57歳・川上麻衣子さん“白髪染め”をやめて気づいたこと。「新しい自分も悪くないのかも」
女優・川上麻衣子さんの暮らしのエッセー。 一般社団法人「ねこと今日」の理事長を務め、愛猫家としても知られる川上さんが、猫のこと、50代の暮らしのこと、食のこと、出生地であり、その後も定期的に訪れるスウェーデンのことなどを写真と文章でつづります。今回は、「白髪染め、いつまでするか問題」について。2024年の始まりに決意したこと、挑戦してみての気づきとは?
フィーカ:fikaはスウェーデン語でコーヒーブレイクのこと
還暦まであと2年。人生の後半戦に向けて準備すること
2024年の幕開けは不安なニュースが連続して起こり、何事もなく平穏に暮らすことがいかに恵まれたことであるかを痛感させられ、胸を痛めながらのスタートとなりました。今年は少し浮き足立てずに腹を据えて自分と向き合い過ごしたいと思う元旦でした。
昨年、実家じまいを“とりあえず”は終えた川上家ですが、ここからが本当の意味での「あと片づけ」の始まりとなるわけです。私にとっても両親にとっても、まだまだ体力精神力共に必要であることは間違いありません。人生の後半戦は、始まったばかり。還暦まであと2年(2月で58歳)となった私としては、その準備に余念なくことを進めていきたいと思っています。
その1つとして、中途半端に今私のなかで揺れ動いている問題は「髪の色」。同年代の方ならみなさんきっと、なんらかの変化を感じているのではないでしょうか。
最近「白髪染め」の頻度がどんどん増えてきた
私の場合、最初に「白髪」なるものを発見したのは30代後半だったかもしれません。それでも、それは大した問題ではなく、ある意味「発見してびっくり!!」という程度のものでした。
その後「白髪染め」たるものに手を出したのは、ずっとのちの40代後半になってからだと思います。「白髪染め」には抵抗を感じていたのか、最初は「ヘアマニキュア」と銘打ったものを購入したのが始まりと記憶しています。
もともと顔が丸顔で、ぼんやりしているのが理由なのか、ほとんどおしゃれで髪を染めることはしてきませんでした。20代の頃、少し明るめの茶色に挑戦したときの不似合いな姿を、教訓として黒髪でとおしています。
ときを経て、ヘアマニキュアから、白髪染めに手を出すことに抵抗をなくし、最近では髪の根元だけを染めてくれる便利なヘアカラー専門の美容室を見つけたことで、髪を染めることがほぼ習慣化してきたところです。気づけば、それはこの2年くらいで生まれた習慣のようです。
スケジュール帳に染めた日をチェックし鏡を見て、そろそろかな、と思う周期は間違いなく短くなり始めています。
80代母の白髪の楽しみ方
余談ではありますが今年85歳になる私の母は、今もしっかりと黒髪でおしゃれ、周りから驚かれる若さをキープしています。そんな母も50代後半頃からいつ白髪にしようかタイミングが難しいと嘆いている姿を娘はよく覚えています。
そんな母は80を過ぎての裏技として白髪と黒く染めた髪を上手くセパレーツさせて不思議なニュアンスを楽しんでいます。首から下の裾だけは綺麗な白を残して、トップのみを黒
く染めるという独自のスタイルを見出したようです。
そんな技をまだ見つけられない娘は、ちょっとチャレンジをしてみようと、心を決めました。
なによりも、周期が短くなった「染める」という作業が煩わしくなったことに加えて、果たして今現在の自分はどういった状態なのかが、わからないことがもどかしくて仕方なくなったのです。
白髪の「老け役」とリアルは全然違う
加えて、私の職業は俳優です。最近では孫を持つ役も圧倒的に増えてきました。昔と違い、今の世の中では若いおばあちゃんが主流ではありますが、ドラマの世界では老いを感じさせる役柄も必須です。
もちろん若い頃から老け役を演じることもありましたが、その際に髪につける白いドウランはやはりどこか不自然に見えます。せっかくの自前の白髪を使わないのは、宝の持ち腐れ。
現在「白髪染め」休止に挑戦中
ここはひとつ、確かめてみよう! というわけでしばらく染めることをやめてみることにし
ました。お正月を挟み3か月ほど経ってみると、なるほど自分が想像していたよりも、なかなかに白い輩は勢力を伸ばして来ています。
最近は「グレーヘア」というネーミングで中途半端な時期を乗り越える手法もあるようですが、たしかにこの時期をいかに清潔感を保ちながら乗り越えるかが重要です。そして初めて見る「わが老い」の現実をどう受け入れ、折り合いをつけていくかも肝心です。
新しい変化と思えば楽しくもなってきた
まぁ、何事もやがて訪れるものであるならば早めに取り込んでしまった方が、精神的に楽だと考えるのが私流。
実際に毎回のシャンプー後に変化している髪の色を見ていると、おもしろいことに、「生きているんだなぁ」と実感します。最初は多少なりともショックを受けましたが、染めるのをやめた時期がはっきりわかるように黒色と白色が別れて、白い部分が徐々に伸びてくる様は、なんだか自分の成長を見るようでもあり、最近は少し楽しくなり始めています。
どこまでも前向きな私ですが、染めてしまうのは逆にいつでもできるので、しばらくは変化を楽しんでみるつもりです。「自分が納得いく新しい自分に出会えることを目指して」。
2024年は少し揺れながら、前進しようと考えています。