「老後は田舎か都会か」の決め手となる重要ポイントを解説します(写真:NOV/PIXTA)

結婚しても子どもをもたない夫婦、いわゆる「おふたりさま」が増えている。

共働きが多く経済的に豊か、仲よし夫婦が多いなどのメリットはあるものの、一方で「老後に頼れる子どもがいない」という不安や心配がある。

そんな「おふたりさまの老後」の盲点を明らかにし、不安や心配ごとをクリアしようと上梓されたのが『「おふたりさまの老後」は準備が10割』だ。

著者は「相続と供養に精通する終活の専門家」として多くの人の終活サポートを経験してきた松尾拓也氏。北海道で墓石店を営むかたわら、行政書士、ファイナンシャル・プランナー、家族信託専門士、相続診断士など、さまざまな資格をもつ。

その松尾氏が、「老後は田舎か都会か」の決め手となる重要ポイントを解説する。

田舎と都会「最も大きな違い」はここにあった!

「老後は交通手段や店舗が多い都会で便利に暮らしたい」


「老後は自然豊かな田舎で、家庭菜園などを楽しみたい」

老後生活を送るには、田舎にも都会にもよいところがあります。

そのため「老後は都会暮らしと田舎暮らし、どちらにしようか」とリタイア後の暮らしについて決めかねている人も多いかと思います。

結論を先にいえば、マンションか一戸建てか、賃貸か購入かというように、一人ひとりの趣味嗜好や好みによるので、一概にはいえません。

また、都会といってもタワーマンションと一戸建て、地方といっても地方都市と農村や漁村では、その暮らしぶりはかなり違ったものになります。

それを踏まえたうえで、大局的には「次のようなこと」がいえるでしょう。

都会: 人間関係が機能的。その都度付き合う人や利用するサービスを変えることができる

田舎: 人間関係が濃厚で全人格的。生活のすべての面で人間関係が求められるので、都会のような「付き合い分け」が難しい

つまり、田舎でも都会でも、「暮らし」に大きく関わるのは「人間関係」であり、人付き合いがわずらわしいという人は都会を、濃厚な人付き合いを求める人は田舎を選ぶほうがいい、ということです。

(もちろん、都会でも濃厚な人付き合いが残っている下町、田舎といっても人間関係が希薄な地方都市もあり、ケースバイケースです)

「病院の選択肢」なら都会だが、同時に「準備」も必要

高齢になるとどうしても、体の不調や持病と付き合っていくことになります。

病院を選ぶという観点からは、都会のほうが選択肢は多いため、都会暮らしに軍配が上がります。

病院の選択のために地方から都市部に移り住む高齢者も多くいるほどです。

また、スーパーマーケットや銀行、郵便局など、暮らしに必要なサービスも近接していることから、暮らしやすさが向上します。

ただし、都市部の人間関係は機能的になりやすいため、老後の安心を確保するためには、介護や福祉、日常の見守り、権利や財産の保護など、必要に応じて適切な外部サービスを利用することが基本的な考え方になるでしょう。

都会に暮らすのであれば、自分にとって必要かつ適切なサービスを知っておくことが重要です。

そのためには、情報収集や下調べなどの準備が欠かせません。

外部サービスを適切に選ぶための知識を教えてくれる相談機関としては、各市町村の「地域包括支援センター」がその役割を果たしているケースが多いです。

これは都会でも田舎でも変わりません。

では、田舎暮らしを成功させるための秘訣はなんでしょうか?

田舎暮らしは「人間関係から得られる情報」が重要に

「老後は都会を離れて、長年憧れてきた田舎暮らしをしたい」という場合、やはりよりよい人間関係を構築することが非常に重要です。

というのも、田舎の生活においては、人間関係から得られる公式・非公式を問わない情報が重要だったりするからです。

移住先の候補が想定できているなら、高齢期を迎える前から、その地域で人間関係を作れるような準備期間を設けてもいいでしょう

そのうえで、医療や介護など、いざというときに必要となるサービスにどのようにアクセスしたらよいかをあらかじめ考えておくと、安心して田舎暮らしが送れます。

都会暮らしにも、田舎暮らしにも、メリット・デメリットがあります。

いずれにせよ、イメージや憧れだけでなく、日々の暮らし、医療や介護について、リアルに考えてみることが大切です。

(松尾 拓也 : 行政書士、ファイナンシャル・プランナー、相続と供養に精通する終活の専門家)