動物園のパンダ、寝相がまさかの「富士山」に…「これはおめでたい」と大反響！
ちょっと短めのおみ足にまるいボディ。唯一無二のフォルムを持つ、神戸市立王子動物園のメスのジャイアントパンダ「タンタン（旦旦）」。そのかわいい姿と優雅な所作から、親しみを込めて、“神戸のお嬢様”とも呼ばれています。2021年に心臓疾患が見つかり、治療を続けていたタンタンですが、2024年3月31日に虹の橋を渡りました。国内最高齢の28歳でした。
いつでも笑顔をくれた神戸のお嬢様の日常を2020年から綴ってきた、二木繁美さんによる本連載『水曜日のお嬢様』の書籍版『水曜日のお嬢様 タンタンのゆるゆるライフ』2024年9月5日発売）の刊行を記念して、とくに好評いただいた記事のリバイバル掲載を5日連続でお届けします！
見事な“富士タン”
最近、公式ツイートで発見した縁起物。富士山ならぬ“富士タン”です。「今までも、うつ伏せに寝ていることはありましたが、あそこまでペタンと足を横に広げた姿は久しぶりですね」と、飼育員の梅元良次さん。
よく見かけるのは、後ろあしを上げた“エクササイズポーズ”ですが……。「これはパンダがよくするポーズです。中国でもよく見かけましたが、楽な姿勢なんでしょうね」と、梅元さん。
最近見かける、珍しいポーズもあるようで。「片方の後あしを、前あしで持つようなポーズは珍しいですね。これは、タンタン以外のパンダでは見たことがないです」（梅元さん）。より強度を上げた、お嬢様オリジナルの“エクササイズポーズ”なのですね。
「最近、見た目がシュッとしてきた」と評判のお嬢様。体重もだいぶ減り、今は100キロを切っているそうです。「腹水を抜いていることもあり、体は確実に楽になっていると思いますよ」と、梅元さん。軽やかに、すてきなポーズを繰り出すお嬢様です。
やる気にさせるテクニック
トレーニングルームで獣医さんを待つタンタン。中には入っても、気分によって言うことを聞かないこともあるようで……。
「中に入って、オリから圧をかけているときは、やる気があるとき。横になっているときは、やる気がないときですね」（梅元さん）
最初からやる気がないときは、どうするのでしょうか。「そこは、やる気にさせるテクニックがあるんですよ」と、梅元さんが笑います。
梅元さんの場合、タンタンが中に入ったあと、簡単なトレーニングでやる気のスイッチを入れてから、獣医さんを呼ぶのだそうです。
「呼んでから、大体5分以内に獣医が来てくれます」（梅元さん）
梅元さんは、タンタンのやる気が、空腹の具合によって変わることも発見しました。トレーニングには、少しおなかがへっている位が一番良いのだとか。
「おなかがへりすぎると、イライラしちゃってダメなんです。そういう場合は、少しリンゴをあげて、おなかを落ち着かせてからトレーニングに移ります」（梅元さん）
「大体は、リンゴをあげると気分が上がる。意外と単純なんです」と、梅元さん。お嬢様とは長い付き合い。その気にさせるコツも、よくご存じなのですね。
ご褒美のリンゴ
公式ツイッターには、リンゴが欲しすぎるタンタンの様子もツイートされていました。
「あれは、やる気にあふれている時の写真です」（梅元さん）
トレーニングのご褒美には、やはりリンゴが一番良いのでしょうか。
「例えば、ニンジンでトレーニングするのは、ちょっと無理ですね。ご褒美はやはり一番好きなものでないと。中国でも、リンゴをご褒美として使っていますよ」（梅元さん）
さらに、「時期によっては、カキやブドウをあげることもあります。ただ、うちはずっとご褒美にリンゴを使っているので、タンタンが混乱しないように、基本はリンゴです」と、教えてくれました。
タンタンの好物であるリンゴは、時期を問わずに手に入りやすく、トレーニング用に小さくカットしやすいため、重宝しているそうですよ。
本日のお嬢様
取材日の天気は晴れ。最高気温6度、最低気温0度で、ときおり小雪がちらつく肌寒い日。職員さんも冗談まじりに「今日はお客さんよりフラミンゴの数のほうが、多いかもしれません」と言うほど、人が少なめでした。
パンダ館観覧開始、11時の気温は4度。タンタンは寝台の上で、眠り姫スタートです。
朝はシャッターを開けると同時に目覚めたというタンタン。「夜食べてから、4時間くらいあいているので、お腹が空いて目覚めるんでしょうね」と、梅元さん。朝食にはニンジン、リンゴ、ハチク（淡竹）を食べたそうです。
「最近は観覧開始の11時までに、ごはんとクスリをすませて、満足して寝ています」と、梅元さん。13時近くになってから、起き出すことが多いのだとか。私たちは、いわば一番“仕上がっている”お嬢様にお会いできているわけですね。
眠り姫のお目覚め
寝台に頭を突っ込んで寝ているタンタン。この姿勢が落ち着くのでしょうか。まん丸ボディに控えめなおみ足をちょこんと添えて。何度か寝返りをうちながらも、起きる様子はなし。変わったのは、お耳の角度くらいです。観覧の列も短めで、待ち時間は5分程度でした。
観覧列には、「パンパン、ばいば〜い！」と、元気な男の子。（お名前、タンタンだよ〜！）。「おしり！かわいい！」という声も聞こえます。みなさん、流行りの「パンけつ」を満喫ですね。
そろそろ起きようかな
そのままずっと眠り姫だったタンタン。12時20分頃、ようやく「起きようかな〜」という状態に。うつ伏せで目をシパシパさせています。
12時30分頃には目が覚めて、寝台で座りはじめました。前回の記事でご紹介した、飼育員さんとの心理戦のはじまりです。
ゴハンが待ちきれない！
その後、待ちきれなかったのか、寝室内へ移動してオリに圧をかけ始めます。
そして寝室のドアが一旦閉まりました。ごはんがセッティングされてから、タンタンが再登場。用意されたニンジンを、後ろ向きでいただきます。最後の1本は、その場でモグモグ。5本のニンジンをペロリと平らげました。
竹とタケノコを横目に寝室へ。すぐに寝室から出て、通風口のところで座りはじめました。
今日はやる気！
そして、トレーニングルームあたりをウロウロ。空腹のため、リンゴが欲しいのでしょうか。やる気満々ですね、お嬢様。
その後は、お水を飲んでクールダウン。お部屋をウォーキングしてから寝台へ上がりました。
寝台では寝ずに座っています。飼育員さんとの心理戦の作戦を練っているのでしょうか。
寝台にお尻をスリスリして、そのままゴロンと横に。そこから眠ったまま、13時7分に観覧終了となりました。
取材の撤収時、パンダ館に獣医さんらしき人影が。やる気満々だったお嬢様、あのあと起き出してトレーニングとなったのでしょうか。お嬢様ファイトです！ みんな応援していますよ。
＜動物園の基本情報＞
神戸市立王子動物園
〒657-0838 兵庫県神戸市灘区王子町3-1
TEL : 078-861-5624（代表）
公式ホームページ：https://www.kobe-ojizoo.jp
公式Twitter（@kobeojizoo）：https://twitter.com/kobeojizoo
