by hans-johnson

スーパーマーケットチェーンのイオンリテールが2024年7月1日から、全国約240店舗の「イオン」「イオンスタイル」で笑顔と挨拶向上を目的とした従業員接客教育に、AI端末「スマイルくん」を導入していることを報告しています。

世界初!エッジAIを従業員の笑顔・発声トレーニングに導入 従業員の笑顔と挨拶の実施率が1.6倍に

(PDFファイル)https://www.aeonretail.jp/pdf/240701R_1.pdf



Japan supermarket chain uses AI to gauge staff smiles, speech tones in quality service push | South China Morning Post

https://www.scmp.com/news/people-culture/article/3271333/japan-supermarket-chain-uses-ai-gauge-staff-smiles-speech-tones-quality-service-push

イオンリテールが導入している「スマイルくん」は、ソフトウェア企業のInstaVRが提供するもので、従業員の笑顔や声量、滑舌、調子といった450以上の特徴をリアルタイムにAI分析してスコアリングし、即座にフィードバックすることができるというもの。InstaVRによると、従業員の笑顔や発声をゲーム感覚で楽しみながら改善することができるとのこと。



イオンリテールは「これまで、接客応対を強化するための従業員教育を進める中で、応対する際の笑顔や発声の基準が人によって異なることで、口角が十分に上がっていなかったり、声量が十分でなかったり、聞きやすい滑舌になっていなかったりといった、目標とする水準に十分に達していないという課題がありました」と述べ、「お客様に気持ちの良い笑顔と挨拶を通じてより良いお買い物環境をご提供するため、InstaVRの『スマイルくん』を採用しました」と語っています。

実験としてイオンリテールは2023年7月から全国8店舗にスマイルくんを設置。合計約3400人の従業員を対象に3カ月間にわたる実証実験を実施したところ、従業員から客への笑顔と挨拶の実施率が導入前と比べて約1.6倍に向上していることが判明しています。これを受けてイオンリテールは「『スマイルくん』の導入店舗を、新入社員配属店舗を中心とした北陸信越、関東、東海、近畿、中四国エリアの240店舗に拡大し、笑顔や発声基準の全社での標準化を図ることで、さらなる接客応対とサービスの質の向上につなげていきます」と報告しました。

しかし、一部のメディアからは「スマイルくん」の導入に否定的な意見が寄せられており、全国繊維化学食品流通サービス一般労働組合同盟(UAゼンセン)が実施した調査では、「サービス業の労働者が『基準』に従って笑顔を強制されることは、別の形のカスタマーハラスメントなのではないか」「笑顔は美しく、心に響くものであるべきで、商品のように扱われるべきではありません」「機会を使って人々の態度を標準化することは、冷酷でばかげています」との意見が上がっています。



また、海外メディアのSouth China Morning Postは「このシステムは、職場でのハラスメント、特にカスタマーハラスメントを増加させるのではないでしょうか」と批判しています。

掲示板サイトのHacker Newsでも「笑顔が強要され、AIによってその笑顔が優れているかどうかが判断されてしまうと考えると非常に嫌悪感を感じます」と批判する声や、「日本が強烈な順応主義社会であることを考えると驚くことではありません。日本人は個性をあまり大切にしていないようです」と指摘する声が上がっていました。