Amazonに「従業員への監視が厳しすぎる」として3200万ユーロの罰金命令
「従業員の活動やパフォーマンスを監視するため、過度に侵入的なシステムを設定した」として、Amazonがフランス共和国データ保護機関(CNIL)から3200万ユーロ(約51億4300万円)の罰金を科されていたことがわかりました。
Employee monitoring: CNIL fined AMAZON FRANCE LOGISTIQUE €32 million | CNIL
Amazon Fined $35M in France for 'Overly Intrusive’ Employee Monitoring
https://uk.pcmag.com/news/150577/amazon-fined-35-million-in-france-over-overly-intrusive-employee-surveillance-in-its-warehouses
Amazonの倉庫での仕事は、同様の倉庫業務がある他社と比較しても過酷であることがたびたび指摘されています。
Amazonの倉庫労働者が重傷を負う確率は同業者の2倍、業界の負傷者の半分がAmazon従業員 - GIGAZINE
数々の報告をもとに、CNILはフランスのAmazonの倉庫での業務実態を調査。その結果、従業員の活動やパフォーマンスを監視するシステムにおける複数の一般データ保護規則(GDPR)違反を指摘しています。
指摘は大きく分けて「スキャナーを用いた従業員の監視に関する侵害」と「ビデオ監視処理に関連する侵害」の2つです。
スキャナーとは、Amazonの倉庫で働く従業員に支給されている、商品保管・梱包などの作業に用いられる端末。作業のすべてが記録されており、従業員の労働パフォーマンスをリアルタイムで監視することができます。
まず、このスキャナーで収集された、臨時雇いの人も含む全従業員に関するデータおよび生産性指標が31日間保持されることについて、CNILは「監督者が従業員の抱える問題を指摘したり、タスクの再割り当てを行うにあたり、リアルタイムのデータと週単位のデータがあれば十分なはず」と判断。それ以上のデータを保持するのはGDPR第5.1.c条「データ最小化原則」の順守不履行だと指摘しています。
また、前のアイテムをスキャンしてから1.25秒以内に次の商品をスキャンした際にエラーを通知する「Stow Machine Gun」、スキャナーを使用しない時間が10分以上続いたときにダウンタイムを示す「idle time」、スキャナーを使用しない時間が1〜10分だったとき作業中断時間を示す「latency under ten minutes」の3つの指標について、過剰な監視につながっているとして、「合法的な処理を保証する」というGDPR第6条に違反する行為だと指摘しました。
「idle time」と「latency under ten minutes」については、従業員がたとえどんなに短い時間であっても、スキャナーの使用を中断するにあたって正当化するだけの理由を求められる状態になっていると指摘しています。
スキャナーの使用については、2020年4月までの臨時の従業員に対しては、個人データを収集するものであるというプライバシーポリシーの提供がなされていなかったとして、「情報提供および透明性の義務の不履行」でGDPR第12条および第13条に反することが認定されました。
このほか、従業員も外部訪問者もビデオ監視システムについて適切な知らせを受けていなかったことについては、同じくGDPR第12条および第13条に違反。当該ビデオ監視システムのアカウントが複数ユーザーで共有され、アクセスが安全ではない状態にあり、誰がソフトウェアを触ってアクションを実行したかが特定できなくなっていたとして、「個人データのセキュリティを確保する義務の不履行」でGDPR第32条違反が認定されています。
CNILは、スキャナーシステムそのものはAmazonがビジネスを行う上で必要なものであるとして問題視していないものの、これらの結果をふまえて、フランスのAmazon倉庫業務を扱うAmazon France Logistiqueに対して、3200万ユーロの罰金を科すことを決定しました。
なお、CNILの結論にAmazonは同意せず、控訴する可能性を示唆しています。
Déclaration d'Amazon à propos de la décision de la CNIL - France | About Amazon
https://www.aboutamazon.fr/actualites/politiques-publiques/declaration-damazon-a-propos-de-la-decision-de-la-cnil