不動産販売収入が落ち込むなか、碧桂園は資金ショート回避のための資産売却を迫られている。写真は広東省仏山市の本社ビル(同社ウェブサイトより)

過剰債務による経営危機に直面している中国の不動産大手の碧桂園控股(カントリー・ガーデン)が、なりふり構わぬ資産売却を迫られている。1月19日、同社が広東省広州市に保有する複数の不動産の売却情報が、広州産権交易所で公開された。

具体的には広州市増城区に立地する鳳凰城酒店(ホテル)、碧桂園中心甲級写字楼(オフィスビル)、碧桂園鳳凰城永旺商業物業(ショッピングモール)、同市番禺区に立地する碧桂園藏瓏府弁公楼(オフィスビル)、同市白雲区に立地する人和公寓楼(マンション)の合計5物件で、売却予定総額は38億1800万元(約794億円)となっている。

(訳注:産権交易所は財産権を専門に取引する公設の市場。中国各地に設置され、企業の破産処理、資産整理、非上場株の譲渡などに利用される)

オーストラリアの不動産も売却へ

「経営難に陥った不動産会社の資産売却は、債権や債務の関係が複雑なケースが多く、訴訟問題を抱える案件もある。(広州産権交易所の)開示資料によれば、碧桂園が今回売却する資産にも抵当権が設定されている。ただし、資産の所有権は(碧桂園が)単独で確保しているようだ」。ある不動産業界の関係者は、財新記者の取材に対してそうコメントした。

碧桂園は、中国国内だけでなく海外資産の売却にも動いている。1月17日には、同社のオーストラリア子会社がシドニーに所有する未利用地を2億4000万オーストラリアドル(約235億円)で売却するとの噂が業界内を駆け巡った。これに対して碧桂園は、「順調ならば2024年前半に成立する見込みだ」と商談が事実であることを認めた。

碧桂園は、かつては中国の不動産大手のなかで相対的に財務状況が健全と見られていた。ところが、2023年8月に一部の社債の利息を期日までに支払えなかったことをきっかけに、厳しい資金繰りが表面化。総資産1兆6200億元(約34兆円)、総負債1兆4400億元(約30兆円)を抱える同社の経営危機は、業界関係者に衝撃を与えた。


碧桂園は、予約販売した物件の竣工と引き渡しは順調とアピールするが、資金繰りは火の車だ。写真は同社の物件引き渡しの手続き会場(碧桂園のウェブサイトより)

その後、同社の生命線である不動産販売収入は大幅に減少。碧桂園の2022年の権益販売額(訳注:未完成物件の予約販売収入)は月間平均298億元(約6195億円)に上っていたが、2023年8月には3分の1未満の79億8000万元(約1659億円)に激減し、9月以降は70億元(約1455億円)を割り込む窮状が続いている。

資金繰りは綱渡り

ある金融業界関係者の試算によれば、碧桂園が日常的な企業経営を維持するためには最低でも月間220億元(約4574億円)以上、理想的には同250億元(約5197億円)以上の売り上げが必要だという。


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しかもこの試算は、短期債務の返済や(新規開発用の)土地取得費用の支出を止め、未完成物件の建設と予約購入者への引き渡しに専念したと仮定した場合のものだ。碧桂園の実際の収入はそれに遠く及んでおらず、資産売却でしのいでも資金繰りは綱渡りが続きそうだ。

(財新記者:王婧)
※原文の配信は1月22日

(財新 Biz&Tech)