©2024 Universal Pictures

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(カナダ・トロントよりレポート)『ゲット・アウト』(2017)や『NOPE/ノープ』(2022)などのジョーダン・ピールをプロデューサーに迎え、『スラムドッグ$ミリオネア』(2008)などで知られる俳優デヴ・パテルが監督・脚本・主演を務めたアクションスリラー『モンキー・マン(原題:Monkey Man)』が、北米で2024年4月5日より劇場公開を迎えた。

本作は、ヒンドゥー教の神として知られるハヌマーンから着想を得た「復讐に燃える男の物語」。ハヌマーンは、強靭な肉体を持ち、ヒンドゥー教の信者の“目指すべき模範”になっている神猿だ。幼い頃、マンゴーと間違えて太陽を飲み込もうとしたことから罰せられた過去を持つ。そんなハヌマーンはインドを越え、多くの地域で崇められており、現代では漫画などで“ヒーロー”として描かれていることも。の人気作『ブラックパンサー』では、エムバク(ウィンストン・デューク)率いるジャバリ族がハヌマーンを崇拝している。

そんなハヌマーンの壮大な物語を反映させ、孤独な青年が復讐心に燃えながら成長していく姿を映し出した『モンキー・マン』は、『ジョン・ウィック』シリーズの製作陣を迎え、過激なアクションシーンが満載のダークな作品となっている。

アンダーグラウンドの格闘技場でゴリラのマスクを被り、対戦相手から殴られることで、小銭を稼いでいた名もなき青年“キッド”(デヴ・パテル)。幼い頃、汚職警官のラナに母を殺害された彼は、復讐心とトラウマを抱えてながら生きていた

キッドはある日、ラナが通う高級クラブでウェイターとしての仕事を得て、潜入することに成功。懸命に働く一方、キッドは銃を手に入れ、野良犬を手なづけて銃を運ばせ、絶好のチャンスを得る。しかし、いざラナに銃を突きつけると、その手は震えてしまう。隙をつかれ、掴み合いとなる中、警察も押し寄せ、ラナを殺すチャンスを逃してしまったキッド。復讐計画を実行するために、更なる試練が必要だと思い知らされる。

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ヒンドゥー教の背景への知識がないと、政治的背景の些細なことまで理解するのは難しいが、物語は権力者による搾取や暴力などに焦点を当てており、深いストーリーを十分に楽しめるようになっている。本作の舞台は架空の都市ヤタナだが、劇中ではテレビのニュース報道として本物のデモ映像も流れる。現代のインドをフィクションとして描くことで政治的メッセージも含んでいるのも興味深いポイントだ。

また本作は、1人の男が復讐心を持つ物語とあって、『ジョン・ウィック』シリーズと比較する声も多く見受けられる。しかし、キッドはプロの殺し屋ではないため、華麗に相手の攻撃を交わすことなんてできず、痛々しい血みどろの戦いが続いていく。アクションシーンを通してキッドの成長が見えるため、前半と後半では全く違うアクションを楽しめるのだ。撮影監督のSharone Meir (シャローン・メア)は、流れるような動きで、過激で残酷なアクションシーンを撮影している。目が回る手前のギリギリを攻めたような臨場感あふれるシーンも多く、一体どのようにしてこのアングルを実現したのか、不思議に思うほどだ。

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過激でスリリングなアクション作品として、すでに北米では多くの観客を魅了している本作だが、デヴにとって撮影は一筋縄ではいかなかった。英のインタビューで、彼は「うまくいかない可能性のあることは、全てうまくいかなかった」と語っている。格闘訓練の最中に足の指を何本か骨折し、さらに最初のアクションシーンでは手を骨折。そして新型コロナウイルス感染拡大のため、撮影をインドからインドネシアに移さなければならなかった。

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そんな多くの困難を乗り越えて完成した『モンキー・マン』は、間違いなくデヴにとって目覚ましい監督デビュー作となった。デヴは長年、次期の候補とウワサされているが、本作公開後、アクション俳優としての活躍を期待する声がより多く上がっている。『モンキー・マン』は、4月7日時点でRotten Tomatoesで87%と高評価を記録。日本では公開未定。

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