蓮舫氏(写真:時事)

満を持して都知事選に挑み、現職・小池百合子氏との「女傑対決」と煽り立てられた挙げ句、2位どころか3位に沈んだ元民進党代表・蓮舫前参院議員(立憲民主を離党中)の「今後」に、中央政界の注目が集まっている。「民進党代表時に初の女性首相候補にも擬せられた革新陣営のトップスターで、次期衆院選で国政復帰すれば、再び立憲民主の中枢で活動できる」(政治ジャーナリスト)とみられているからだ。

ただ、これまでに取り沙汰されていた出馬選挙区は新設の東京26区。すでに同区には、立憲民主を離党して無所属となった松原仁元拉致問題担当相に加え、自民党の公募で選ばれた新人で元財務官僚の今岡植(うえき)氏の出馬が確実。しかも日本維新の会の松原氏支援も取り沙汰されるだけに、蓮舫氏が「立憲民主・共産系候補」となった場合「現状では苦戦必至」(選挙アナリスト)との見方が少なくない。

そうした中、都知事選惨敗後、一部メディアやSNSなどネット上で目立つ“蓮舫叩き”に対し、蓮舫氏自身も連日自らのXに反発の投稿を繰り返している。ただ、その対応が「『批判するだけの政治家』との拒否反応につながるという悪循環に陥っている」(政治ジャーナリスト)ようにもみえる。

4年後「石丸vs蓮舫」が再現する可能性も

これも踏まえ、蓮舫氏自身もここにきて、国政復帰せずに都知事選再挑戦の意向を明らかにした。これに対し、都知事選で蓮舫氏の“天敵”ともなった石丸伸二・前広島県安芸高田市長も「国政より自治体のトップを目指す」として、都知事選再挑戦の考えもにじませる。このため、今後の展開次第では4年後の都知事選での「石丸vs蓮舫」が再現する可能性もあり得る。

しかも、圧勝での3選を踏まえ、小池百合子知事の周辺から「過去誰もいない4選に挑むのでは」との声も漏れてくる。このため、「もし4年後の都知事選も『小池・蓮舫・石丸』の“三つ巴”の戦いとなれば、今回以上の“政治的お祭り”となる」(選挙アナリスト)ことは確実で、だからこそ関係者は小池、蓮舫、石丸3氏の言動に注目するのだ。

蓮舫氏は都知事選から6日後の13日、自らのインスタグラムで生配信を実行。その中で「(都知事選から)一週間たって結構落ち着きました」と笑顔で語りかけ、「今回、達成感があった。確実に演説を通じてつながってる人がいるのもわかったし、言葉も届いていたし、それを切望していたとの言葉もあった」と手応えの大きさを力説。

そのうえで一連の“蓮舫叩き”について「『女政治家負けた』『何言ってもいい』的な構図」と怒りを隠さず、「私は我慢できたし流せたが、(これ以上)我慢してたら、次の子たちが流しきれない」と、政治家を志す次世代を守りたいという思いを独白した。

その一方で、視聴者から「次のステージ」を問われると「今は、国政選挙はもう考えてない」と明言。「国政から卒業して、都知事に手を上げて、すごい景色を見た。1000人単位で聴衆が増えていった演説を初めて見た。あそこまでちゃんと聞いてくれた人たちがいて、120万超える人が『蓮舫』って書いてくれた。これでまた国政に戻るのは、私の中では違う」と強調した。

蓮舫氏はその後も、自身のX(旧ツイッター)を更新し続け、「今回の挑戦で街頭演説を通じた私の想いが、集まってくれた人々の熱量とつながった達成感があった。『変えよう、との共鳴』。結果は出せなかったが、挑戦して良かったと思う」などと繰り返し投稿。そのうえで自身に対するバッシングや著名人からの反応を巡って「女、政治家、負けた。何言ってもいい的な構図」などとして、今後も反論し続ける考えを示した。

大苦戦を招いた「保革対決」の構図

そもそも、今回の都知事選を振り返ると、「蓮舫氏の突然の出馬表明で選挙戦の構図が一変」(選挙アナリスト)し、中央政界の各政党にとっても「次期衆院選の勝敗にもする天下分け目の首都決戦」(自民幹部)となったのは間違いない。

まず、6月20日の告示まで3週間余となった5月27日に蓮舫氏が出馬表明。機先を制せられた小池氏は、都議会最終日の6月12日になって出馬表明し、その時点で「小池vs蓮舫」という“頂上決戦”となり、地域政党「都民ファースト」を基盤に自民、公明などが支援する小池氏と、立憲・共産両党などが支援する蓮舫氏という「保革対決」の構図が明確になった。

ただ、結果的にはこの「保革対決」が蓮舫氏の大苦戦につながった。というのも、蓮舫陣営は自民党の裏金事件への国民的批判を踏まえ、『反自民・非小池』を掲げたが、「多くの都民の間では、国政での対立を都政に持ち込むことへの違和感が強かった」(選挙アナリスト)からだ。

そこで都民の支持を急拡大させたのが、「SNS選挙」と呼ばれるインターネットなどをフル活用した選挙戦を展開した石丸氏。主要メディアや各陣営の情勢調査でも、「当初は小池、蓮舫両氏のトップ争いだったが、中盤以降には石丸氏の支持が急上昇し、蓮舫氏との2位争いが焦点になった」(同)とされ、最終的には「石丸氏が大躍進の2位となり、蓮舫氏は大差の3位」という結果につながったのだ。

こうした状況変化について、蓮舫氏も選挙戦後半には、子育て支援など都政の重要課題での小池氏との違いをアピールするという戦術転換を試みたが、「都民の半数近くとされる『既成政党は信用できない』という無党派層が、石丸氏支持に雪崩を打つ結果となった」(同)のが実態だ。

「不確定要因」ばかりの4年後再挑戦

そこで注目されるのが4年後の都知事選の展望だ。蓮舫氏は立憲民主に復党したとしても、「国政復帰を否定し続ければ、政治家としての選択肢は都知事選再挑戦しかなくなる」(政治ジャーナリスト)はずだ。一方、石丸氏は「国政挑戦を否定し、自治体トップを目指すのなら、取りあえず2025年11月に予定される広島県知事選が選択肢となり、もし当選すれば、都知事選再挑戦はなくなる」(同)とみられている。

さらに、「4年後の7月には76歳となる小池氏が、あえて過去に例のない4選に挑む場合、15歳年下の蓮舫氏は今回以上の強敵となる」(同)ことに加え、「もし、自公両党などが小池氏の後継候補を擁立する場合でも、蓮舫氏を上回る知名度や政治家としての実績を持つ人物は見当たらない」(立憲民主幹部)との見方が多い。だからこそ、永田町では「蓮舫氏は都知事選の借りは都知事選で返す決意」(周辺)との臆測が広がるのだ。

ただ、これからの4年間は「何が起こるかわからない混迷政局が続く」(閣僚経験者)ことは否定しようがない。まず、9月の総裁選と、来年10月までには実施される次期衆院選、さらには来年7月の参院選と「政局の大きな節目」が目前に迫り、展開次第では4年後には「政界大再編」によって政権の枠組みが大きく変わっている可能性もある。それだけに、蓮舫氏の“再起”までの道筋は、「不確定要因ばかりで予測不能」(政治ジャーナリスト)というのが実態だ。

(泉 宏 : 政治ジャーナリスト)