【鷹見 夜】「風俗街の病院」の新人女医が絶望…赤ん坊をコインロッカーに捨てた「24歳女性」が”再び妊娠”した「衝撃的な理由」

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産婦人科の「ハイリスク症例」

筆者が勤めていた「風俗街の病院」。

このような治安の悪いスラム街の病院の特徴として、医療従事者は身体的な病気だけでなく、社会的問題に何度も直面することになる。

家事もできず、退院してもまともに暮らしていけない、「50代独身一人暮らし」。家族に見放され、「一生入院させられないでしょうか」と相談される「孤独な老人」。「虐待が疑われる子供」に、「DVを受けて血まみれで救急受診する女」、「ホスト狂いの風俗嬢」……。

治療を受けられたとしても「助かった」とはとても言えない人たちが、毎日のように来院する。

これは筆者が産婦人科をローテートしている時の、その類の問題を抱えた女性の話だ。

産婦人科の研修で最も印象的だったのは、「ハイリスク症例」と言われるグループだった

患者は自分がそこに分類されていることを知らない。要するに病院側にとっての要注意人物である。

そこには地獄のような文言が次々と並んでいた。

「パチンコ狂いで生活保護を受けている妊婦

「父親の分からない子供を一人で既に4人育てている妊婦

「母親、父親ともに統合失調症で作業所通いの妊婦

申し訳ないけれど、産まれる子の境遇に同情してしまう環境ばかりだ。

その中でも一際目立って「驚きの経歴」の妊婦がいた。

風俗店でも遅刻や欠勤が続き…

「自分が産んだ赤ん坊をコインロッカーに捨てた」という信じがたい経験を持つ、24歳女性だ。“再び妊娠”して病院へとやってきた彼女は、執行猶予中だった。

彼女の職業は、立ちんぼ。まだ歌舞伎町近辺の路上売春が問題になる前の時代だが、あちこちの荒んだ街で、ひっそりと色を売る女は昔から存在していた。

今回、彼女は路上で、切迫早産の前駆症状にうずくまった所で通行人に救急車を呼ばれた。今まで病院には通っておらず、保険証も持っていなかった。もしたまたま他人が手を差し伸べていなかったら、また路上で出産することになりかねない。

彼女の印象は幼く無防備で、聞けば何でもあっけらかんと話してくれた。

中学卒業後、成績が振るわず高校には行けなかった。卒業とほぼ同時に、親とそりが合わず家出。最初は昼のアルバイトをしていたが、ミスが多く仕事ができず、クビになっては職を転々とした。

金銭的に困った彼女は風俗店で働き始める。しかし、そこでも当日欠勤や遅刻が目立ち、続かない。

生活費を稼ぐ手段がなくなり、流れ着いたのが路上売春だった。この街は、彼女の最後のセーフティネットだった。彼女はこう話していた。

「決まった時間に出勤するとかがないから、楽なんだよね。好きな時間に行って、その場で相手を決めればいいから、誰に怒られることもない」

先のことが考えられない

だが、店に守られることもない路上売春が安全であるはずがなかった。コンドームを勝手に外したり、そもそも着けようとしない客もいた。強く拒否することができない彼女は父親が誰かも分からない子を妊娠してしまう。

私が聞いたところによれば、結局「どうすればいいのか分からなかった」という理由で、彼女は赤ん坊の命を奪ったという。そして前科がつき執行猶予になってからも、支援の手が差し伸べられることはなく、同じことを繰り返してしまったようだ。

彼女は知的に問題がある可能性が高く、明らかに支援が必要だった。

一般的に、こうした女性が風俗や路上売春に流れついたり、判断力の欠如から罪を犯してしまったりするのは、よくあることだ。後先を考えて行動するのが苦手で、場当たり的な行動が目立つ。

彼女の場合、路上売春をして稼いだお金でネットカフェに住んでいた。合計すると普通に賃貸の家賃を払える金額を稼いでいるのだが、貯めて家を借りようという発想にならない。今日を凌げればそれでよく、明日のことは考えられないのだ。

私達は彼女にIQテストを受けさせることにした。しかし、ここで問題が起こる。

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『「風俗街の病院」を訪れた「執行猶予中の24歳妊婦」を追い詰める「毒親」の言葉と、出産後に待っていた「結末」』に続く…

「風俗街の病院」を訪れた「執行猶予中の24歳妊婦」を追い詰める「毒親」の言葉と、出産後に待っていた「結末」