高級コンビニエンスストアチェーンのフォックストロット(Foxtrot)の資産を所有することになった新しいオーナーは、4月末に突然倒産した同社を復活させたいと考えているようだ。

ニュースレターのスナックスショット(Snaxshot)、デジタルメディアのイーターシカゴ(Eater Chicago)、不動産ウェブサイトのザ・リアルディール(The Real Deal)が、フォックストロットを復活させようとする動きに関する記事を掲載している。米モダンリテールはこの件に詳しい消息筋から、同ブランドの共同創業者だったマイク・ラビトラ氏が復活の協議に関わっているらしいとの情報を得た。

ザ・リアルディールによると、シカゴの複数の家主がフォックストロットの新オーナーグループとの契約を検討している。米モダンリテールが話を聞いた消息筋によると、フォックストロットのリンカーンパーク店を復活させる協議が行われているという。検討中とされている契約には、過去2カ月間の滞納家賃について、新オーナーが一部を前払い、残りを今後12カ月かけて返済するという条件が含まれているらしい。将来的な収益分配契約も協議されているという。

リンカーンパーク店復活に携わるメンバー



フォックストロットは2023年にライバルだった食料品店チェーンのドムズキッチン(Dom’s Kitchen)と合併し、アウトフォックスホスピタリティ(Outfox Hospitality)に改名したが、8年以上の歴史のなかで借入金と株式で約1億8600万ドル(約292億円)の資金を調達したあと、ほぼ予告なしに倒産した。米モダンリテールが以前報じた通り、フォックストロットは過去2年間に複数回のレイオフを実施しており、昨年末の収益は目標を3500万ドル(約55億円)下回ったとされている。それでも、同社の倒産は従業員とベンダーの両方にとって衝撃だった。アウトフォックスホスピタリティは倒産の直前まで発注を続けており、従業員に倒産が知らされたのはその当日のことだった。

問題は、新生フォックストロットが家主やベンダーと十分な契約を結び、今後の進路を決めることができるかどうかだ。

アウトフォックスホスピタリティは4月23日に倒産を発表した。その後、5月10日に銀行持株会社のJPモルガンチェース(JPMorgan Chase)が組織した資産売却が行われ、持株会社のファーザーポイントエンタープライズ(Further Point Enterprises)が220万ドル(約3億4500万円)でフォックストロットの資産を取得した。ドムズキッチンの資産に対する入札は行われず、事実上、売却は終了した。そして、親会社のアウトフォックスホスピタリティは5月14日に連邦破産法第7章を申し立てた。

米モダンリテールが話を聞いた消息筋によると、リンカーンパーク店の契約に関する協議に関わった人物のなかには、共同創業者のラビトラ氏、ファーザーポイントエンタープライズのマネージングパートナーのデビッド・マグルーダー氏、アウトフォックスの元店舗開発担当シニアバイスプレジデントのジェイソン・ダピサ氏、法律事務所のマクダーモット・ウィル&エメリー(McDermott Will & Emery)の事業再編グループのパートナーであるブラッドリー・ジョルダーノ氏などがいたという。

ラビトラ氏、マグルーダー氏、ダピサ氏にコメントを求めたが、記事掲載時点までに回答はなかった。ジョルダーノ氏はコメントを控えた。破産訴訟でアウトフォックスホスピタリティの代理人を務める弁護士にもコメントを求めたが、記事掲載時点までに回答はなかった。

アウトフォックスホスピタリティはイリノイ州、テキサス州、ワシントンD.C.エリアに33のフォックストロット店舗を展開し、シカゴにはドムズキッチンが2店舗あった。ザ・リアルディールによると、新しいオーナーグループは、なかでも「ゴールドコースト、フルトンマーケット、ウェストハバードストリート、ノースウェルズストリート、オールドタウン、アップタウン、ウィリスタワーの店舗」を維持しようとしているという。

同サイトによると、新しいオーナーグループは少なくともひとりのフォックストロットの元家主と再開の契約を結んだという。また、オーナーグループはテキサス州のいくつかの店舗の再開も検討しているが、ワシントンD.C.の店舗の再開は検討していないといわれている。

破産申請の前に行われた資産売却



フォックストロットで何があったかについては憶測が飛び交っていた。同社が倒産してから破産申請が具体化するまで、3週間以上かかっている。

さらに異例なこととして、フォックストロットの資産の差し押さえ売却は、厳密にいえばアウトフォックスホスピタリティが破産を申し立てる前に行われている。

法律事務所のアミニLLC(Amini LLC)のメンバーであるジェフリー・チュバク氏によると、「競売が破産後に行われていたら、売却は大幅に遅れていただろう」という。破産法には資産売却に関する多くの規定があるためで、清算売却の通知や「売却が、価値を最大化するという取締役の受託者義務に合致していることを証明する責任」が必要になると同氏は述べた。

また、管財人は裁判所の許可がない限り、売却が保留されているあいだは事業の運営を禁止される。フォックストロットの資産売却がアウトフォックスホスピタリティの破産申し立て前に行われたという事実からは、将来の新生フォックストロットのローンチを早めようとする意思がうかがわれる。

ウェブマガジンのスレイト(Slate)も売却の法的問題に関する記事で言及しているように、「JPモルガンがフォックストロットを公正市場価格よりも安く売却した場合、JPモルガンは、さらに資金を回収するためにフォックストロットを訴える権利を失う可能性が高い。しかし一般的にいえば、JPモルガンのような担保債権者は、あとに並んでいる無担保債権者の誰にも、何の義務も負わない」。

しかし、それでもフォックストロットを復活させようとする者は世論と戦わなければならない。たとえばアウトフォックスホスピタリティは、同社がWARN法に違反したとして集団訴訟を起こされた。

チュバク氏は、このような訴訟は「清算売却を組織的に進めれば起きないものだ」と語った。

[原文:What to know about Foxtrot’s potential comeback]

Anna Hensel(翻訳:ジェスコーポレーション 編集:)