充実した毎日を過ごすには、見栄や我慢などの内面を手放すことが大切です。「50歳がその節目のひとつ」と語るのは、カナダ在住のミニマリストでブロガー・筆子さん(現在60代)。ここでは筆子さんに、豊かな暮らしを楽しむための手放し方を聞きました。

ものと一緒に「モヤモヤ」を手放せばグンと快適に

抱え込んだものや思い込みを手放して、シンプルに暮らす快適さをつづるブログや著書が人気の筆子さん。

「手放すのに年齢は関係ないけれど、50歳前後はひとつの節目です。自分の生き方や好みはある程度明確になっているし、老後のことも視野に入る時期。一方で、まだまだ体力も気力もあるから、新しい人生を始める気持ちで手放せば、身軽になって日々の暮らしがグンと快適になるはず」(筆子さん、以下同)

そんな筆子さんが、ものを上手に手放すコツを指南。

「一気にがんばりすぎず、時間や場所を区切って少しずつ手放しましょう。また、なかなかものを手放せないのは、不安や悩みなど、メンタルと関係していることも。ものを手放すのと同時進行で、自分の思いを書き出すと、モヤモヤした気持ちを手放すことができ、気持ちが整います」

「見栄」を手放して内面と向き合う

ブランド品や、インフルエンサーおすすめの品などを使わないのにもち続けている人は、見栄が手放せない原因かもしれません。

「他人の目より自分軸を大切にすれば、気持ちもラクに」

●「見栄」の手放しリスト

<もの>

・高価なことが理由で残している服、靴 ・ブランドものの食器 ・インフルエンサーおすすめの流行のアイテム ・あまり乗らないクルマ

<メンタル>

・他人と比較すること ・自分より他人を優先する ・精神的なものよりものが重要だと思う ・お金への執着

使っていない高価な品を思いきって手放せば、その分空間がすっきりし、居心地がよくなるはず。

「他人の目を気にして自分に自信がない人は、ものに執着しがちです。ものを手放しながら、自分の内面と向き合う訓練を」

●自分との小さな約束を守る

1日15分片づける、ジョギングなどの軽い運動をするなど、自分でやろうと決めたことを守ってみましょう。

「自信がついて他人の目が気にならなくなり、ものへの執着を手放せます」

●スマホを使わない時間をつくる

SNSを見ると、他人がうらやましくなりがち。

「夕食のときはスマホを見ない、電車ではスマホを見ずに読書をするなど、デジタルデトックスを。自分の心の声に意識を向けて」

「我慢」をやめて自分の優先度を上げる

家族からの贈り物や重い鍋など、不便を我慢して使い続けているものたち。

「いい人、いい妻、いい母親だと思われたくて、自分を抑えているのかも。50歳からは自分優先で」

●「我慢」の手放しリスト

<もの>

重い鍋 義理でもっているもの インクのかすれたボールペン ぴったりくるものがなくてとりあえず使っている収納

<メンタル>

いい妻、母だと認めてほしいと思うこと 必要以上にもったいないと思うこと 自分のストレスを無視すること 他人の機嫌をとろうとすること

使いにくいものを使い続けたり、“とりあえず”のものですませるのを習慣にしていると、理想の暮らしはいつまでたっても実現しません。

「50歳になったら、30歳のときより確実に残り時間は少ないのです」

●好きなものを最初に食べてみる

好きなものは最後まで取っておくタイプなら、これからは最初に食べ、自分を優先する練習をしてはいかがでしょう。

「我慢はストレスを生み、余計な買い物や、ものをため込んだりする原因に」

●プチストレスに敏感になる

インクのかすれたペンを使い続けていながら、その我慢を自覚していないケースも。

「プチストレスに敏感になり、自分の“好き”や“心地よさ”と向き合う練習をしてみて」

「思い出」を厳選して、価値を高める

「思い出」というだけで“とっておくもの”と思うなら、思考停止している証しです。

「思い出はものではなく心のなかにあります。そして、大切なのは昔より今なのです」

●「思い出」の手放しリスト

<もの>

手紙、年賀状 写真、子どもの作品 親しい人からプレゼントでもらったもの 記念品、遺品

<メンタル>

やたらと後悔すること 過去の思い出への執着 今の生活を優先しない考え方

思い出は時間とともに増えていくもの。すべて取っておこうとすると、結局どれも大切にできません。

「厳選して、今の暮らしの風通しをよくしましょう。YouTubeで30年前の曲を聴くといった方法でも、思い出に浸れるものです」

●迷ったら手放そう!捨てたい理由があるはず

迷ったときは手放してOK。

「もう過去にすがらなくていいと思ったなど、手放そうと考えた理由があるはず。過去より今を大切にして、自分を更新する努力をしましょう」

●手放すことで、残したものの価値が高まる

100の思い出をすべて大切にできませんが、1つの思い出を大切にすることはできます。

「選ぶことで、残したものの価値は上昇。選び出す作業自体も、思い出に触れる経験に」