8月7日に開幕した第106回全国高等学校野球選手権大会。夏の甲子園にはどんなスター候補が登場するのか。バックネット裏のスカウト陣から熱視線を浴びること請け合い。まずは10チームの逸材投手を紹介していこう。


青森大会で自己最速となる152キロを記録した青森山田の関浩一郎 photo by Ohtomo Yoshiyuki

関浩一郎(青森山田3年/186センチ・86キロ/右投右打)

世代のトップランナーになりうる大器。投手らしいシルエットと捕手に向かって伸びてくるストレートの球筋は、将来性と実戦性を兼ね備える。昨秋時点で最速145キロだった球速は右肩上がりに伸び、今夏に最速152キロまで到達した。コントロールを大きく乱す心配がなく、変化球の精度も高い。青森大会では八戸学院光星との準々決勝で10奪三振1失点の快投。弘前学院聖愛との決勝は2回からのロングリリーフで9奪三振2失点。近年稀に見るハイレベルだった青森大会を制する原動力になった。櫻田朔との二枚看板で全国の頂点を狙う。


最速154キロを誇る健大高崎の2年生投手・石垣元気 photo by Ohtomo Yoshiyuki

石垣元気(健大高崎2年/176センチ・71キロ/右投両打)

2年生にしてストレートの球速にかけては全国屈指の右腕。己を高めるため北海道から群馬へと渡った剛腕は、今春センバツで同期の左腕・佐藤龍月(りゅうが)との二枚看板で甲子園初優勝を経験。最速154キロ、コンスタントに150キロ台を叩き出す快速球と鋭く変化するスライダー系とのコンビネーションが光る。佐藤が左ヒジ痛のため今夏の甲子園はベンチ外に。石垣にかかる負担が増すのは間違いないが、真価が問われる夏になりそうだ。


花咲徳栄の速球派右腕・上原堆我 photo by Sankei Visual

上原堆我(花咲徳栄3年/178センチ・84キロ/右投右打)

全国区になれる実力を持った速球派右腕。今春に前橋商との練習試合で最速148キロを計測し、ドラフト上位候補・清水大暉を目当てに訪れたスカウト陣に大きくアピールした。ワインドアップの大胆なアクションから、捕手のミットを激しく叩く球威が最大の特徴。今夏の埼玉大会では血マメが潰れるアクシデントに見舞われたものの、打線の援護もあって甲子園にたどり着いた。コンディションさえ万全なら、全国の強打者をねじ伏せる可能性は十分にある。


今春のセンバツも経験した関東一の坂井遼 photo by Ohtomo Yoshiyuki

坂井遼(関東一3年/178センチ・78キロ/右投右打)

季節が巡るたびに進化の跡が見える右腕。最速149キロのスピードと、ストレートの軌道から鋭く変化するスライダーのコンビネーションは初見では攻略が難しい。1年前と比較すると現在のボールの圧力、投球の精度は別人のよう。今夏の東東京大会は実戦派左腕・畠中鉄心との2本柱で順当に勝ち進み、決勝では強打線の帝京を4回1失点と封じて優勝を呼び込んだ。今春のセンバツは初戦の八戸学院光星戦で粘りきれず敗れただけに、甲子園で借りを返したい。


身長198センチの大型左腕、東海大相模の藤田琉生 photo by Kikuchi Takahiro

藤田琉生(東海大相模3年/198センチ・96キロ/左投左打)

198センチの威容を誇る超大型左腕。巨体にもかかわらずバランスよくボディコントロールができて、名門のエースらしい心身を兼ね備える。今夏は出力が一段と上がっており、自己最速の149キロを計測した。バレーボール経験者の両親の影響を受け、実際にスパイクを打つことで腕の振りを矯正する独自の調整法を持つ。2年生右腕・福田拓翔も最速150キロの加速感のある速球とカーブ、フォークなど縦系の変化球が出色で早くも来年のドラフト上位候補と評したい。この二枚看板は全国トップクラスになるだろう。


福井大会はすべてリリーフで登板した北陸の竹田海士 photo by Sankei Visual

竹田海士(北陸3年/177センチ・77キロ/右投右打)

流れを引き寄せる守護神。2年生だった昨年は春夏連続で甲子園のマウンドを経験し、とくに夏は最速145キロを計測して爪痕を残した。体を縦に使う投球フォームが特徴的で、フォークで狙って三振を奪えるのが魅力。最速149キロにボリュームアップした今夏は、福井大会4試合すべてでリリーフ登板。10回1/3を投げ14奪三振を記録し、要所を締めるクローザーぶりを披露した。阪急ブレーブスそっくりのユニフォームを身にまとう怪腕は、3回目の甲子園で主役になれるか。


今年春のセンバツでは青森山田に初戦敗退を喫した京都国際の中崎琉生 photo by Sankei Visual

中崎琉生(京都国際3年/178センチ・78キロ/左投左打)

生まれ変わった姿を見せたい左腕。今春センバツでは初戦で青森山田に惜敗したが、直後に招集されたU−18代表候補強化合宿では下半身主導の新フォームで登場。球威が格段に向上しており、短期間での急成長をアピールした。今春は近畿大会優勝に貢献し、今夏の京都大会では29回を投げて防御率1.24と安定した内容。チームとしても攻守のバランスがとれているだけに、中崎が本領発揮できれば京都国際は優勝争いのダークホースになれる。


大阪大会決勝の東海大仰星戦で15奪三振1失点の快投を演じた大阪桐蔭・森陽樹

森陽樹(大阪桐蔭2年/189センチ・83キロ/右投左打)

2年生ながら「別格」のムードを醸し出す大器。類まれな肉体、質実の伴った剛速球、縦に鋭く曲がり落ちる変化球。1球見れば誰もがモノの違いを察知できるはずだ。今夏の大阪大会決勝・東海大仰星戦では15奪三振1失点の快投で完投。ひと皮むけた姿を見せた。今春センバツでの甲子園デビューは世代トップランナーとしては物足りない内容だっただけに、今夏は聖地でインパクトを残したい。また、大阪大会では目立たなかったものの今春センバツで脱皮したパワーピッチャーの平嶋桂知、強烈な負けん気と総合力が光る2年生右腕の中野大虎ら今年の大阪桐蔭投手陣は歴代屈指の陣容だ。


昨年、今年と2年連続センバツ準優勝の報徳学園・今朝丸裕喜 photo by Ohtomo Yoshiyuki

今朝丸裕喜(報徳学園3年/188センチ・80センチ/右投右打)

今大会の目玉。2年連続センバツ準優勝を経験し、今夏は日本一の座に挑む。ボールに縦の角度があり、最速151キロの快速球は数字以上の迫力を感じさせる。ストライク先行でリズムよく打たせてとる技術もあり、今春センバツでは大阪桐蔭を5安打1失点に封じて完投勝利を挙げている。つかみどころのない独特なキャラクターも、いかにも投手らしい。今年のドラフト戦線は高校生に「確固たる1位候補」と言える存在がいないだけに、大舞台でのパフォーマンスで押しも押されもせぬ評価を勝ちとりたい。ダブルエースを組んできた間木歩も完成度が高く、「勝てる投手」だ。


1年春から広陵の背番号1を背負う高尾響 photo by Ohtomo Yoshiyuki

高尾響(広陵3年/172センチ・73キロ/右投右打)

4回目の聖地を踏む「The エース」。身長172センチと上背はないものの、マウンドでの貫禄と引き出しの豊富さは高校生とは思えない。1年春から名門の背番号1を背負ってきた年輪を感じさせる。今春センバツでは最速148キロのストレートの球威が一段と増しており、ドラフト指名圏内に入った感があった。過去3回の甲子園では2勝が最高だけに、今夏はチームを上位進出に導いて名実ともに高校球界を代表する存在に君臨したい。また、広島大会で全6試合に登板して奪三振を量産した左腕・山口大樹の本格化も見逃せない。

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