林陵平のフットボールゼミ 
2024−25イングランドプレミアリーグプレビュー 後編

8月16日から開幕する2024−25イングランドプレミアリーグプレビューの後編。人気解説者の林陵平氏とサッカー実況のトップランナーである下田恒幸氏が対談し、巻き返しを狙うチェルシー、マンチェスター・ユナイテッドと、日本人選手の見どころを挙げてもらった。

前編「シティがまた勝つ? 今度こそアーセナル? 注目クラブの見どころ」>>

【動画】林陵平×下田恒幸対談フルバージョン 2024−25プレミアリーグプレビュー↓↓↓

【いい選手が多いチェルシー 新監督がどう指揮するか】

林 チェルシーの新シーズンは、どうなると思いますか?

下田 わかりません(笑)。なぜかと言うと、人は十分にいるのに、また(選手を)獲ってるじゃないですか。

林 補強しますよね。フルハムからトシン・アダラバイヨというCBが来ました。そして、エンツォ・マレスカに監督が代わりました。そこがどう出るか。

下田 マレスカ監督はジョゼップ・グアルディオラ(マンチェスター・シティ監督)の影響を受けているかと思いますが(シティのアシスタントコーチ経歴あり)、どうですか?

林 やはり丁寧にビルドアップしますし、守備の時も前から。失ってもカウンタープレス。

下田 タレントがいるチームだから、ハマったら面白いですね。

林 今、噂ですが、CFにナポリのヴィクター・オシムヘンを獲るのではないかという。

下田 FWロメル・ルカクを売りたいということですね。なるほど。オシムヘンが獲れるとチェルシーにとってはデカいですか?

林 デカいですね。トップはFWニコラス・ジャクソンもいて、僕は好きな選手なんです。マレスカ監督がどう使うかがわからないですが、オシムヘンが来たら、また違う形にはなると思います。

 あとは、MFコール・パーマーですね。彼には触れておかないといけません。

下田 そうですね。昨シーズンはあんなに点を取るんだと思いました。シュートうまいですよね。

林 (イングランド代表で出場した)EURO2024でもすごかったですよね。昨シーズンのチェルシーの最後は、パーマーがいないと形にならない感じでしたから。

下田 パーマーFC!

林 そのくらいすごかったので、今シーズン、マレスカがどうやって組み込むかですね。トップ下なのか、右ウイングなのか。それでプレースタイルも変わりますから。

下田 監督、選手が多すぎて困りませんかね。

林 そうですね。本当にいい選手が多いから、楽しみですよね。

下田 ツボにハマった時の爆発力は、期待できるかもしれません。

【過小評価は禁物! 復活を期すマンチェスター・ユナイテッド】

林 ビッグ6の最後はマンチェスター・ユナイテッドですね。

下田 これは、やっぱりクラブにプライドあるわけですよ。それが昨シーズンのFAカップ優勝でしょう。

 ただ、昨シーズンは評価すらできない難しいシーズンだったと思っています。チームの編成面であまり積み上げてきたものがないなかで、どんな監督でも結果を出すのが難しい状態。でも謎に、すごい勝っていたじゃないですか。だから、最低限の結果ではあったかなと思うんですが、解説者の方々は「いや」って言うんですよね(笑)。テン・ハフ監督ダメですか?

林 ダメではないと思うんですけどね。ただ形が見えないところもあるので。でも最後はFAカップ獲りましたよね。

下田 前の年(マンチェスター・シティに)3冠やられて、リーグは4連覇やられてね。ユナイテッドも記録を作ってきたクラブですからね。だから、プライドが出ると、クラブとしての底力あるんだなって思いました。

林 テン・ハフ監督はクビになるかならないかみたいなところで、「俺はやり続ける」と言って、FAカップ優勝。だから自分で勝ち取った部分はありますよね。そして、今シーズンは選手もほかのチームより補強しています。例えば、FWジョシュア・ザークツィー。

下田 僕は彼がバイエルンでプレーしていた時の印象があって、捉えどころのない人なんです、僕のなかで。

 うまいとか、強いとか、ゴール前がすごいとかいうのが、CFの形容詞だと思うんですが、ザークツィーの場合は何がすごいのかずっとわからなくて。ものすごい速いわけじゃないけど、速い。ものすごいうまいわけではないけど、結構シュートにもっていく。ものすごい収まるわけじゃないけど、起点になるみたいな。

 ドイツ時代の印象ですけど。イタリアに行ったら全然違いますか?

林 全然違いますね。確かにドイツ時代は僕のなかでも捉えどころがないというイメージでしたけど、本当に成長しました。ボローニャのチアゴ・モッタ監督(今季からユベントス監督)の下で主力のFWとして、中心選手で、今は前線に置いておいたら何でもできるような。ズラタン・イブラヒモビッチみたいなイメージですよ。

 そうしたなかで、プレミアリーグで得点が生まれるかどうかですね。チャンスメイクとかすごいうまいですよ。ポストプレーもうまいし。

下田 本当に!? そうか。林さんからイブラヒモビッチの名前が出るというのは相当ですね。

林 FWラムス・ホイルンドもいるので、ザークツィーとどういうふうに絡ませるか。4−3−3だと同時に使えないので、4−2−3−1にしてトップ下にザークツィーでホイルンドが前とか。

下田 MFブルーノ・フェルナンデスはどこで使うんですか?

林 ブルーノはボランチです。彼は別にどこでもいいんですよ(笑)。ブルーノひとりピッチに置いておけば。

下田 あとは懸案のFWマーカス・ラッシュフォード。アカデミー育ちでクラブの顔だし、ツボにハマった時はスーパー。でも「あれ?」って時もある。彼はどう使ったらいいですかね?

林 難しいですよね。試合によってかなり波があるし、守備のところも多分テン・ハフが求めるタスクを行なえていないんだと思います。プレスバックとかも遅いですし。だけど、相手の背後に出た時に一発で決めきる力とかがある。

下田 カウンターのパンチはすごいですよ。

林 ラッシュフォードは継続的に試合に出て、チームを引っ張るような選手にならないといけない。そのへんの自覚を持ってくれたら、もっとすごくなるんじゃないかと。

下田 どこで使います? 左?

林 プレーエリアは左なので、4−3−3、4−2−3−1でも左のウイングですね。でも守備になると、どうしても左サイドを担当しなければいけなくなるので、タスクが多くなるんです。なるべく前に置いておきたい選手ですけど、ウイングになるとどうしても守備に戻らないといけない。

 あとは、MFカゼミロがどう復活するかですね。

下田 そうですね。年齢はだいぶいってますよ。あそこは誰か獲ったほうがいいんじゃないですか?

林 でもMFコビー・メイヌーがいますから。

下田 そうだ。いました。EURO2024のメイヌーはまたたく間にイングランド代表のレギュラーになりましたね。

林 そうですね。普通にずっと主力でプレーしていました。今シーズンのユナイテッドも引っ張ると思います。

下田 だから過小評価は禁物なんじゃないですか? ユナイテッドは。ある程度、力があると見たほうがいいような気はします。

【日本人選手が増えて、楽しみも増える】

林 プレミアリーグは日本人選手が増えてきました。MF三笘薫(ブライトン)、MF遠藤航(リバプール)、DF冨安健洋(アーセナル)、DF菅原由勢(サウサンプトン)、MF鎌田大地(クリスタル・パレス)。たくさんいますね。下田さん注目は?


クリスタル・パレスに加入した鎌田大地 photo by Getty Images

下田 鎌田ですね! これは監督に求められてやって来た、初めてのプレミアリーガーなんじゃないでしょうか。オリバー・グラスナー監督とは、フランクフルトで一緒にやっていたわけですが、監督が選手をよく知っている、選手も監督のやり方をよく知っていて、そうしたなかでかつて主役だった人が来るわけですから。

 クリスタル・パレスよくないですか?

林 いいですよ。昨シーズンの最後はすごかったですからね。MFアダム・ウォートンとか途中から抜群でしたから。

下田 鎌田はどこをやりますかね? シャドー(最前線の少し後ろ)ですか?

林 そうですね。プレシーズンはシャドーをやったりとか、あと2ボランチのひとり。本人はボランチもやりたいみたいなんですよね。

 ただ、MFマイケル・オリーセ(バイエルン)が抜けたんです。昨シーズンはオリーセとMFエベレチ・エゼの2シャドーがすごかったので、鎌田はシャドーに入るのか、ウォートンと2ボランチを組むのかは見どころです。あとはプレミアリーグの強度にどれだけフィットするのか。

下田 そうですね。相手の守備者が当たってくる間合いとか、強さは違いますよね。

林 違いますね。だからそこをいなせるかどうか。パワー&スピードというよりかは、タイミングとかスキルでいなす部分だと思いますが、それができたらめちゃくちゃ活躍しそうな気がします。

下田 あと、三笘対鎌田がダービーであるっていうことを、もっと強調したいですね。 「M23ダービー」といってクリスタル・パレス対ブライトンというのは、密かに両者のなかで熱いダービーなんです。Jリーグで言うと「多摩川クラシコ」みたいな。

 そこをあのふたりが主軸でやったら、僕としても熱いですね。

林 おお、なるほど。こうやって日本人選手がたくさんプレミアリーグに来ると、楽しみも増えてくるので、今シーズンもしっかり見ていきたいと思います。
(おわり)