なぜ「真っ直ぐ」じゃない? 斜めの横断歩道が愛知県に存在! あえて斜めにしている理由とは
横断歩道を「斜め」にするだけでなぜ事故防止効果があるのか
愛知県内では交通事故抑止のため、道路に対して斜めに引かれた「鋭角横断歩道」の整備をおこなっています。
では、なぜこの鋭角横断歩道が事故抑止に役立つのでしょうか。
交通事故はニュースで報道されない日がないほど、日々全国各地で発生しています。
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警察庁が公表している「令和4年における交通事故の発生状況について」という統計資料によると、2022年中の交通事故による死者数は2610人にも上ります。
その中でも横断歩道を横断していた歩行者の死者数は236人であり、『歩行者優先』と呼ばれる横断歩道上であっても事故が絶えない状況がうかがえます。
そのような中、愛知県では交通事故を減らす取組みとして、道路に対して斜めに設置する「鋭角横断歩道」の整備を進めています。
一般的な横断歩道が道路に対して垂直であるのに対し、鋭角横断歩道は少し斜め(傾斜角度約12度)に引かれているのが特徴です。では、なぜ鋭角横断歩道が事故抑止に役立つのでしょうか。
この鋭角横断歩道に関して、整備をおこなっている愛知県警察本部交通部交通規制課の担当者に話をうかがいました。
まず鋭角横断歩道の効果について、担当者は次のように説明しています。
「鋭角横断歩道を設置するにあたり、県警の交通死亡事故抑止アドバイザーでもあった交通工学の専門家(豊田工業高等専門学校環境都市工学科名誉教授・荻野弘氏)と調査研究を実施しました。
その結果、横断歩道が右折車の進行方向に対して鋭角に設置されている場合は、平行・鈍角に設置されている場合に比べて運転者が歩行者等を発見しやすくなるという効果が認められたため、見落としによる交通事故の減少が期待されるものです」
一見するとただの斜め横断歩道に見えても、実はクルマ側から歩行者や自転車を確認しやすくなるというメリットがあるのです。
また、愛知県内での鋭角横断歩道の設置数や設置基準について担当者は次のように話しています。
「平成24年度に愛知郡東郷町に最初に整備し、令和4年度末現在は県下32か所に整備しています。
設置基準については、交差点関連事故(横断中、右左折時、出合い頭等)のうち、横断中と右左折時の事故が多く発生し、整備効果が高いと判断される交差点に整備することとしております。
また鋭角横断歩道を整備するには、道路改良等が必要になるため、道路管理者による協力が得られることも設置要件となります」
鋭角横断歩道の設置、効果はどうだったのか?
さらに、鋭角横断歩道を設置したことによる事故減少効果については次のように説明しています。
「県内32か所のうち、信号機の新設時に鋭角横断歩道を整備した6か所を除き、改修をおこなった26か所において、交差点や交差点付近での歩行者・自転車に関連する人身事故の件数が減少しました。
具体的には、鋭角横断歩道の設置前1年間の件数が17件、設置後1年間の件数が7件という結果でした。
ただし、鋭角横断歩道に改修したほとんどの場所で、改修にあわせて道路標示の補修、信号灯器のLED化など他の事故抑止対策もおこなっています。
その総合的な対策の効果も交通事故が減少した要因の一つと考えております」
このように鋭角横断歩道に加え、他の道路環境を整備したことも事故抑止につながったものとみられます。
また、今後の鋭角横断歩道の設置方針に関して前出の担当者は次のように話しています。
「現時点で整備予定はありませんが、歩行者横断中の交通事故発生の実態や右左折車両の通行実態等を踏まえ、効果が期待される交差点においては整備を検討していきたいと考えております」
※※※
鋭角横断歩道を整備すると、クルマのドライバーが歩行者・自転車を発見しやすくなるという効果があります。
今後も、鋭角横断歩道のように交通工学に基づいた画期的な事故抑止対策が期待されます。