「皮膚がんとしみの見分け方」はご存知ですか?原因や治療法も解説!【医師監修】

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皮膚がんとしみの違いは何でしょうか?本記事では皮膚がんとしみの見分け方について以下の点を中心にご紹介します。

・皮膚がんとはどんな疾患なのか

・皮膚がんの種類について

・皮膚がんとしみの見分け方とは

皮膚がんとしみの見分け方について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。

監修医師:
高藤 円香(医師)

防衛医科大学校卒業 / 現在は自衛隊阪神病院勤務 / 専門は皮膚科

皮膚がんとは?

皮膚がんは皮膚の細胞が異常に増殖し、制御不能な成長をする悪性の腫瘍です。皮膚がんは、皮膚細胞が紫外線の長期的な曝露、ウイルスによる感染や、身体の損傷(火傷や傷)、放射線治療などの慢性的な刺激によってDNAが損傷を受け、その修復が不可能になった結果発生します。
早期に発見されれば治療の選択肢は多いため、専門の皮膚科医による診断が重要です。進行するとリンパ節や内臓に転移し、治療が困難になることもあるため、早期発見と適切な治療が大切です。

皮膚がんの種類

皮膚がんにはいくつか種類があります。以下、4大皮膚がんといわれているものを解説します。

悪性黒色腫

悪性黒色腫は、メラニンを生成するメラノサイト細胞のがん化により生じる皮膚がんの一種で、メラノーマとも呼ばれます。このがんは、しばしば普通のホクロと区別がつきにくい特徴を持ちます。通常のホクロは形が整っており、色も均一で小さめですが、悪性黒色腫の場合はこれらの特徴が当てはまらないことが多いです。
悪性黒色腫の初期段階は、黒色または黒褐色の点として発生し、徐々に大きくなり、斑点内に突起物が形成されることがあります。特に、左右が均等でない、色調が一様でない、境界が不規則、直径が6mm以上の場合には、悪性黒色腫である可能性が高まります。また、悪性黒色腫は急に隆起することもあり、進行が速いことが知られています。日本人の場合、悪性黒色腫は手のひら、足の裏、指の爪などに発生することが特徴的です。年齢に関わらず、若年層から高齢者まで発症する可能性があります。

有棘細胞がん

有棘細胞がんは、皮膚がんの一種で、皮膚の表皮にある有棘層という部位の細胞が悪性化したものを指します。有棘細胞がんは、しばしば「ジュクジュクした赤い盛り上がり」のような外観を持ち、特有の「臭い」を放つことがあります。
主な発症原因としては、紫外線の影響や、治らない湿疹が挙げられます。特に、顔の突出した部分(頭部、唇、鼻、など)に発生することが多いです。
前がん病変として、治らない湿疹や乾燥した皮膚の状態が見られることもあります。

基底細胞がん

基底細胞がんは、皮膚の深い層に存在する基底細胞から発生するがんの一種で、皮膚がんの中でも特に発生頻度が高いとされています。主に高齢者に多く見られ、紫外線との関連が指摘されています。外見上は、黒色または黒褐色の隆起した病変が特徴で、場合によっては正常皮膚色に近い色合いを呈することもあります。基底細胞がんが他の部位に転移することは稀ですが、発生した部位の皮膚を破壊する性質があり、放置すると骨や脳に至るまで進行する可能性があります。

乳房外パジェット病

乳房外パジェット病は、まれな皮膚がんの一種で、外陰部、肛門周囲、脇の下、へそ周りなどに発生することが多いです。初期段階では、赤色、褐色、白色などのしみや湿疹のような形状を呈し、しこりが形成されることはありません。したがって痛みやかゆみといった症状は少なく、発症部位も目立たないため発見が遅れることがあります。病状が進行すると、しみや湿疹のような病変部分にかさぶたやただれが生じ、しこりが形成されてリンパ節や内臓に転移する可能性があります。

皮膚がんの原因

皮膚がんの原因は、その種類により異なります。

悪性黒色腫は、手のひらや足の裏などに生じやすく、長期間にわたる皮膚への刺激が原因とされています。

有棘細胞がんやその前がん病変である日光角化症は、紫外線が主な発生要因とされています。さらに、やけどの跡やヒトパピローマウイルスの感染も関与すると考えられています。

基底細胞がんは、主に頭部や顔に発生し、その原因として紫外線や放射線の影響が指摘されています。

乳房外パジェット病は、アポクリン汗腺の細胞ががん化することが知られていますが、具体的な誘因はまだ明らかになっていません。

一般的に、皮膚がんの原因の可能性として考えられているのは紫外線の影響です。紫外線は細胞の遺伝子にダメージを与え、発がんを促進します。その他の要因としては、放射線、ウイルスの感染、喫煙、化学物質の影響もあると考えられています。また、遺伝的疾患、紫外線に対する過敏性を示す色素性乾皮症も、皮膚がんの発生に関与するとされています。

皮膚がんの見分け方

皮膚がんはしばしばほくろやしみに似た外見をしているため、見分けるのが難しいことがあります。以下に、皮膚がんと通常の皮膚変化を区別する方法について説明します。

皮膚がんとほくろやしみの違い

皮膚がんは、顔の「しみ」や「ほくろ」と間違えられます。特に、基底細胞がんとメラノーマは、「しみ」や「ほくろ」と混同する可能性が高いとされています。これらの皮膚がんは、しみやほくろの大きさ、色のばらつき、形状、病変の隆起の程度などにより区別されます。通常のしみでも2~3㎝に広がることがありますが、形が不規則であったり、色むらがあったり、普段と異なる形状になっていたりする場合は、注意が必要です。また、メラノーマは顔よりも手足(特に手のひらと足の裏)に多く発生します。手足に発生する皮膚がんは、日光とは無関係に発生することがあります。ボーエン病や日光角化症の場合、主な症状は赤いカサカサとした斑点で、湿疹と誤解されることが多いです。

皮膚がんを見分けるために行われる検査

皮膚がんの診断に役立つ代表的な検査方法を説明します。

ダーモスコピー検査:皮膚がんの診断において広く用いられる検査はダーモスコピー検査です。ダーモスコピー検査は特殊な拡大鏡(ダーモスコープ)を使用し、皮膚の病変部分を10倍から20倍に拡大して観察する方法です。ダーモスコピー検査により、皮膚表面から真皮の浅い部分までの詳細な観察が可能となり、基底細胞がんや悪性黒色腫といった色素性の皮膚病変の診断が可能になるとされています。

皮膚生検:もう一つの重要な検査は皮膚生検です。皮膚の疑わしい部分から一部または全体を採取し、顕微鏡で組織の構造や細胞の特徴を調べます。皮膚生検により、皮膚腫瘍の正確な診断が可能になります。生検は、病変の一部を円形のメスでくり抜くか、あるいは紡錐形に切り取る方法で行われ、場合によっては治療を目的として腫瘍全体が取り除かれることもあります。

センチネルリンパ節生検:さらに、リンパ節への転移が疑われる場合にはセンチネルリンパ節生検が行われることもあります。センチネルリンパ節生検は最初にがん細胞が転移しそうなリンパ節を特定し、体内のがんの広がりを評価する方法です。

皮膚がんの治療法

皮膚がんの治療は、皮膚がんの種類によって選択される治療法が異なる場合がありますが、多くの皮膚がんで手術が選択されます。以下では、そんな手術についてやその他の治療法について解説します。

手術

皮膚がんの治療には、主に手術が用いられます。初期の皮膚がんの手術の場合は、腫瘍とその周囲の可能性のあるがん細胞を含む皮膚を一緒に切除します。腫瘍が取り切れているかは病理検査によって確認されます。病変の切除によって生じた欠損部分は、皮膚移植や皮弁術を用いて修復され、元の外見や機能を可能な限り回復させます。転移がある場合の治療は、転移部位の腫瘍も切除することが検討されます。

その他の治療法

皮膚がんの治療には、手術だけでなく、放射線治療や薬物療法も選択肢として存在します。放射線治療や薬物療法は、遠隔転移がある場合や、腫瘍の切除が困難な場合に用いられます。

放射線療法:特に有棘細胞がんにおいて、放射線療法は期待できる治療法の一つとされています。放射線療法は手術で病変を取り除けなかった場合やリンパ節への転移がある場合に行われます。また、放射線治療のみ単独で行われる場合と、抗がん剤と組み合わせて行われる場合があります。

化学療法(薬物療法):化学療法では、抗がん剤の他に、免疫系を活性化する免疫チェックポイント阻害薬や、がん細胞の特定のタンパク質を標的とする分子標的薬が使用されることがあります。これらの薬は、進行した皮膚がんや、外科手術や放射線治療に反応しない場合に適用されることが多いです。遺伝子検査の進展により、患者さんに合った治療法を選択することが可能になっています。

緩和治療:皮膚がんが進行し、回復が見込めない場合は、緩和治療に移行します。緩和治療の目的は、患者さんの症状を緩和し、生活の質を向上させることにあります。緩和治療は、痛みや不快感の管理、心理的なサポートなどが主です。

皮膚がんについてよくある質問

ここまで皮膚がんを紹介しました。ここでは皮膚がんについてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

皮膚がんはどこに出やすいですか?

根来 和輝 医師

皮膚がんは、その種類により、発生しやすい部位が異なります。
悪性黒色腫(メラノーマ)は、日本人の場合、手足の末端部分に多く発生します。特に足の裏が多いですが、体のどこにでも発生する可能性があります。
有棘細胞がんは、顔や手足に発生することが多く、過去のやけどや傷の痕、放射線による治療を受けた箇所に現れることもあります。さらに、女性の外陰部に発生するものもあり、その場合はヒトパピローマウイルス(HPV)が関与しているとされています。
乳房外パジェット病は、アポクリン腺が多く存在する外陰部や肛門周囲、脇の下などに発生します。
基底細胞がんは、頭や顔などに出現することが多いです。その他、体幹や腕、足にも発生することがあります。

皮膚がんのチェック方法を教えてください。

根来 和輝 医師

皮膚がんのセルフチェック方法について説明します。

一般的なチェックポイント
・わきの下や太ももの付け根などリンパ節の部位にしこりがないか手で触って確認します。
・メラノーマが発生しやすい部位(手のひら、足裏、指間など)をチェックします。
・首や頭の後ろなど日光にさらされやすい部位も確認します。
・背中やお尻など自分では見えにくい部位は鏡を使ってチェックします。
・昔のやけどや傷跡の変化もチェックします。
・顔のしみも注意深く観察し、変化がないか確認します。

できものがあった場合のチェックポイント
・できものが大きくなる場合
・硬質のできもの
・直径6mm以上のできもの
・治りにくい湿疹状のもの
・色が黒く変化しているしみ
・出血や分泌物があるもの
・平らだったものが盛り上がってきた場合
・かさぶたができたり取れたりするもの

編集部まとめ

ここまで皮膚がんとしみの見分け方についてお伝えしてきました。皮膚がんとしみについての要点をまとめると以下の通りです。

⚫︎まとめ

・皮膚がんとは、皮膚に発生する悪性の腫瘍を指し、早期発見と適切な治療が、皮膚がんの予後を大きく左右する

・皮膚がんにはメラノーマ(悪性黒色腫)、有棘細胞がん、基底細胞がん、乳房外パジェット病など、いくつかの種類があり、それぞれ特有の特徴と治療法がある

・皮膚がんは、症状が似ているものがいくつかあり、それらの病態と見分けるために、ダーモスコピー検査が行われる

皮膚がんと関連する病気

皮膚がんと関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

皮膚科の病気

ボーエン病

ページェット病

メルケル細胞がん

皮膚血管肉腫

汗腺がん

脂腺がん

具体的な症状や治療法については、担当の医師と相談しましょう。

皮膚がんと関連する症状

皮膚がんと関連している、似ている症状は9個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

ほくろの変化

非対称のほくろ

しみの変化

爪の変化

湿疹が2週間経過しても治らない

やけど跡や傷跡に湿疹が現れる

陰部や肛門周辺の変化

あざが治らない

リンパ浮腫を持つ部位に痣が出現する

これらの症状が持続する場合、または新たにあらわれた場合、医師の診察を受けることが大切です。

参考文献

鳥取大学医学部附属病院

日本皮膚科学会雑誌第130巻第12号