佐奈宏紀「理想を言えば、観客全員を満足させたい」舞台『地獄楽-終の章-』インタビュー
シリーズ累計発行部数650万部を突破し、テレビアニメ化もされた話題作「地獄楽」の舞台化第2弾が2月15日(木)より上演される。本作で亜左 弔兵衛役を演じる佐奈宏紀さんにインタビュー。作品の魅力はもちろん、お芝居が楽しいと思うようになったきっかけをたっぷりお話してくれました。1月31日発売のTV LIFE「2.5D Actor’s File」ページ未掲載の写真と合わせてお楽しみください!
◆『地獄楽』は以前から好きな作品だったそうですが、本作の魅力はどんなところにあると思いますか?
ストーリーと世界観、そしてキャラクターが全員立っていて魅力的なところです。ファンタジックな世界感で展開している物語なんですが、感情を揺さぶれられるような人間ドラマになっているところも最高です。それぞれに過去の回想が挟まれていって、少ないコマでも情報がものすごく厚いんです。各キャラでそういうのがあるので、もう全員、好きになりますね(笑)。
◆演じる亜左 弔兵衛も、魅力的なキャラクターですね。
単独行動キャラで、強さとカリスマ性、邪悪さに時折見せる天然具合など、引き付けられる要素を全部持っている。彼は適応能力の高さで生き抜いてきて、それが彼独自の強さにつながっているんです。好きなシーンもたくさんあるんですけど、弟の桐馬が、“兄さんは変化していくから強い。でも変化していくからこそ浮き彫りになる、絶対変わらないもの”、というようなことを言っていて、それがすごく印象に残りました。環境や状況に応じて、変えられるものは自在に変えていく。だからこそ、これだけは変えられないっていうものが出てくる。何でも好きに変えていったとしても、意外とここは変わらないなっていうところに気づくんですよね。これは人生の教訓じゃないけど、すごく納得、共感したので僕も近い感覚があるのかもしれないです。
◆弔兵衛のビジュアルになってみた感想は?
衣装合わせの段階で、すごい!と感動しました。『地獄楽』では武器も特殊なものになるんですが、めちゃくちゃ精巧なものが届けられていて。各分野のプロの方が職人技を駆使して素晴らしいものを用意してくれるので、ワクワクしましたね。ビジュアルに関しても、弔兵衛のメイクは人格にもつながる大切なものなんです。顔の傷跡を一個一個増やしていくたびに気合が入りました。
◆舞台として、楽しみにしているところは?
舞台の尺だと、原作に描かれていることを全部やることは叶わないので、いろいろと精査して、ギュッとまとめたものになります。回想シーンも全部はできないけれど、その人の人間性や関係性が伝わるようなものにしたい。そのためにたくさん試行錯誤すると思うので、その過程は今からとても楽しみです。画眉丸役の(木津)つばさが“戦いまくるよ!”と言っていたぐらい殺陣があるみたいなので、そこも楽しみかな。殺陣が大好きなので。いつも周囲から「佐奈ちゃん、もうやめようよ」って言われるぐらいやりこんでしまいます(笑)。素手での戦いはこれまであまり経験がないので大変かもしれませんが、もう何回でも練習します!
◆2.5次元作品はファンタジックな作風も多く、生身の人間が演じる上での難しさもあると思いますが、どのように作り上げていますか?
最初は何もわからなかったんですが、『FGO』(『Fate/Grand Order THE STAGE -神聖円卓領域 キャメロット-』)で出会った演出家さん(福山桜子)から、1〜2年ぐらいかけて海外での演技論的なものからすべて教わりました。当時は「こんなに大変なんだ!?」と泣きそうになりながらやっていましたね(笑)。それこそ、『FGO』で演じた役は、1500年の孤独をさまよった男なんですよ。もう、そんなの想像力が追いつかないですよね。どうやってその孤独を理解すればいいんだ!? って。そこで、“今、謝りたい人いる? 絶対に会えないけど、謝りたい人はいる?”って言われて、いますって答えたら、“じゃあ今日から、稽古場から家まで2時間ぐらいかかるかもしれないけど、歩いて帰ろう。その人を探しながら。寄り道しながらでもいいから、ちゃんとその人を探している感覚で、歩いて帰ってみよう”って言われて。きつかったけれど、毎日やっていたら少しずつ精神的に消耗してきて。ああ、こういうことかと。そういうメソッドで感情の部分では嘘がないようにすることを学びました。それぐらいやらないと人間って作れないよねって言われて、意識が変わりましたね。
◆お芝居が面白いと感じたのは、そういった意識変革からでしょうか。
そうですね。最初の頃はお芝居をすること、一人で考えて作るっていうことに対して、それほど楽しさを見いだせていなかったんです。舞台に立つ、テレビに出る、お客さんが喜んでくれる、みんなで何かを作り上げるっていうことにはシンプルに喜びを感じていたけど。正直、お芝居に関してはよく分からないなっていうのがあった。学生時代は勉強していても答えがあるのが当たり前で、その答えを導き出すために正解を出すために取り組んでいた。だから「何、このよくわからないものは!?」と壁にぶち当たりました。周りもニュアンス的なことしか言わないし、誰も正解を教えてくれない。モヤモヤした中を手探りで進んでいる感覚だったのが、メソッドを知り、あとは自分次第ってところまで来てからはお芝居がすごく楽しくなりました。
◆大変さと面白さは表裏一体ですが、大変だからこそ目標としたいこと、目指したいことはありますか?
お客さんに喜んでもらうことです。理想を言えば、全員を満足させたい。でも、それは永遠の夢みたいなもので。原作がある作品だと、その原作の読み方、とらえ方からして、読者の数だけ答えがあると思うんです。全員が同じ感覚で原作を読んでいるわけではないので、全員にハマるものは存在しないんじゃないか。僕たちが作れる舞台は一つだから、ちょっと思っていたのと違うなっていう人も出てきてしまう。だから目指すこと自体、矛盾してはいるんですが。理想としては、全員に喜ばれるものにしたいんです。SNSなどで「原作で好きなシーンだから描いてほしかった」という投稿を見つけると、「そうだよなぁ。でも、ごめん」って思うんです。だからこそ実際に舞台では展開されないとしても、そのシーンがあったことが感じ取れるような深みのある人物に仕上げたい。その先はこちらの技量であり頑張り次第だと思うので、とにかくできるところまでやるしかないと思っています。
PROFILE
●さな・ひろき…1997年2月25日生まれ。愛知県出身。B型。
これまでに舞台「銀牙 -流れ星 銀-」シリーズの銀役や、「Paradox Live on Stage」シリーズの朱雀野アレン役など(ともに主演)を務める。
4月28日(日)より地球ゴージャス三十周年記念公演「儚き光のラプソディ」(東京・明治座ほか)に出演。
作品情報
舞台「地獄楽-終の章-」
2024年2月15日(木)〜18日(日)東京・シアター1010
2024年2月23日(金)〜25日(日)大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール
<STAFF&CAST>
原作:「地獄楽」賀来ゆうじ(集英社 ジャンプ コミックス刊)
演出:加古臨王
脚本:Spacenoid Writers’ Room(月森葵、野ノ栖千晶、会沢青)
出演:木津つばさ、白本彩奈、佐奈宏紀、田淵累生、太田夢莉、中村太郎、吉浜あずさ、郷本直也、宮崎湧、小南光司、松田岳、櫻井圭登、澤田理央・高乘蒼葉(Wキャスト)、佐々木喜英・立道梨緒奈 ほか
<STORY>
死罪人と打ち首執行人が、幕府の命により神仙郷に上陸する。彼らの目的はただ一つ。ここで生き残り、「不老不死の仙薬」を持ち帰ること。石隠れ最強の忍として恐れられた死罪人の画眉丸(木津)は、打ち首執行人の佐切(白本)と共にいくつもの死線を越えていく。
<TICKET>
▼チケットぴあ
URL:https://w.pia.jp/t/jigokuraku-stage/
▼イープラス
URL:https://eplus.jp/jigokuraku-stage/
▼ローソンチケット
URL:https://l-tike.com/jigokuraku-stage/
公式サイト:https://jigokuraku-stage.jp/
公式X(旧Twitter):@jigokuraku_st
©賀来ゆうじ/集英社・エイベックスピクチャーズ
●photo/干川 修 text/根岸聖子 hair&make/田中裕子