次々と原作未読者の頭に浮かぶ疑問。そして彼女が映画鑑賞後に受けたという「最大の衝撃」とは――。(写真:婦人公論.jp 編集部)

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2022年12月3日に公開された映画「THE FIRST SLAM DUNK」(井上雄彦原作・監督・脚本)。同作品は世界的な人気を博し、興行収入は158億円にのぼった(24年5月28日時点。東映発表)。その作品が24年6月10日より「Netflix」にて独占配信開始。さらに8月13日から復活上映されることが発表され、多くのファンが歓喜している。そこで今回「SLAM DUNK」にまつわる記事を再配信する。(初公開日:2023年03月10日)*******大ヒット中の「THE FIRST SLAM DUNK」だが「原作未読で映画のみ鑑賞した」という人もちらほら。そこで今回、原作連載中から『SLAM DUNK』を追っていた40代・リアルタイム読者と、20代・原作未読者が映画の感想を話し合いました。「なぜ桜木は赤坊主?」「湘北メンバーで一番バスケが上手なのは誰?」そして原作未読者が映画鑑賞後に受けた「最大の衝撃」とは――。*記事は映画のネタバレを含みます。

【写真】原作未読者「やっぱり浅い感想なのかも。それでも私が泣くのには十分感動的で、素晴らしい作品でした」

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40代の思春期を直撃した『SLAM DUNK』

――原作の『SLAM DUNK』(井上雄彦/集英社)は『週刊少年ジャンプ』で、1990年から96年にかけて連載されていました。そしてその盛り上がりとともに、バスケブームが起きて。スポーツとしてのバスケットボールはもちろん、NBAやオリンピック、ストリートバスケなどなど、さまざまな分野に影響が派生していった。その中に、ファッションとしてのバスケットシューズ人気もあったんだよね。

いわゆるバッシュ、ですね。

――たとえばナイキの「エア・ジョーダン」シリーズ。特に作品中、湘北バスケ部メンバーの流川楓が履いていた5、そして桜木花道が履いていた1、6あたりの人気はすさまじかった。というか、マンガの中に実在するブランドやアイテムが描かれて、それがブームを起こした、っていうのは今考えても凄い現象。

映画の中でも、シューズはすごく印象的に使われてましたよね。スリーポイントシュートを放った後、着地までの余韻を象徴するように足元が描かれていたり。

――スニーカーブームそのものは、盛り上がりに浮き沈みがあったりしながら今に至るまで続いていますが、ブームを支えてきた40代の多くは『SLAM DUNK』の洗礼を受けた世代だと思う。それこそ小学校高学年とか中学校とか、オシャレに目覚める思春期のタイミングの時に原作やアニメがあって、直撃。

それは影響が大きい……。

――作者の井上雄彦先生が『週刊少年ジャンプ』で『SLAM DUNK』の前に、連載していた『カメレオンジェイル』(著:井上雄彦、企画・原案:渡辺和彦/集英社)もニューヨークを舞台にした話だったし、すごくスタイリッシュだった。今の40代は、世代的にアメリカの文化を雑誌や映画、音楽やら、いろんな形で吸収してきたと思いますが、自分の場合「漫画を通じて」という意味では、鳥山明先生と井上先生の影響がやっぱり大きかったと思う。流川がヘッドホンを付けてロードバイクに乗っているシーンなんかもしびれたなあ。

私は「桜木が不良だった」とは今も認識していない

90年代、いろいろな盛り上がりの上に立っていたのが『SLAM DUNK』だったんですね。原作は96年に終わっているのに、登場人物は、今でも違和感のないような、おしゃれな服装や髪型をしているのがまたスゴイ。

(映画のパンフレットを見ながら)流川の髪型とか、宮城リョータのツーブロックとか。


この企画のために、私40代はあらためて原作を読みこんでまいりました(写真:婦人公論.jp 編集部)

――高校生の時、三井寿の髪型を真似する人がすごく多かった。短すぎない、ちょっとぼさぼさなショートカット。

三井、グレていた時は髪の毛長かったんですよね。そういえば、バスケ部メンバーの桜木花道もかつてリーゼントだったって、映画鑑賞後に知って驚きました。あれ、このリーゼントの人は誰だ、と。

――赤いリーゼントの不良、っていうベースに加えて、 海南大付属戦での敗戦をうけての「赤坊主」なんだけど。

赤い髪にしていたことに、何か理由はあるんですか?

――いや、原作内でも「髪がのびた」って話はあったけれど、細かくは触れていないと思う。染めているわけでもなさそうだし、地毛かな……。

だから私は「桜木が不良だった」とは今も認識していないです。映画ではヤンチャで生意気、それでいてバスケ初心者なのに自信過剰、という印象を覚えたくらい。

でも、実際にできちゃうし、みんなから頼られているし。「桜木君がリバウンドを取れば」と監督の安西先生からアドバイスされて、実際に良い結果を出していた。そんなシーンが印象的でした。桜木って、リョータより上手いんだな、みたいな。

――衝撃の感想。(笑)

背景が分からずとも

原作で、湘北バスケ部メンバーの中で一番上手なのは誰、ということになっていたんですか?

――一番、なんて考えたことがなかった(笑)。ポジションやそれぞれに求められている役割が違うから何とも言えないけど、やっぱりプレーの巧みさでいえば流川なのだろうか……。

流川がすごいってことはわかるんですが、結局、相手の沢北栄治と対戦して勝てない、という印象が強くて。それでいて、映画の中だと沢北の相手はあくまでリョータ、という立ち位置でしたし。キャプテンの赤木剛憲は、最後の方までずっと苦戦していた印象です。

――赤木の場合はプレー面以上に、チームの精神的な支柱、という部分がしっかり描かれていたよね。

苦労を重ねて重ねて、ようやく自分たちの代になって、メンバーに恵まれて……。その過程あっての、今のチャレンジや喜び、ということはしっかり伝わってきましたし、そこは大泣きしました。三井も、フラフラながら、力を振り絞ってフリースローを投げるし、桜木も「今が人生のピークだ」と無茶をする。

試合とは言え、なぜここまで命というか、魂を削って死闘をするんだろう。でもいろいろな背景があって、この一投を放っているに違いない……。めちゃくちゃ心に響きました。

映画鑑賞後に受けた「最大の衝撃」とは

――原作では、よりはっきりと描かれているけれど、湘北メンバーだけでなく、みんながみんな、乗り越えられない壁にぶつかりながら、ここに集って、試合に臨んでいた。それは映画の中でも表現されていたように思います。

(パンフレットを再びめくりながら)でも、あんなに素晴らしかったリョータにまつわるあのシーンも、このシーンも原作ではなかったって聞いて、とにかくそれが映画鑑賞後に受けた、最大の衝撃でした……。

反面、リョータ以外の人たちがこの試合に賭けている想いの深さが、原作未読だとやっぱり浅いのかもしれない、と感じてもいます。それでも、私が泣くのには十分に感動的で、素晴らしい作品でした。映画は。

――原作を読み込んで、逆に凝り固まったイメージのできていた自分には、とても新鮮な感想でした。そして結論としては、話しているうち、また『THE FIRST SLAM DUNK』を観たくなった(笑)。もう一度鑑賞した後、この記事をまとめたいと思います。

私も絶対、もう一度観ます!

<前編はこちら>