スピーディーかつ見落としのない、効率的な仕事の進め方とは(写真:マハロ/PIXTA)

とにかく早く仕事を終わらせたくて、行き当たりばったりな仕事の進め方をしてしまっていませんか? せっかちな性格を自認するクリエイティブディレクターのハラヒロシ氏は、「スピードと質を両立させるためには、まず作業をリスト化して全体を把握する、パターン化・ルーティン化・フォーマット化するといった工夫が必要です」と言います。そんなハラヒロシ氏に、スピーディーかつ見落としのない効率的な仕事の進め方について解説してもらいました。

※本稿は、ハラヒロシ著『「効率化」と「クオリティ向上」を同時に実現する せっかち式仕事術』の一部を再編集したものです。

作業をリスト化して全体を把握する

一日の仕事量がどのくらいあるのかを把握せず、目の前の作業のみに集中してしまうと、行き当たりばったりな仕事の進め方になります。

これでは、ほかにどんな仕事をするのか理解していない、毎日仕事が終えられない状態が続く、タスクを見落とすといったことが起こり得ます。

「早く終わらせたい」

「後回しにするのが不安」

「時間をムダにしたくない」

と思っているはずなのに、自分の効率の悪さに気づくのはあとになってからです。

これを防ぐためには、まず、始業前やプロジェクトの前に自分がやるべき作業をリスト化します。

せっかちが発動して衝動的に手をつけることを抑制する効果が期待でき、タスクの見落としを防いで、仕事の流れを途切れさせることなく進めることができます。

何をすべきか明確になることがせっかちのポジティブエネルギーとなって、目についたところから着手するよりも、より作業効率は上がるはずです。

リスト化の手段としては、リマインダーやタスクリストなどのアプリを活用するのがおすすめです。

私はMacとiOS標準のメモアプリを使っています。

チェックリストを作成する機能があるのですが、チェック(完了)した項目が自動的にリストの下に移動してくれるので、それがたまっていくことが小さな成功体験の積み重ねに見えます。同時に、リストから残りの仕事が減っていくことで体が軽くなる感覚になります。

「早く終わらせたい」というせっかちマインドの達成感を見事に満たしてくれます。

リストには、「今日はこの仕事をやる」といったプロジェクト名を記入するのはもちろん、「◯◯さんに返信」「領収書をプリントする」「◯◯さんの進捗確認」「ゴミ捨て」など、どんな小さなことでも書くようにしています。

だいたい、1日に20〜30くらいのタスクになります。

最初は「多いな……」とプレッシャーを感じるのですが、「早く終わらせたい」というせっかち魂が着火し、項目の多さが「早く取りかかろう」というエネルギーに変わります。

このように「自分がやることすべて」のリストがあると、「あれどうなったっけ……?」という余計な思考が入る余地がなくなります。

そして、完了したものはきれいサッパリ忘れることができます。

もちろん業務中にもタスクが発生するので、ボールを受け取ったらすぐにメモに追加→完了したらチェックを押す、という作業は都度行います。その繰り返しで未了と完了がきれいに仕分けされている感じはたまりません。

ただし、リストが並ぶことで「仕事をやっているつもり」になってしまうのが注意点です。

タスクが多い、仕事が忙しいことが大事なのではありません。

このタスクは自分がやるべきことなのか? 仲間や外部パートナーに依頼できないか? なども同時に考えるべきだと思っています。

そういった観点からも、リスト化することは自分の仕事・作業を視覚化することができ、考えるきっかけを与えてくれます。

丁寧・きれいに描こうとしない

私は、メモをとるときや指示を書き込むときなどに、字を丁寧に書くのは時間のムダと思ってしまうので、ギリギリ判別可能な殴り書きをマスターしつつ、独自の略字や省略語を使うようにしています。

たぶん社内では「すごく字が下手な人」と思われているのでしょうけど、ちゃんと通じているので気にしていません。

また、企画のアウトラインや、クライアントとユーザーの相関関係、デザインのラフなどを手描きで用意する場面が多いのですが、これも丁寧・きれいに描こうとはしません。

丁寧に描いていると、途中でちょっと失敗するとすぐ描き直したくなってしまうからです。

それでは当然時間がかかります。

手描きで描く場面の目的はほとんど、全体の流れや優先順位などを相手に簡潔に伝えるため。

その目的を果たせさえすれば、きれいに描く必要はないのです。

また、描くアイテムや描き方も統一させておきます。

紙はA4サイズのコピー用紙、ペンは滑らかに書けるボールペン、描く場所は広いデスク、といったように。紙に描くときの「しかく」や「まる」といった図形も、自分の中である程度描き方を決めておくと、その都度悩まなくて済みます。

なお、iPadなどデジタルで描くこともありますが、その場合は「取り消しをしない」ようにしています。「取り消し」は便利な機能ではありますが、せっかくのアイデアの流れを止めてしまうので、使わないように気を付けています。

そうしているうちに、いつしか無心で手が動いてくれるようになります。

必然的に、作業のスピードが上がります。

考えない工夫をする

せっかちな人は余計なこと・余分なことを「考える」時間をもったいないと思うので、考えなくてもいいことは徹底的に排除しようとします。

考える時間が短ければ、すぐに行動できるからです。

このスタンスを、仕事にも活用します。

たとえば毎日の生活や仕事における「準備」。

服装や食事など毎日行うことをパターン化・ルーティン化することで、余計なことを考える時間を減らせます。

「出社したらメールチェックから始める」といったマイルールを決めることも該当するでしょう。普段ランチで使う店の選択肢を絞っておくことも、考えない工夫のひとつです。

テクノロジーを活用するのも有効です。

検索する、ChatGPTを使うなど、考える代替手段を用いる・自動化されたシステムやアプリを積極的に活用するなどが挙げられます。

ChatGPTを使えば、長文を要約したり定型的な質問に回答させたりといったことができますし、集めたデータを分析・スコアリングして、見込み客の属性によって情報を自動配信するといったオートメーションツールの利用も増えています。

AIの利用によって、アイデアを無数に量産させるなど「知的生産」への活用も広がっているので、うまく使えば「考えない工夫」の後押しになるでしょう。

私も昔から「考える」ことが億劫で面倒だと思うタイプで、日々の生活の中で極力余計なことを考える時間を減らしたいと思っています。

とはいえ仕事柄、考えることは大事なこと。そこで、肝心なときに考えるパワーを残しておけるよう、忙殺される仕事の中でムダな作業を減らす工夫をしています。

一例を挙げると、

・メールの受信は宛先ごとに自動で振り分ける(あとで探すのが楽になる)
・打ち合わせ場所は決まった場所を指定する(いちいち探す手間が省ける)
・テンプレートやフォーマットを活用して文書作成を効率化する(同じ作業を繰り返す手間が省ける)
・フォルダやファイル名に命名規則を作る(検索にかかる時間が短縮できる・誤操作が減る)
・OCRで手書き文字をデジタル化する(文字起こしをする手間が省ける)

などです。「自動化」「仕組み化」できるものはツールも活用して、できるだけ手間を省いています。

そのぶん、ムダな作業を減らして確保できた時間は、重要な業務に回します。

たとえば、アイデアやデザインを考えるときは「自分たちだからこそ向き合える」と顧客の顔や未来を想像しながら、手間を省かないように意識しています。


『「効率化」と「クオリティ向上」を同時に実現する せっかち式仕事術』P.155より

せっかちな人がその力を最も発揮できることのひとつが、ルールが決まっている作業、流れや工程が定まっている単純作業、以前やったことを再度繰り返す反復作業などです。

これらはやることが定型化されているため、より効率的に作業しようというせっかち魂に火がつきやすく、スピード感を持って作業を進めることができます。

逆を言えば、ルールが曖昧、流れが決まっているのにマニュアル化されていない、以前にも似たような事例があるのに必要な情報がすぐに探し出せない……といった状態は、せっかちさを十分に活かしきれません。

フォーマットを作って作業効率を最大化させる

「定型化されたフォーマットを使用してプレゼン資料やレポートを作成する」「プロジェクト管理ツールを使い、全体の業務フローがすべて網羅された状態でスタートさせる」など、できるだけフォーマットを作成し、業務を定型化させることが大事です。

これにより、余計なことに頭を使わずにあらゆる作業を効率的に行うことができるようになります。

「うっかりせっかち」な人でも、最初からフォーマットがあればミスや対応し忘れといったトラブルを防ぐことにつながります。

チーム作業でも個人的な作業でも、再現性の高そうな仕事はフォーマット化しておくのがおすすめです。

一例を挙げると、

・プロジェクトの業務手順リスト(ヌケモレを防ぐ・完了チェックで品質を維持)
・入社時/退社時やること表(労務や庶務に関する手順をまとめておく)
・経費申請のフォーマット(Googleフォームで作成してペーパーレス化・集計を簡単にする)
・メンバーごとの面談シート(期ごとの振り返りがしやすい・何を話したのかを記録)
・デザインパーツのテンプレート化(よく使うパーツは共有して全員で使い回す)
・原稿収集シート(見出しや本文、英訳などのフィールドを用意。文字数指定も)
・過去の類似制作物の見積一覧表(似た案件の見積算出の際に参考にする)
・PC入れ替え時の手順表(インストールするアプリや、アカウントのルールなどを記載)

などがあります。


なお、私の会社では、社員がよく使う文書はできるだけフォーマット化・マニュアル化して共有フォルダに入れていますが、さらに細分化して、小規模・中規模・大規模案件で分けた見積書の雛形を用意するなどの個別の工夫をしています。

これらのフォーマットはどんどん増えていくので、場所や使い方が散乱するのを防ぐために、「ヘルプデスク」というブログを作成しています。

会社の業務に貢献しそうなこと、よく問い合わせがあること(引っ越ししたらどうするかといった手続き系、外部パートナーへの依頼方法、テンプレート素材)など、汎用的な情報をまとめたプラットフォームを用意しておくことで、何度も聞かれるようなことに使うムダな時間を削減しています。

みなさんも、取り入られる部分があればぜひ試してみてください。

(ハラヒロシ : クリエイティブディレクター・デザイナー)