『聖剣伝説』シリーズがついに本格復活。体験版からその未来を占う(画像はSteamより)

スクウェア・エニックスの新作『聖剣伝説 VISIONS of MANA(ヴィジョンズ オブ マナ)』が2024年8月29日に発売される。それに先駆け本作の体験版が配信開始となったのだが、その中身に驚いた。

本作は、1991年から続く『聖剣伝説』シリーズの最新作である。このシリーズはもともと「ファイナルファンタジー」の外伝として生まれ、現在も続く人気作品となっている。

歴史あるシリーズの新作で注目を集めてはいるものの、実は『聖剣伝説』シリーズには困難も多かった。ゆえに、どこか不安も漂っていたのである。

「聖剣伝説」シリーズの1作目は1991年に発売

だが、本作の体験版を遊んでみると、シリーズとしてまた軌道に乗りそうなほどよくできていたのだ。

まずはこのシリーズの歴史について軽くおさらいしよう。1991年にゲームボーイで『聖剣伝説 〜ファイナルファンタジー外伝〜』が発売され、1993年にはスーパーファミコンで『聖剣伝説2』が発売、さらに1995年には『聖剣伝説3』が登場している。

この3作品が『聖剣伝説』シリーズの黄金期といえよう。そこで一度落ち着いてしまい、その後は作品の出るペースがかなり落ちる。

1999年にPlayStationで『聖剣伝説 LEGEND OF MANA』が出るなど、外伝やリメイク作品は登場していたものの、次のナンバリングタイトルとなる『聖剣伝説4』が出たのは「3」から11年後の2006年となる。


最新作にも『聖剣伝説』シリーズらしいキャラクターが登場するようだ(画像はSteamより)

さらに、『聖剣伝説4』は評判が芳しくなく勢いを落とす。その後もシリーズの名を冠する基本プレイ無料のタイトルなどは出ていたものの、低空飛行が続くような状況であった。

そして、ナンバリングシリーズ最新作と解釈してよい『聖剣伝説 ヴィジョンズ オブ マナ』が、家庭用ゲーム機では約18年ぶりに登場するわけだ(ヴィジョンズの「V」が「5」を意味していると思われる)。

『聖剣伝説』シリーズは日本国内ではかなり有名なものの、転びながらもなんとか起き上がったシリーズといえる。

開発はネットイースの「桜花スタジオ」

最新作の開発はスクウェア・エニックスではなく、中国の大手ゲーム開発・運営会社ネットイースの「桜花スタジオ」が担当する。日本・中国両方の国のクリエイターの長所や技術力を生かし、家庭用ゲーム機やスマートフォンでタイトルを展開するスタジオだ。

ディレクターは、元カプコンで『Devil May Cry 5』や『モンスターハンタークロス』シリーズに携わった吉田亮介氏と、バンダイナムコエンターテインメント出身の小澤健司氏の2人となる。

桜花スタジオは2020年に立ち上がったばかりであり、このスタジオが作るゲームがどういうものになるのか未知数であった。だが、今回の『聖剣伝説 ヴィジョンズ オブ マナ』体験版でかなりのものが作れると感じた。

ここからは体験版でわかった本作の長所を紹介しよう。まず、なんといっても優れているのは“見た目”である。

かわいらしく特徴のあるキャラクターはもちろん、フィールド全体がかなり明るく楽しげに描写されており、しかもその広いフィールドを自由に移動できる(本作はゲームの一部に広いエリアが用意されたセミオープンワールドとなっている)。


キャラクターたちはやや表情が硬い印象があるものの、とてもかわいらしく仕上がっている(画像はSteamより)

現在は、スマホ向けタイトルとしてオープンワールドのアクションRPGがひとつのムーブメントになっているのだが、本作はかなりそれを思わせるような作品に仕上がっている。つまりただ懐かしいだけでなく、新しいプレーヤー層にも訴求できそうな見た目になっているわけだ。

自然とフィールドを探索したくなる仕組み

とはいえ、ただ見た目が美しいだけではあまり意味がない。そこで本作は、そのフィールドをプレーヤーに探索させる仕組みを用意している。

一番重要なのは、ミニマップに宝箱などの位置が表示される部分だろう。場所がわかっていればプレーヤーは思わずそれを取りたくなる。収集品の「クマミツ」もあちこちに落ちており、これを集めると後でアイテムに交換できる。拾って得するものが見える形で落ちていたら、つい拾いたくもなるだろう。


体験版では、「ピックル」という生き物に乗って広いフィールドを冒険できる(画像はSteamより)

このほかにも、各地にいる住民のサブクエストは話を聞いただけで自動で受注できる簡便な仕様など、自然とプレーヤーが探索をしたくなるような、快適で誘導の効いた作りになっている。

また、「聖剣伝説」シリーズといえば、基本的に1人用のアクションRPGなのに3人パーティーで戦うところも大きな特徴である。

しかし、この複数人バトルには難点もある。味方が強すぎるとプレーヤーの存在意義が薄いし、かといって仲間が役に立っていないように見えてはストレスになってしまう。

あくまで体験版の範疇に限るが、そのバランスもうまくとれているようだ。仲間がきちんと戦っている印象を受けるし、自分が操作しているキャラクターもしっかり攻撃・回避をする必要がある。

体験版で見せたかったと思われる探索・バトルの両方がきちんと仕上がっているのだ。

聖剣伝説の特徴を反映しながら現代風のルックスに

このように、本作は『聖剣伝説』の特徴を反映しつつも現代風のルックスにできており、かなりよくできている。本格的な評価は製品版が発売されてからになるが、それでも期待が持てるのは間違いないだろう。

さまざまな困難を乗り越え、ついに発売される『聖剣伝説 ヴィジョンズ オブ マナ』は、シリーズの新たな一歩となるタイトルかもしれない。

(渡邉 卓也 : ゲームライター)