急いでいたようです。男性は男湯に突進しました。そして叫びました。「携帯電話拾われた方〜!」、裸の男性たちはびっくりしました。髪を洗っていた記者は片方の目をどうにか開けて手を上げました。

そのように携帯電話を探していたキム・ドンヒさんはクレジットカード配送業者です。彼の1日の稼ぎは携帯電話にかかっています。現在も、それまでも、彼は自営業者でした。さらにもっと昔には会社員でした。「1件当たり1000ウォン(約106円)なので時間はお金」としながらきびすを返そうとする彼をどうにか座らせました。短い時間に彼は自営業者の断面を明らかにし、実状をさらけ出しました。

百貨店で昇進できず名誉退職を選んで衣類の自営業に飛び込みました。突然投資家が資金を引き揚げました。そうして自営業者が1人崩れました。5年前のことでした。全就業者のうち自営業者の割合が20%を切るかどうかという時期です。韓国統計庁が明らかにした先月の自営業者の割合は19.9%。どうにか7月より0.1ポイント増えてはいるが2000年の36.8%とは隔世の感です。キムさんは借入金を返済することができず信用不良者になっても、「休めば休むほど再起が難しくなる。焼酎代だけでも稼がなければならない」としてカード配送業に飛び込んだ理由を話しました。

だがだれもがキムさんと同じではないようです。8月の雇用動向を見ました。明確な理由もなく求職活動をしておらず失業者統計に捕えられることもない「ただ休んでいる」人口が256万7000人です。1年間で24万5000人が増えました。2003年に関連統計を集計し始めてから8月としては過去最多で、4カ月連続で最多記録を塗り換えています。キムさんと同じ60代が最も多かったです。93万2000人に達します。2番目に多い20代の43万8000人の2倍を超えます。1年前より14万5000人増えました。

ところで、この「ただ休んでいる」人口のうち、自営業者で働いていた人が増えています。統計庁の経済活動人口調査マイクロデータによると、上半期の月平均失業者数は91万8000人。1年前の同じ期間の85万9000人から6.9%増加しました。上半期の失業者のうち過去1年間に自営業者として働いていた人は月平均2万6000人でした。1年前の2万1000人と比較すると23.1%急増しました。失業者全体の増加率の3倍を超えます。これは廃業して求職活動に乗り出したものの仕事を見つけられない自営業者が増加しているという意味です。最初から求職をあきらめた非経済活動人口の元自営業者はどうでしょうか。上半期に月平均26万8000人で、25万3000人だった前年同期と比較すると6%増えました。

賃金労働を延長しようとする中高年が増えてはいるけれど、依然として自営業は雇用のセーフティネットと見なされます。問題はキムさんのような高学歴のベビーブーマーの60代の人口が増え、自営業への参入が難しくなったことです。働こうとしても働けず、最初からあきらめる60代が増える恐れもあるということです。淑明(スンミョン)女子大学消費者経済学科のチェ・チョル教授は「自営業者が多くやるチキン店だけでも開店率は下がり廃業率が増えて同じ水準になりつつある。慎重に判断すべきだが、当分は自営業の者割合が19%前後で停滞し、デジタル技術との融合のうむにより悲喜がわかれるだろう」と診断しました。

キムさんは「自営業者にカードをたくさん配送している」と明らかにしました。彼は「カードで返済しながら自転車操業になり結局延滞して信用不良者となる。自営業者の傷はそのままで、政府の信用赦免は鎮痛剤のように少しの間苦痛を隠すだけ」とも話しました。「信用情報削除は債務不履行の頻度を増加させる副作用を招くことになる」という韓国金融研究院の懸念と一脈通じます。

キムさんは「1カ月に180万ウォンほど稼ぐが、カード配送業を踏み石として再起するだろう」と明らかにしました。そして「絶対に長く休んではいけない」と付け加えました。彼は約束した10分を5分過ぎて走っていきました。キムさんが見せたのは、現実の19.9%(自営業者の割合)のうちごく一部ですが、その余韻は強かったです。

キム・ホンジュン/企画担当選任記者