那覇地検が入る那覇第一地方合同庁舎=2024年6月19日午後7時20分、那覇市、伊藤和行撮影

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 16歳未満の少女を誘拐し、同意なく性的な行為をしたとして、那覇地検が米兵を不同意性交とわいせつ目的誘拐の罪で起訴した。

 7月12日に那覇地裁で初公判が開かれる。沖縄では戦後、米軍関係者による事件・事故が繰り返されてきた歴史があり、地元は強く反発している。

 起訴されたのは、米国籍のブレノン・ワシントン被告(25)。捜査関係者によると、在沖米空軍の兵長という。

 起訴状によると、ワシントン被告は昨年12月24日、沖縄本島中部の公園で、少女を誘って車に乗せ、自宅に連れ込んだ。さらに、少女が16歳未満と知りながら、同意を得ずに性的な行為をしたとされる。起訴は3月27日付で、地検はワシントン被告の認否を明らかにしていない。

 捜査関係者によると、2人は面識がなく、被害直後、少女の関係者から110番通報があった。沖縄県警が防犯カメラなどからワシントン被告を特定し、米軍側に照会。米軍の捜査機関と協力し、県警が3月11日に書類送検し、起訴と同日の27日付で米側から日本側に被告の身柄が引き渡された。

 日米間の合意では、日本側に刑事裁判権があるケースで容疑者の身柄が米側にある場合、起訴されるまで米側が身柄を確保すると定めるが、「殺人又は強姦(ごうかん)」など凶悪犯罪であれば米側が起訴前の身柄引き渡しについて「好意的な考慮を払う」としている。今回は該当するケースだったが、日本政府関係者によると「捜査を実施できた」として引き渡しを米側に求めなかったという。

 米軍基地が集中する沖縄では、米軍関係者による事件がやまない。近年も、1995年に米兵3人による少女暴行事件、2016年には米軍属が女性を暴行目的で殺害する事件があった。

 玉城デニー知事は25日、記者団に「基地と隣り合わせの生活を余儀なくされている県民に強い不安を与え、女性の尊厳を踏みにじるもの。強い憤りを禁じ得ない」と述べた。(棚橋咲月、小野太郎、松山紫乃)

■林官房長官「極めて遺憾」

 16歳未満の少女を誘拐して同意なく性的な行為をしたとして、那覇地検が米兵を不同意性交とわいせつ誘拐の罪で起訴していた事件をめぐり、林芳正官房長官は25日の記者会見で「このような事案が発生したことは極めて遺憾だ」と語った。そのうえで、那覇地検が米兵を起訴した3月27日に、外務省の岡野正敬事務次官がエマニュエル駐日米大使に対して遺憾の意を申し入れ、綱紀粛正と再発防止の徹底を求めたことも明らかにした。

 林氏は「米側も深刻に受け止めており、捜査に協力がなされたものと承知している」と説明。「米軍人などによる事件、事故は地元のみなさまに大きな不安を与えるもので、あってはならない」と強調し、「今後も米側に対し、さまざまな機会に事件、事故の防止の徹底を求めていく」と述べた。

 2008年に在沖縄米海兵隊員が女子中学生に乱暴した疑いで沖縄県警に強姦(ごうかん)容疑で逮捕された事件では、高村正彦外相がシーファー駐日米大使(いずれも当時)に対し遺憾の意を伝えている。(笹川翔平)

■沖縄で起きた米軍関係者による主な性犯罪

1995年9月 沖縄本島北部で米海兵隊員ら3人が少女に暴行

2001年6月 米空軍嘉手納基地所属の米兵が北谷町の駐車場で女性に暴行

 08年2月 米海兵隊員が女子中学生に暴行

 12年10月 米海軍兵2人が通行中の女性を連れ去って暴行

 16年3月 米海軍兵が那覇市のホテルで寝ていた女性に暴行

   4月 米軍属がうるま市で女性をナイフで刺し、殺害するなどした

 21年10月 米海兵隊員が女性に暴行を加えようとしてけがを負わせた