【泰 梨沙子】シンガポールで地元女子大生に性的暴行をして「ムチ打ち刑」、タイのゴルフ場では女性キャディが被害に…!東南アジアで日本人による現地女性への「性加害・セクハラ事件」が物議

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禁錮17年6ヵ月、ムチ打ち刑20回

日本では7月、シンガポールで起きた性的暴行事件の有罪判決に注目が集まった。

元美容師の日本人男性(38歳)が、泥酔していた地元の女子大生に性的暴行を加えたとして、禁錮17年6ヵ月、ムチ打ち刑20回の有罪判決を受けたのだ。

シンガポールで、日本人にムチ打ち刑が科されるのは初めてという。日本では馴染みのないこの刑罰は衝撃的に受け止められ、SNSで物議を醸した。

地元メディアによると、事件は'19年12月に発生。2人に面識はなく、男性は繁華街で泥酔していた女性をタクシーで自宅に連れ帰り、性的暴行を加えた。さらに、その様子を携帯電話で撮影し、動画を友人に送っていたという。

事件を担当した検察官は、「被害者が泣き叫び、何度も止めるように懇願したにもかかわらず、男性は性的暴行を続けた」と犯行の悪質性を指摘した。

被害女性は現在も心的外傷後ストレス障害(PTSD)で苦しんでおり、「周囲の男性に対する絶え間ない不信感と恐怖の中で生きることを強いられてきた」(検察官)という。

タイでもわいせつ事件

性的暴行、セクハラ、盗撮――。東南アジアではここ数年、日本人男性が現地女性に性加害を行い、警察沙汰になった事例が相次いでいる。こうした事件がネットで広まり、現地で炎上した事例もある。

「こんな外国人は一生、入国禁止にしてほしい」

タイのSNSでは8月、日本人男性が起こした性加害事件に対して非難の声が相次いだ。

地元メディアによると、7月28日、首都バンコクで日本人男性(27歳)がタイ人女性にわいせつな行為をしたとして、警察に一時拘束されたのだ。

被害女性は友人らとナイトクラブに出かけた後、帰宅するため、恋人の迎えを1人でベンチに座って待っていた。そこに男性が現れ、「ホテルへ行こう」と誘ってきたという。

女性が断ると、男性は女性の横に座り、酩酊状態だった女性の体を触り始めた。その後、男性は女性を抱えてタクシーに乗り込んだが、女性が恋人に電話で助けを求めたため、タクシー運転手に引き返すように指示した。

男性は女性を降ろして逃走したが、女性がすぐに警察に被害を届け出たことから、拘束される事態となった。

男性は「酒に酔っていた」として、容疑を認めた後、保釈金を払い、釈放されたという。

現地では男性が女性を抱えてタクシーに乗り込む様子が映った監視カメラの映像や、男性の実名や勤務先などの個人情報もSNSで拡散された。その手口が慣れていたことから、現地住民からは「常習犯なのではないだろうか」と疑念の声もあがった。

後を絶たない日本人男性のセクハラ

筆者は'15年から、日系メディアの記者としてタイを拠点に東南アジア各地をまわり、日本人男性による性加害の問題をたびたび見聞きしてきた経験から、その被害状況を記事にしてきた。

バンコクはとりわけ、ナイトクラブや性風俗店などの夜遊びスポットが多く、日本人にかかわらず、酩酊した外国人がトラブルを起こす事件が後を絶たない。

性的暴行に加えて、東南アジアで頻繁にトラブルになっているのが、日本人によるセクハラや盗撮といった性加害だ。筆者のもとには現地女性から、被害相談が寄せられることもある。

具体的な事例として、「会社の上司に2人きりで車に乗ってほしいと強要され、断ったら解雇をほのめかされた」というものや、「知り合った日本人男性に突然、性的な言葉で侮辱された」「勝手に動画を撮影され、卑猥な編集をされて投稿された」など、あげればきりがない。

タイの情報を配信する登録者30万人以上のユーチューバー、TJさんは6月、自身のYouTubeチャンネル「TJ Channel Thailand」で、「【注意喚起】後を絶たないタイでの日本人によるセクハラ問題」という動画を投稿した。

その中で、「バンコク市内を中心に、タイ国内で日本人男性がタイ人女性に対して行うセクハラは、かなり多くある」と指摘。

さらには、飲食店やマッサージ店の従業員が日本人男性にセクハラされた事例を紹介し、

「街中の健全な店で働いているタイ人女性スタッフにセクハラをするのは、本当にやめてください。タイ国内には男性向けの風俗店がいっぱいあるが、それはそれ、これはこれ。その辺の線引きはしっかりしなければならない」

と注意を呼び掛けた。

ゴルフ場に日本語で注意喚起も

タイでの日本人男性によるセクハラについては、一時期、在タイ日本大使館から注意喚起が行われるほど、深刻な問題となった。

同大使館が出した「令和3年度版 安全の手引き」では、「タイ人女性に対する侮辱や嫌がらせなど、所謂セクハラやパワハラ行為についての報告・相談が寄せられています」と言及されている。

タイのゴルフ場では、日本語などでセクハラ防止を呼びかける注意喚起が記載されていることもある。キャディらは仕事をなくす恐れから、セクハラを拒絶しにくいという事情があり、ゴルフ場はこうした対策をしているという。

日本人による盗撮事件では、'22年にベトナムの国内線の機内で、日本人男性が現地女性を盗撮したとして、大きなトラブルになった。

盗撮に気づいた女性は、着陸後、日本人男性に対して、動画の削除と謝罪を要求。盗撮動画や謝罪の様子が分かる写真とともに、被害の詳細がフェイスブックで拡散され、現地で大炎上する事態となった。

一部で性加害を擁護する声

一方、こうした性加害を厳しく非難する意見があがるのと同時に、ネット上で必ず現れるのが、加害男性を擁護する一部の日本人の声である。

たとえば前述のバンコクでのわいせつ事件については、X上で日本人男性とみられる人物による下記のような投稿が確認された。

「単に女にハメられたんでしょう。route(注記:ナイトクラブの名称)は80人くらいセックスしたけど基本女はやられにきてるので。男の対応と顔が糞で搾取モードに入っただけ。rca(注記:同上)にいくような女の言い分は聞いてはいけないのはナンパ師様なら誰でも知ってる」

加害者側の男性が既に罪を認めていることからも、「ハメられた」といった事実は確認されておらず、被害女性にとってはセカンドレイプとなる発言である。

さらに、「基本女はやられにきてる」というのも、投稿者の勝手な思い込みにすぎない。こうした男性にとって都合の良い妄想が蔓延している限り、「この手の事件は永遠に繰り返されていく」と感じざるを得ない。

過去には大きな外交問題に発展も

東南アジアでの性犯罪を巡っては、日本人のみならず、さまざまな国籍の外国人による被害が報告されている。

しかし、たびたび一部の日本人から聞かれる「ほかの国の男性もやっているのだから、日本人だけ責められるのはおかしい」という意見は、当事者意識が欠けた無責任な発言である上に、問題の根本的な解決につながらない考え方なのではないだろうか。

さらに、一部のこうした無責任な行動が、大多数の品行方正な日本人の評判を大きく貶めることにもつながる。

'70年代には、日本人による東南アジアでの買春ツアーが問題視され、タイ、フィリピンで地元民による抗議活動が行われるようになり、大きな外交問題に発展した。当時の鈴木首相が現地を訪れた際には、買春ツアー反対の抗議文を突きつけられる事態となった。

SNSが発展した現在、現地での性加害の問題がより可視化され、外交上の大きな問題に発展するリスクは拡大している。一人ひとりに責任ある行動が求められている。

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