2024−25シーズンの欧州サッカー各国リーグがスタートしている。新シーズンも万全の体制のマンチェスター・シティや、キリアン・エムバペが加入したレアル・マドリードなど、トップクラブの動向から目が離せない。注目5クラブの最新予想フォーメーションを紹介する。

後編「日本人選手所属注目クラブのフォーメーション」>>

マンチェスター・シティ(イングランド)

【4−1−2−3】
FW/ドク(グリーリッシュ)、ハーランド、サヴィーニョ(フォーデン)
MF/デ・ブライネ(ギュンドアン)、ベルナルド・シウバ(ヌネス)
MF/コバチッチ(ロドリ)
DF/グバルディオル、ルベン・ディアス(アケー)、アカンジ(ストーンズ)、リコ・ルイス(ウォーカー)
GK/エデルソン(オルテガ)

 一昨季にクラブ悲願の欧州制覇をもたらし、昨季はイングランド1部リーグ史上初の4連覇を遂げたジョゼップ・グアルディオラ監督。スペイン・カタルーニャ出身の稀代の名将はこれまで、偽9番や偽SB(サイドバック)など、画期的な戦術革新を繰り返してきたが、今季のマンチェスター・シティはもはや、ひとつのフォーメーション図では表現できないチームになっている。

 ここでは便宜上、4−1−2−3としているが、マイボール時には3バックで球を回すことが多く、攻撃の最終局面では5トップになりがちで、ライトバックのリコ・ルイスは外に張り出すこともあれば、中央に入ってポゼッションを円滑にすることもあり、器用なセンターバックがセントラルMFとして振る舞うことも。GKを含め、文字どおり全員が高度なボールスキルと戦術的インテリジェンスを備えているため、その時々の状況で最善の位置やプレーを選択して、主導権を握り続けるのだ。

 主な新戦力は、昨季の所属元(トロワ)もローン先(ジローナ)もシティの姉妹クラブだった――つまり移籍は既定路線だった――20歳のブラジル人アタッカー、サヴィーニョと、昨季1年間だけ在籍したバルセロナから帰還したMFイルカイ・ギュンドアンくらい。一方、W杯とコパ・アメリカを立て続けに制したアルゼンチン代表のFWフリアン・アルバレスが、アトレティコ・マドリードへ移っている。1トップとレフトバックの層の薄さがやや気になるが、汎用性の高い選手たちが巧みに補うはずだ。

 今季もプレミアリーグの絶対王者に死角はない。彼らが恐れているものと言えば、115件に及ぶ財務違反の疑惑に、いかなる裁定が下されるかくらいだろう。今季中にその判決が出ると見られており、勝ち点を大きく剥奪されれば、降格の可能性もゼロではない。

アーセナル(イングランド)

【4−1−2−3】
FW/マルティネッリ(トロサール)(スターリング)、ハヴァーツ(ジェズス)、サカ
MF/ライス(ミケル・メリーノ)、ウーデゴール
MF/トーマス(ジョルジーニョ)
DF/ティンバー(カラフィオーリ)(ジンチェンコ)、ガブリエウ、サリバ、ホワイト(冨安)
GK/ラヤ(ネト)

 2シーズン連続で王者マンチェスター・シティに迫りながら、またしてもプレミアリーグを2位で終えたチームは、3度目の正直を叶えるべく、トップレベルのスカッドをさらに強化した。

 EURO2024でも活躍したイタリア代表の左利きのDFリッカルド・カラフィオーリを迎え、昨季リーグ最少失点の守備陣はより堅牢に。負傷で出遅れたDF冨安健洋にとっては、強力なライバルとなる。また昨季にローンで加わり、1年目から守護神に収まったGKダビド・ラヤが正式に入団している。

 EURO2024で優勝したスペイン代表のMFミケル・メリーノ(レアル・ソシエダから)は中盤のレベルを底上げし、移籍期間最終盤にローンで入団したFWラヒーム・スターリングは若いチームに経験をもたらすだけでなく、チェルシーで溜め込んだ鬱憤を晴らそうとするだろう。

 逆に手放したのは、MFエミル・スミス=ロウ(フラムへ)、FWエディ・エンケティア(クリスタル・パレスへ)、FWリース・ネルソン(フラムへローン)の生え抜きトリオや、GKアーロン・ラムズデイル(サウサンプトンへ)、MFファビオ・ヴィエイラ(ポルトへローン)ら、誰もが昨季の完全な主力ではない選手たち。21シーズンぶりのプレミア制覇へ向けて、戦力は整った。

レアル・マドリード(スペイン)

【4−1−2−3】
FW/ヴィニシウス(ギュレル)、エムバペ(エンドリッキ)、ロドリゴ(ブラヒム・ディアス)
MF/ベリンガム(セバージョス)、バルベルデ(モドリッチ)
MF/チュアメニ(カマビンガ)
DF/メンディ(フラン・ガルシア)、リュディガー(バジェホ)(アラバ)、ミリトン(ラモン)、カルバハル(ルーカス・バスケス)
GK/クルトワ(ルニン)

 昨季、15度目の欧州制覇を果たした世界のクラブフットボールを代表するチームに、数年前から相思相愛だったキリアン・エムバペがパリ・サンジェルマンからついに加わった。

 さらに2022年12月にパルメイラスとの移籍で合意していたブラジルの最新の至宝エンドリッキも、18歳になって晴れて入団。急成長中の19歳のアルダ・ギュレル、すでに王者の風格を漂わせる21歳のジュード・ベリンガム、ヴィニシウスとロドリゴのブラジルコンビと、誰が出ても相手の脅威となる攻撃陣が完成した。

 トニ・クロースが現役を退いた中盤だが、何年も前からそれを見越してフェデリコ・バルベルデやオーレリアン・チュアメニ、エドゥアルド・カマビンガといった最高級の若手にレジェンドの薫陶を与えており、今ではそれぞれに独り立ち。39歳のルカ・モドリッチも健在だ。

 最終ラインについては、マドリーひと筋だったナチョがサウジアラビアへ移り、重傷を負っているダビド・アラバの復帰にも時間がかかることを考えると、戦力はダウンしたと言えるか。それでも、白い巨人がまたしても欧州で猛威を振るいそうな気がする。

バルセロナ(スペイン)

【4−1−2−3】
FW/ラフィーニャ(ガビ)、レバンドフスキ(フェラン・トーレス)、ヤマル(パウ・ビクトル)
MF/ペドリ(フェルミン・ロペス)、ダニ・オルモ(パブロ・トーレ)
MF/カサド(デ・ヨング)
DF/バルデ(マルティン)、マルティネス(エリック・ガルシア)、クバルシ(セルジ・ドミンゲス)、クンデ(フォルト)
GK/テア・シュテーゲン(イニャキ・ペーニャ)

 昨季はラ・リーガで宿敵レアル・マドリードの独走を許し、チャンピオンズリーグでは準々決勝でパリ・サンジェルマンに悲劇的な逆転負けを喫し、無冠に終わった。二転三転の末にシャビ・エルナンデス監督に見切りをつけ、バイエルンで欧州を制した経験を持つハンジ・フリック新監督を招聘し、再起を図る。

 ユースからバルサひと筋のセルジ・ロベルトがコモへ去り、咋オフに加入したばかりのイルカイ・ギュンドアンがマンチェスター・シティに戻った一方、EURO2024で輝いたダニ・オルモがライプツィヒから育成組織時代を過ごした古巣へ帰還。ともに17歳の生え抜きのラミン・ヤマルとパウ・クバルシが攻守の主力を担うなど、昨今あらためて、ラ・マシア(バルセロナの育成組織)の高い育成力が証明されている。

 ただし、最大のポイントは昨夏にセルヒオ・ブスケツが去ったあと、中盤の底にできてしまった大きな穴だ。昨季は最後までそこが定まらず、今季は新監督が開幕戦から17歳のマルク・ベルナルを試していたが、ラ・リーガ第3節ラージョ・バジェカーノ戦の終盤に重傷を負い、今季中の復帰は絶望的となった。

 それでも翌節バジャドリード戦では7−0の大勝を収めて、リーグ4連勝と好発進。手法的にもクラブと相性がよさそうなドイツ人指揮官が、懸案事項にうまく対処できれば、10年ぶりの欧州制覇はともかく、2シーズン連続でタイトルを逃す屈辱を味わうことはないだろう。

レバークーゼン(ドイツ)

【3−4−2−1】
FW/ボニフェイス(シック)
MF/ビルツ(アドリ)、ホフマン(テリエ)
MF/グリマルド(ベロシアン)、アンドリッヒ(アレイクス・ガルシア)、ジャカ(パラシオス)、フリンポン(テラ)
DF/インカピエ、ター(ムキエレ)、タプソバ(アルトゥール)
GK/フラデツキー(コバール)

 シニアレベルの監督として初のフルシーズンを任されたシャビ・アロンソ監督のもと、クラブ史上初のブンデスリーガ優勝を、リーグ史上初の無敗で達成した。国内カップも制し、ヨーロッパリーグで準優勝したチームは、主力をほぼ全員維持しつつ、ピンポイントの補強に成功。

 レンヌからFWマルティン・テリエとDFジャニュエル・ベロシアン、ジローナからMFアレイクス・ガルシア、パリ・サンジェルマンからDFノルディ・ムキエレをローンで迎え、各ポジションの戦力をボトムアップさせた。

 2シーズンぶりに出場するチャンピオンズリーグは新しいフォーマットとなり、抽選の結果、リーグ戦ではミランやリバプール、インテル、アトレティコ・マドリードらと対戦するタフな組み合わせに。それでも昨シーズンのように攻守が連動したハイパフォーマンスを見せられれば、どんな相手にも好勝負を演じるに違いない。

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