漫画家・江口寿史

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■時計好き漫画家とのコラボモデル

  時計関連の雑誌、MOOKを専門とする出版社、シーズ・ファクトリーが、1940~60 年代のアンティークウオッチの雰囲気をコンセプトに展開する腕時計ブランド「アウトライン(OUTLINE)」から、漫画家・イラストレーターの江口寿史とのコラボレーションしたモデル「オーバータイム(OVER TIME)」が発売すると発表した。

(参考:【【写真】江口寿史コラボ時計はどんなデザイン? 購入者には描き下ろしポスターの特典付き

  発売日は7月5日(金)で、時計のセレクトショップの「チックタック」全店とアウトライン公式サイトで限定販売されるとのことだ。また、6月7日(金)の昼12時から30日(日)まで、時計専門のクラウドファンディング「WATCH Makers」では、数量限定の特別価格で先行予約を開始する。

  江口と言えば、『すすめ!!パイレーツ』『ストップ!! ひばりくん!』などの「週刊少年ジャンプ」黄金期を彩った傑作漫画で知られるとともに、ジーンズからスニーカーなど様々な分野に造詣が深い趣味人としての一面ももつ。リアルサウンドブックでも江口にインタビューをしたことがあるが、江口は漫画界でも有数の腕時計好きで、これまでロレックスからG-SHOCKまで数々の腕時計を蒐集してきた。

  江口にとって、腕時計とはどんな存在なのだろうか。そんな弊誌記者の質問に対して、江口は「う~ん、愛らしい、ペットのような存在ですかね」と、語っている。ペットのように世話が焼けるうえに、手間がかかる。しかし、欠点も含めて愛おしくなる。それが腕時計の魅力なのだ。

■機械式時計へのこだわりが凝縮

  江口と腕時計の出合いは、漫画家としてデビューしたときから始まった。子どもの頃から絵を描くことが好きだった江口は、20歳で初めて『週刊少年ジャンプ』の新人賞に投稿。1977年、初投稿から1年も経たずにデビューを果たし、1977年から『すすめ!!パイレーツ』の連載が始まった。このとき、傍らにあったのは、21歳の時に父がプレゼントしてくれたセイコーのデジタルウォッチであった。

  江口は瞬く間に人気漫画家の仲間入りを果たすが、そのぶん極めて多忙な日々を送るようになった。『ストップ!! ひばりくん!』の連載時、神保町にあった集英社の執筆室に泊まり込みながら、〆切ギリギリまで原稿を描き続ける毎日が続いた。ついには原稿が描けなくなり、逃亡を図った苦い思い出もあるという。そんな苦楽を共にしたデジタルウォッチは、今も江口の腕に巻かれ、正確に時を刻んでいる。

  江口がこだわりをみせるのが1970年代から90年代のデジタルウォッチ、そして機械式腕時計であるという。オーバータイムとは「延長戦」という意味だが、今回監修する腕時計のデザインモチーフは、時計愛好家なら一目見てわかるように、70年代に登場した歴史的な名品である。

  江口のこだわりは、当時のオリジナルには存在しなかったホワイト文字盤を登場させた点にある。そして“トロピカル”と呼ばれて珍重される、黒が経年変化して変色したブラウン文字盤も製作。2種類の文字盤は、さすがは腕時計愛好家の江口ならではのチョイスだと納得のいくものだ。江口寿史ファンはもちろんであるが、機械式腕時計ファンも必見の1本である。ぜひ手に取っていただきたい。

(文=元城健)