お腹のすいた動物園のパンダが飼育員さんに猛アピール…貴重なショットがファンから大反響となったワケ

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ちょっと短めのおみ足にまるいボディ。唯一無二のフォルムを持つ、神戸市立王子動物園のメスのジャイアントパンダ「タンタン(旦旦)」。そのかわいい姿と優雅な所作から、親しみを込めて、“神戸のお嬢様”とも呼ばれています。

2021年に心臓疾患が見つかり、治療を続けていたタンタンですが、2024年3月31日に虹の橋を渡りました。国内最高齢の28歳でした。いつでも笑顔をくれた神戸のお嬢様・タンタンをしのび、在りし日の日常を振り返りながらお伝えします。

急なお休み

お嬢様の急なお休みに戸惑ったのは、連載55回(https://gendai.media/articles/-/89881)のこと。2021年11月22日からタンタンの観覧が中止となったのです。

理由は「体調管理のため」。当時の広報担当・木下博明さんによると、「現在、タンタンの体調を把握するため、毎日診察や検査などの健康管理を行っていますが、決まった時間にトレーニング室に入らないなど、健康管理を十分に行うことが出来ないことがあったため、観覧を中止しました」とのこと。以前から、気が向かない時にはトレーニング室に近寄りませんでしたものね、お嬢様。

この時の様子について、飼育員の梅元良次さんは「特に普段とは変えていませんよ。変わりなく寝て食べてと、のんびりと過ごしてもらっています」と話してくれました。体調の悪化ではなくてひと安心です。観覧の再開については、診察や検査が十分にでき、観覧が可能な状態と判断すれば再開予定とのこと。このときは、しばらく後に観覧が再開されたのでしたね。

観覧中止の間も、公式ツイッターではタンタンの様子を伝える「#きょうのタンタン」がアップされていました。

「今回の観覧中止は、タンタンが調子を崩したからではなく、そうならないための処置です。『#きょうのタンタン』を、楽しみに待ってくれている方々もいますので、タンタンの状態に問題がない限り、できるだけツイートをアップしていきたいと思っています」 と、梅元さん。この言葉通り、本当にギリギリまで発信してくださったこと、ありがたかったですよね。

変わる動物園

2021年で開園70周年を迎えた王子動物園では、この頃、園内のレストラン「パオパオ」と「カレー王子」、売店「こどもプラザ」が、建物の老朽化を理由に相次いで閉店。パンダ館からも近い建物もあることから、取り壊し工事の影響も心配されていました。

「解体作業は、まだ始まっていませんが、解体する建物は木造なので、激しい騒音は発生しない予定と聞いています。場所も少し離れていますし、よほど大きな音や振動が無い限りは大丈夫ですよ」と、梅元さん。

リニューアルにあたっては、展示にも動物たちが快適に暮らせる「動物福祉」の観点を取り入れて改善を加える方針ということ。人も動物も、みんなが変わらず笑顔で過ごせる園であって欲しいですね。

お嬢様のおねだり

かわいらしいおねだりにメロメロになったのは、連載56回目(https://gendai.media/articles/-/90120)。ぐっとオリに鼻を差し込むタンタン……。「この時は、お腹の好き具合やテンションなど、色々なタイミングが重なったのかも知れませんね」と、話す梅元さん。ここまでのアピールになることは、普段あまりないそうで、貴重な1コマでしたね。

「お腹が空いているということは、トレーニングの強化子(ご褒美)であるリンゴが欲しいということですので、トレーニングも張り切ってくれる事が多いです」(梅元さん)。観覧中止となっていたこの頃は、トレーニングルームの入り口は基本的に開けっぱなし。気が向いたらトレーニングルームに入る仕様だったようですが、この時はきっと、足取りも軽く入って行かれたんでしょうね、お嬢様。

この頃は、寝台の上でお食事をされることも多くなっていたお嬢様。梅元さんが「まぁ、始まりは僕の甘やかしですね」と笑います。「まじめなお話をすると、ご飯を置いても寝台から降りてこず、そのまま放置することがあったので、少しでも食べてもらえるようにタンタンの近くに置いたんです」(梅元さん)。今なら食べそうだなと思ったタイミングであげているそうで。付き合いが長いからこそわかる絶妙なタイミングなんですね。

おなか周りがスリムに

心臓疾患で体内に水分がたまり、むくみのような症状が出ていたタンタン。余分な水分を取り除くために利尿剤が与えられていましたが、2021年8月中旬からは専門家の助言を受け、投薬治療に加えて、腹部から水分を抜く措置が行われました。

腹部から水分を抜くとは、どういうことなのでしょう。獣医師の菅野拓さんによると「ハズバンダリートレーニング下で、専門の医療器具を使用し、タンタンが痛みを感じることがないよう、腹部の水分を体外に吸引・排出しています」とのこと。この時行われていた治療は、診察と検査で体調を把握し、心臓の動きを助ける強心薬を与え、さらに心臓の働きの低下によってたまった余分な水分を、体外に排出するというもの。こうして、心臓疾患によって弱くなった血の巡りを改善していたのです。

「体外に水分を抜く措置により、体調の維持と改善をしています」と、話す菅野さん。少しでもタンタンが穏やかに過ごせるように、治療に加えて、バランスの良い食事、適度な睡眠、余計なストレスを与えないようにも気を配っていました。まさに至れり尽くせりですね、お嬢様。

取材日の朝はタイヤの横で熟睡していたというタンタン。朝食には、大好きなタケノコをいただきました。時期的にまだ淡河産のものではありませんでしたが、この頃には少しずつタケノコが入ってくるようになっていました。観覧休止中も、のんびりとお過ごしのお嬢様。今は会えなくても、これからも“ずっと一緒”に時を重ねていければ……。このとき、そう思ってくださっていたのでしょうか、お嬢様。

NEXT:次回は2024年9月11日(水)に、お届け予定です!

※今回のおまけ写真は、2022年1月に撮影したものです。

<動物園の基本情報>

神戸市立王子動物園

〒657-0838 兵庫県神戸市灘区王子町3-1

TEL : 078-861-5624(代表)

公式ホームページ:https://www.kobe-ojizoo.jp

公式Twitter(@kobeojizoo):https://twitter.com/kobeojizoo

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