TOKYO BASE公式サイトより

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初任給40万円への引き上げと、これに80時間分の固定残業代が含まれていることが波紋を広げたTOKYO BASE(東京都港区)の谷正人CEOが、その意図を説明したことが報じられた。残業45時間を超えた社員には「始末書」の提出を求めるとも言及され、これにインターネット上で「本人ではなく上長が書くべきではないか」などと再び波紋が広がった。

TOKYO BASEの広報によると、実際には「始末書」ではなく「業務改善報告書」であり、上長との話し合いのもと作成されるという。専門家は一定の評価をしつつも懸念点も指摘した。

残業削減のための取り組みを各管理者の責任のもと行っています」

2024年3月12日のTOKYO BASEの発表によると、学歴、年次に関わらず、24年3月入社以降の新入社員の初任給を一律40万円に引き上げる。全社員の月額支給額が40万円以上となるよう、ベースアップも行うという。

一方で、学生向け就職情報サイト「リクナビ2025」に掲載されている求人には、40万円のうち17万2000円は80時間分の固定残業代であることが記載されている。「過労死ライン」と言われる固定残業代の時間数にインターネット上で反響を呼び、13日にJ-CASTニュースの取材に応じた旬報法律事務所の深井剛志弁護士は「公序良俗に反して無効であると判断されるおそれが高い」と指摘していた。

その後、TOKYO BASE が26日にメディア向けに開いた意見交換会で、この問題も話題になったようだ。意見交換会の内容を報じたファッション業界専門誌「WWDJAPAN」によると、谷CEOはこの固定残業代について、TOKYO BASEが基準にしている企業に「倣っただけで深い理由はない」などと説明したという。実際の平均残業時間は10〜20時間であり、「45時間を超えた社員には始末書で改善策を提出させることを徹底している」とも話したという。固定残業代には無駄な残業を抑える意図もあったと説明した。

この始末書の提出について、Xユーザーからは「書くのは上司だと思うのだが・・」「社員が始末書出しても意味がないし、それは上が解決しないといけない事じゃないの?」などと疑問の声が上がった。

TOKYO BASEの広報担当者は28日、J-CASTニュースの取材に対し、「正しくは始末書ではなく、『業務改善報告書』となり、残業時間超過した本人と上長が話し合い、上長が改善報告書を作成して再発防止に努めております」と説明。

残業時間が超過した際に、上長の責任を問い業務改善する体制の有無については、本人と上長が話し合いの上、「上長が改善案を起案、承認ののち改善プランに沿って残業削減のための取り組みを各管理者の責任のもと行っています」と回答した。改善案を起案するのは「上長」だ。

実際には「始末書」ではないというが、28日にJ-CASTニュースの取材に応じた元労働基準監督官でアヴァンテ社会保険労務士事務所代表の小菅将樹氏は「名称というよりは、実態としての『業務改善報告書』の趣旨、性格が重要だと思います」と指摘する。

残業超過までの経緯を「可視化」が必要

小菅氏は「本人と上長の話し合いをして『業務改善報告書』を作成することは特段問題ございません」という。一方で、報道された谷CEOのコメントやTOKYO BASEの回答では「業務改善報告書」を作成するまでの実際のやり取りまでは明かされていないため、「会社の目的に沿う、働き方を良くするための取組みという役割とマッチしているか、これだけで判断することは難しいです」という。

また、「両者の話し合いを基本として改善への方向性を決める、という考え方はいいと思います」と評価。しかし、改善案や改善プランを上司が作成、起案することについては懸念が残るという。

「例えば、上長が中間管理職のような立場にいる場合、部下との話し合いを基本としてプランを作成するというスタンスでありつつ、実態としては経営層のオーダーに沿うプランを作成し、これに合うような内容になるように部下を指導している、という可能性が考えられます。求めるゴールが現実的であり、かつ、業務遂行を行う上で適正な範囲、手段、方法であれば、必要な指導といえるかもしれません。ただ、考えられる問題としては、これが範疇を超えており、名目上の目的と実態との間に齟齬が生じ、起きている事実が表面化するのに時間がかかるという懸念はあります」

それでは、理想的な残業時間超過の改善の仕方としてはどのような方法があるのか。小菅氏は、何が起きた結果、残業超過となったのか「可視化」することが必要だと説く。具体的には、クラウドによるシステム化などデジタルツールを使って可視化する、仕事に介在するいろいろな人に話を聞き、どういうやり取りの中で残業が発生したのかを見ていくといった方法が考えられるとした上で、「その(可視化の)切り口をいくつか持っておくことだと思います」という。「最終的には、何が起きてそう(残業超過に)なったのかを時系列で可視化できるような仕組み」が必要と指摘した。残業超過の原因の「データが見えるような形で検証・分析する」ことが理想といい、「それを基に、結局どうすれば改善できるのかというプランに繋げられるのかなと思います」話した。