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多くのトレーダーは相場を予測したり、値動きの仮説を立てたりした経験があるでしょう。たとえプロトレーダーであっても相場を百発百中当てることは不可能です。そのようななか、相場の予測を外してしまうことがあっても、プロトレーダーが利益をあげ続けられるのはなぜなのでしょうか? みていきます。

相場の予測によって安心感を得るトレーダーたち

スキャルピングなど反射神経と決断力が求められるトレード手法は例外ですが、デイトレードなどポジションを比較的長い時間持ち続ける手法の場合、相場の流れにシナリオを立ててトレードすることが一般的でしょう。

多くのトレーダーは主にテクニカル分析を中心とした根拠をもとに相場を予測しています。感覚的にトレードすることもできますが、多くのトレーダーが根拠をもとにトレードをする理由は「自分のトレードに正当性を持たせるため」です。

人間は本能的に自分の行動に正当性を待たせようとします。トレーダーは自分が新規のポジションを持つときに安心感と正当性を求めます。相場を予測することは、新規のポジションを持つための根拠となり、トレーダー達に自分の行動が正しいことを裏付ける正当性を与えます。

正しい予測をもとにトレードすることは問題ありませんが、自分の行動に正当性を求めることのリスクを理解していないと、大きな損切りに巻き込まれてしまう可能性があります。次に相場を予測することで伴うリスクを解説していきます。

相場を予測することによる「リスク」

トレーダーにトレードの根拠と安心感を与える予測行動ですが、かえって予測することがトレードに悪影響をもたらす可能性があります。

予測することの負の側面を理解することで、日々のトレードの質は大きく上がります。日々の相場分析ですべての予測が的中する天才トレーダーは存在しません。誰しもが予測が外れる場面に遭遇します。予測が外れた場面では、自分を正当化させた根拠を否定できる力があるかが試されます。予測が外れた場面でプロトレーダーと同様の行動ができるかどうかが、継続的に利益を上げるトレーダーになれるかどうかの分岐点となります。

予測が外れた場面では、すぐに損切りする必要があります。しかし、理論的にはわかっていてもなかなかポジションを手仕舞えないトレーダーが多く存在します。そのようなトレーダーが一定数存在する理由は「自分のトレード根拠を否定する勇気がないから」です。

自分の立てた予測(シナリオ)の間違いを認めて、素直に損切りをすることは精神的に負担がかかります。一貫性を否定することは人間の本能に逆らうことでもあります。そのため、予測が外れた場面でも、塩漬けしたり、逆張りをして、さらに含み損を増やしてしまう初心者トレーダーが出てしまうのです。

普段何気なく相場を予測してトレードしている人は多くいると思いますが、心理的にポジションを手仕舞えなくなるリスクがあることを理解している人は少ないのです。予測することのリスクを理解するだけでもプロトレーダーに近づいているといえるでしょう。

含み損を抱え込んでしまう人の共通点

含み損を抱え込んでしまう人の多くは、「ここで損切りしたら今月はマイナス収支で終わってしまう」、「これ以上自分の資産を減らしたくない」など、トレードに自己都合の理由づけをはさむ傾向があります。

FXで継続的に利益を出すためには、トレードに感情を移入させないことが非常に大切です。感情移入したトレードは、ここぞという場面で決断力を鈍らせます。

多くのプロトレーダーは、トレードと自分の感情とは別々に考え、客観的なトレードを心がけています。普段何気なく行なっている相場の予測も、「こうなったら自分に有利な展開になる」といった自分の願望や感情が先走ってしまうと、客観性のないトレードになってしまいます。

また、人間の心理には物事に一貫性を持たせようとする心理があります。そのため、感情が入り込んだトレードは、たとえ方向感が間違っていたとしても、素直に損切りさせることを難しくします。

このように、相場を予測することにはリスクが伴うことを意識しているかどうかで日々のトレードに差が出てきます。

予測に伴うリスクを理解することでトレードが格段に上達する

今回は、トレーダーであれば誰しもが行ったことのある相場の予測に伴うリスクを解説しました。AIやシステム運用が発達したいまでは、事実だけに基づいたトレードができることもありますが、まだまだ人々の裁量によってトレードされているのが現状です。

ほとんどの場合、裁量トレードには“予測すること”がつきものです。予測することはトレーダーに根拠と安心感を与えるプラスの側面がありますが、ひとつのトレードに感情移入してしまうという負の一面もあります。これら両側面を理解してFXに臨むことが非常に大切です。

トレード経験の浅いトレーダーは、予測のいいところにしか目を向けないため、ここぞという場面で大きな損失を出してしまいます。プロトレーダーのように安定して利益を出したいと願うのであれば、日々のトレード中に、予測することで嵌ってしまう負の側面側に自分がいないかを意識してトレードするといいでしょう。

清水 一喜

株式会社ソーシャルインベストメント

執行役員