『ブギウギ』写真提供=NHK

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 NHK連続テレビ小説『ブギウギ』が、3月29日放送の第126話で最終回を迎えた。“ブギの女王”と呼ばれる笠置シヅ子をモデルに、大阪の銭湯の看板娘・花田鈴子=福来スズ子(趣里)が戦後のスターに上り詰める姿を描く物語。そのフィナーレを飾る「さよならコンサート」は、『ブギウギ』初の生演奏×生歌という贅沢なステージとなった。

参考:『ブギウギ』趣里×草磲剛、“1回のみ”の本番の裏側 脚本・足立紳による集大成のセリフも

 制作統括の福岡利武は「やはりここまで積み上げてきたものの集大成ということで、ぜひ生演奏での歌にチャレンジしたいと思いました」と熱を込める。

「音響デザインの伊東(俊平)が、昨年の秋くらいから『生歌・生演奏でやりたい、必ず感動的なものになりますよ』と。そのためには録音スタッフも必要ですし、今回は演奏も同時に録っているので技術的にもかなり大変なんですが、彼の熱い思いを受けて、そのほうが気持ちのこもったスズ子の歌になると思いましたので挑戦することにしました」

 劇中に登場する指揮者は、羽鳥善一(草磲剛)のモデルである服部良一の孫であり、本作の音楽担当・服部輶之。福岡は「最後のステージには、輶之さんにも出ていただきたいと思っていました。生演奏のため、本気で指揮をしなければいけないので緊張感がありましたが、輶之さんも非常に喜んでくださいました」と語り、「(映像の編集で)輶之さんと草磲さんをぶつけることで、時空を超えていろんなことを感じられる、とても面白い編集になっていると思います」と自信を見せる。

 さらには「ピアノソロから始まった『東京ブギウギ』では、歌の途中であえてこれまでのドラマの回想を入れないことにしました。走馬灯のように回想を入れるバージョンも編集でつくってみましたが、やはり最後はしっかりとスズ子を見届けたいよね、と。ストレートに歌を聴きながら、視聴者の方にも『ここまで頑張ってきたんだ』という思いを感じてもらえたら」と演出意図を明かす。

 趣里はこの日、朝から歌のレッスンを行いステージへ。「趣里さんにも笑顔はありましたが、やはりかなり緊張されていたと思います。撮影は一発OKだったのですが、趣里さんが『もう1回』ということで、2回歌唱されました。相当強い思いで歌われたことが伝わってきましたし、撮影後にはひとつ肩の荷が降りた、といった印象でした」

 客席では、橘アオイ役の翼和希をはじめ、懐かしい顔ぶれが思い思いにスズ子のラストコンサートを見守った。福岡は「スズ子への思いと、今まで頑張ってきた趣里さんへの思いが入り混じって、みなさん感極まっていらっしゃいました。そこにはお芝居を超えるものがあったと思いますし、みなさん素敵な表情でした」と振り返り、最後にステージにキスを捧げる演出については「舞台演出担当の荻田浩一さんのアイデアです」とした。

 草磲剛のクランクアップはステージでピアノを弾く場面だったといい、「すごくノッていらっしゃいましたし、スズ子を見つめる優しい、愛のある眼差しが良かったと思います。草磲さんは『本当に楽しい役で、一生懸命やりました』という言葉のほかに、『趣里さんとお芝居できてよかった』と何度もおっしゃっていて。趣里さんをしっかりと称えていただけて、スズ子への思いはやっぱり特別だったんだなと改めて感じました」と感慨に浸る。

 一方、趣里は、愛子と2人のシーンでクランクアップ。

「大変な思いで撮影に臨まれて、全身全霊フルパワーでスズ子を演じてくださいました。涙涙のクランクアップセレモニーでは、音楽指導の先生たちが生演奏をしてくださったり、キャストの方が来てくださったり。スタジオの空気が本当に温かくて、それはみんなに愛されたヒロインであることの証明だと思いますし、本当に感動的でした」

 物語は、ステージではなく朝食を食べる日常の一コマで幕を閉じたが、その狙いについては「足立(紳)さんの強いこだわりで、“スズ子として歌い切って終わりではなく、日常生活はまだまだ続いていく”という見せ方にしたいと。僕も本当にその通りだなと思いましたので、『ブギウギ』ではラストカットにも『おわり』と打っていないんです」と裏話を語る。

 また福岡は、本作を通じて「歌の力の偉大さを知った」とし、「歌でこんなにも感動できるという展開も、歌だけで15分のほとんどを占めるような構成を『良かった』と受け入れてもらえたことも……僕としては意外性の連続でした。本当にたくさんの力が重なってできた、奇跡的な作品だと思っています」としみじみ。

 最後は「『スピンオフを作ってほしい』と言われたら?」との問いに、「この物語は『おわり』と打っていませんので。機会があれば、ぜひスピンオフもやりたいと思います」と意欲を見せていた。

(文=nakamura omame)