ESSEonlineで2023年12月に公開された記事のなかから、ランキングTOP10入りした記事のひとつを紹介します。

1年半ほど前に、東京から八ヶ岳山麓の森に移り住んだ作家の小川糸さん(50歳)は、家事をシンプルにする部分と、じっくり手をかける部分を分けてバランスをとるのが上手。無理せず、自分らしく家事をまわす方法を教えてもらいました。

記事の初出は2023年12月。内容は取材時の状況です。

無理をせず、自分らしく家事のメリハリをつけて

コロナ禍に当時住んでいたベルリンを離れ、日本に帰国した小川糸さん。1年半ほど前、八ヶ岳山麓に建てた山小屋に、愛犬のゆりねと移り住みました。

庭仕事などで忙しくなった分、家事は極力シンプルに行うようになりました。でもじつは東京で暮らしていた頃から、小川さんは家事のメリハリをつけるのが得意。すべてをがんばるのではなく、ほどよく力を抜くところと、じっくり取り組む部分をつくって、無理なく暮らしをまわしていたのです。

ひとりですべての家事を背負い込まず、健やかに毎日を過ごすためのヒントを聞いてみました。

“シンプル”と“じっくり”のバランスをとりながら

コロナ禍で家にいる時間が増えたとき、いかに家事を効率よくまわすかを以前より考えるようになったという小川糸さん。

「効率化すると経済的だし、心身が楽になる。さらに余った時間を保存食づくりなどにまわすこともできます。私の場合、すべての家事をがんばるのではなく、シンプルにする部分と、じっくり手をかける部分のバランスをとることを意識していますね」

食洗機を使うことで日々の食器洗いから解放されたり、嫌いなアイロンがけを潔くやめたり。そうやって家事を簡略化する一方で、味噌を仕込む時間や、パンや焼き菓子を手づくりする時間などを楽しんでいます。遠出をすることが減った分、地元を見直す機会も増えました。愛犬ゆりねとの散歩や自転車での外出を通じて、あらためて近所の魅力に気づくこともしばしばです。

「住宅街にある野菜や卵の無人販売所、これまで入ったことのなかったお蕎麦屋さんなど。日々の買い物も、駅前のスーパーに行けばたいてい事足ります。わざわざ遠くまで出かけなくても、自分が暮らしている半径数キロの円の中で意外といろいろなことができるんだなと気づきました」

お菓子づくりやお取り寄せ。家事の合間のささやかな楽しみを

ひとりで家事を背負い込むのはつらいこと。嫌なときは無理をせず、手を抜ける部分は抜くことも大事、と小川さんは話します。

「“こうすべき”にあまり縛られず、柔軟に考えればいいのではないでしょうか。私は疲れていたら外食するし、朝昼兼用の食事を近くのおいしいお弁当屋さんで買うこともよくあります。頻繁に銭湯に通うのは、気持ちいいのはもちろん、家のお風呂掃除の負担が減るという理由もあるんです」

家事をシンプルにするのと同時に、ささやかな楽しみを見いだすことも大切。小川さんにとっては、いままでつくったことのないお菓子をつくることや、ときどき地方からおいしいものをお取り寄せすることなどが、日常におけるよい気分転換になっています。ここ最近では石けんづくりを覚えて楽しむようになりました。

無理をせず、自分らしく家事のメリハリをつける。それが健やかな日々をつくり出す秘訣なのかもしれません。

シンプルにした家事その1:食洗機を使う

以前から持っていたものの、あまり使っていなかった食洗機。家で食事をする機会が増えたため、東京の家ではほぼ毎日活用するようになりました。日々使う器も、食洗機で洗えるものを選ぶように。

「前は薄手のグラスを使っていたのですが、最近はドイツで買った頑丈なものを愛用中。とはいえ、漆器以外ならほぼなんでも洗うことができます」

シンプルにした家事その2:冷凍庫をフル活用

以前と比べて買い物に行く頻度が減ったという小川さん。「散歩の途中やヨガに行った帰りなど、“ついで”に買い物をすることが増えました」。

これまでよりまとめ買いをするようになったので、買ってきたものは冷凍庫に保存。手づくりのお総菜や、今年の初めからつくり始めた自家製アイスクリームも一緒に入れています。

シンプルにした家事その3:アイロンがけをやめた

アイロンがけは以前から苦手な家事のひとつ。できるだけしたくないので、春夏はもっぱらアイロンがけがいらない麻の服を着ています。「すぐ乾くし、なにより着ていて楽なのが魅力です」。

オフシーズンの間にしまい込んで大きなしわがついた服も一度洗濯し、しわを伸ばして干せば、またきれいに気持ちよく着られます。

シンプルにした家事その4:散歩ついでに無人販売所で買い物

ここ最近、愛犬ゆりねとの散歩の途中によく立ち寄るのが、卵や野菜を育てている農家の無人販売所。「敷地内で鶏を放し飼いにしていて新鮮な卵が買えるんです。季節の野菜を買ったり、ときどき花を買うことも」。
新鮮な食材が手に入るうえ、散歩のついでなのでわざわざ買い物に行く負担も減るという、一石二鳥の習慣です。

シンプルにした家事その5:クリーニングをやめて、寝具は家で丸洗い

以前は、シーズンごとにクリーニングに出していた寝具。「この作業が意外と負担だったんです」。そこで、3年ほど前から洗濯機で洗える寝具を使うようになりました。「ドイツで洗える布団を見つけて買ったことがきっかけです。枕も洗えるものに日本で買い換えました。自分の好きなタイミングで、洗濯機で洗えるのはとても楽です」

 

『別冊天然生活 小川糸さんの春夏秋冬を味わうシンプルな暮らし』では、ほかにも小川さんの四季ごとの暮らしの工夫をたっぷり紹介しています。