研修と演劇の2つの分野を掛け合わせた、自分ならではの“専門性”を模索し始めたという。

内山 30代の半ばに、演技を学ぶために海外の演劇学校に留学しました。帰国して、「これまで以上に本格的に演劇をやりたい」と思う一方、当時は、研修という教育ビジネスが私の生活基盤にもなっていました。ですから、「演劇と教育という2つの分野の相乗効果がある “専門性”を磨きたい」と考え、「ワークショップ」という参加体験型の活動なら、独自性が得られるのでは?と思ったのです。そこで、青山学院大学の「ワークショップデザイナー育成プログラム」の講座を受講したところ、(講座の)先生の講演と私(内山)のワークショップを一緒に行う提案をいただき、さらに、学部の授業も、大学院の授業も……と、話がどんどん広がって、現在では、私自分が、その「ワークショップデザイナー育成プログラム」の講師を務めるに至っています。

 そもそも、演劇という分野ではワークショップが盛んに行われていて、私も留学する前から海外の演出家や指導者のワークショップをたくさん受けていました。ワークショップは、正解を教えてもらうものではなく、みんなで一緒に考えながら、学びを構成していくもの。研修でも、先生の講義を一方的に聞くのではなく、参加者がともに学び、相互作用を生み出すことが重要だと私は考えました。そこで、参加者同士のコミュニケーションを促すためのグループワークや、話し合いをスムーズにするファシリテーションを行っていきました。演劇におけるワークショップでの経験を、研修の中で生かしていったのです。

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