●中学のサッカー部時代から仲良し

先月21日に行われた“日本一のコント師”を決める大会『キングオブコント2023』で準優勝し、強烈なインパクトを残したお笑いコンビ・カゲヤマ(タバやん。、益田康平)にインタビュー。中学の同級生でともにサッカー部に所属していた2人に、コンビ結成の経緯から、15年一緒に働いていたバイト話、抱き続けてきた不安と『キングオブコント』準優勝後の心境、カゲヤマらしさ、今後の抱負、相方への思いなど、たっぷりと話を聞いた。

カゲヤマのタバやん。(左)と益田康平 撮影:奥西淳二

結成15年目にして『キングオブコント』決勝初進出を果たしたカゲヤマは、ファーストステージで、会社の後輩の失敗を先輩が下半身裸になって土下座して謝るというネタを披露し、469点という高得点を記録。ファイナルステージは、部下が起こした“事件”について上司が問い詰めるも、どんどん違う方向に話が広がっていくというネタで476点を獲得し、合計945点に。優勝したサルゴリラの964点には届かなかったものの見事準優勝し、強烈なネタで存在感を放った。その後、仕事のオファーが殺到し、3〜4倍に急増。年内はもう埋まっていて休みがない状態だという。また、12月20日にはルミネtheよしもとでイベント「カゲヤマ見本市 知ることからはじめよう」の開催が決定している。

○■サッカー部時代から「ずっとベンチ同士で仲良かった」

――お二人は中学の同級生とのことですが、当時から仲良かったのでしょうか。

益田:そうですね。2人ともサッカー部で、僕がディフェンダーで……。

タバやん。:僕はゴールキーパーでした。第3ゴールキーパーだったので試合には出ていませんでしたが。

益田:僕もベンチでしたが、タバやん。の第3ゴールキーパーというのはサバを読んでいて、本当は第4です(笑)

タバやん。:第3タイだと思っているので(笑)

――たくさん部員がいる中でもお二人は仲良しでしたか?

タバやん。:ずっとベンチ同士で仲良かったです。

――お笑い好きということで仲良くなったのでしょうか。

タバやん。:いえ、僕は子供の頃からずっとお笑い好きでしたが、益田は僕が誘うまでお笑いに関してあまり詳しくない状態でした。

――タバやん。さんがお笑い好きになったきっかけは?

タバやん。:もともとドリフ(ザ・ドリフターズ)がめっちゃ好きで、高校のときにさらにお笑いにハマって、『M-1』の敗者復活戦を見に行ったり、『爆笑オンエアバトル』の観覧審査員をやったりするぐらい好きでした。最初は漫才がめちゃめちゃ好きで、ブラマヨ(ブラックマヨネーズ)さんが優勝した年の『M-1』の敗者復活戦を見に行っていて、そのときチュートリアルさんがめっちゃ面白くて、「この人たち絶対次の年に優勝する」と思っていたら、本当に翌年優勝したんです。



○■タバやん。から誘ってお笑いの道に「200%売れるから一緒に組んでくれ」

――コンビ結成の経緯も教えてください。

タバやん。:僕は社会経験を積みたくて1年就職しましたが、辞めてフリーターをしていて、益田は就活中で。でも、仲間たちと一緒に毎週フットサルをやっていて、一番ツボやおもしろが合うなというのが益田で、1人でNSCに入るのは違うなと思ったので益田を誘いました。「僕が1人でお笑いやっても100%売れるけど、益田とやったら200%売れるから一緒に組んでくれ」と言って組んでもらったんですけど、15年かかってしまって。まだ売れたかわかりませんが、一応結果は出したので、あの約束はこれで守ったことになるかなと。

――益田さんと一緒のほうが面白くなれると思ったのですね。

タバやん。:そうですね。益田は学生の頃から人にめちゃくちゃ好かれるタイプで、人に好かれるのはいいなと。面白くてノリも一緒なので楽しくて。ただ、大人にはすごく怒られるんです(笑)。見た目でコイツはダメだと思われるみたいで。

益田:バイト先の親方とかに。一生懸命働いても怒られることがありました(笑)

タバやん。:エアコン清掃などの現場のアルバイトだったので、体育会系なんです。

●昨年12月まで15年間一緒にバイト

――バイトの話になりましたが、お二人は同じバイトをされていたんですか?

タバやん。:15年一緒にバイトしていました。エアコンとかダクトの中に入って清掃するバイトで、去年の12月までやっていました。

益田:現場によって大変さが違うんですけど、『M-1』の敗者復活戦の1週間ぐらい前に2人で入った現場がめっちゃしんどくて。朝方までかかって、終わり際に「もう辞めようか」って。敗者復活戦で爪痕を残せばバイトは辞められると思って。バイト終わって2人でラーメンを食べながら話しました。



――結果そこでお笑い一本でやっていくという覚悟が決まったのでしょうか。

タバやん。:そのときは覚悟というか、バイトしたくないというのが一番デカかったです。これ以上現場に入りたくないなって(笑)

益田:とりあえず敗者復活頑張って、もしダメだったらまたバイトはしなきゃいけないけど、このバイトはもうやめようと。

――そんなにキツいのに15年間もそのバイトを続けた理由は?

タバやん。:効率がめちゃくちゃいいんです。終電から始発まで働いて1万円手取りでもらえて帰れるというのは芸人からしたらありがたくて。

益田:同期や先輩、後輩の芸人も何人か一緒にやっていて、売れて辞めていったり。

タバやん。:空気階段も2人ともやっていたし、オズワルドの畠中(悠)や鬼越トマホークもやっていました。

○■抱き続けてきた不安 KOC準優勝も「いまだに不安で仕方ない」

――先ほど、タバやん。さんが「15年かかって約束を守れた」とおっしゃっていましたが、解散危機などはなかったですか?

益田:解散の話が出たことはないですが、個人的にはいつまでやるんだろうというのは常にありました。2人でそれについて話し合ったことはないですが、大丈夫かなというのは常にお互いあったと思います。

タバやん。:ありましたね。触れずにはいましたが。

益田:いつまでやるのかなとか思いながら常々いろんな壁にぶち当たって。めっちゃ面白い人を見たり、全然結果が出なかったりして、そろそろかなと思うんですけど、節目でテレビに出られたり、賞レースで準決勝に初めて行けたり、ちょっとイベントごとがあったので、モチベーションを保てました。



――『キングオブコント』準優勝でやっと大丈夫だなと思えましたか?

益田:いや、まだです!

タバやん。:「大丈夫だな」なんて1回も思ったことはないです。いまだに不安で仕方ないです。

――仕事のオファーが殺到し、年内はもう休みがないそうですが、その状況がいつまで続くのだろうという不安があるのでしょうか。

タバやん。:それもありますね。周りの芸人からは「これでもう大丈夫だな」「安心だな」と言ってもらいますが、「そうなのか?」とずっと謎の状態で。とりあえずいただく仕事は全力でやって、それがつながっていくといいなと思っています。

益田:キングになっていたらしばらくは大丈夫だったのかなと。賞金もありますし。でもキングもどうなるかわからない世界なので。

●軸はコントも『M-1』も全力で挑戦

――ネタはずっとコントをメインにやられてきたのでしょうか。

タバやん。:はい。ずっとコントをメインに。



――『M-1グランプリ』にもずっと出場され、昨年初めて準決勝に進出され、漫才にも力を入れられている印象がありますが、あくまでも軸はコントなんですね。

タバやん。:『M-1』は去年を入れてあと3回しか出られないとなったときに2人で話し合い、あと3回だから漫才も力を入れようということになって以前より漫才の割合を増やしました。益田はコントが好きでコントがやりたいという人間でしたが、僕は漫才もチャンスがあると思っていたので、益田に「漫才やろうよ」とずっと話していて。割合を増やして作り始めたら漫才もよくなっていったという感じです。

益田:去年のネタは自分たちにすごくフィットしていて、ようやくフィットした漫才ができたかもと思いました。

――益田さんも漫才の楽しさを感じつつありますか?

益田:そうですね。コントは小道具も大変ですが、漫才はスーツだけという素手の状態でどう笑かすかというのは楽しいです。

タバやん。:一時は僕が「漫才」って言うと嫌な顔をするぐらいだったので、よかったです。

――『M-1』での目標もお願いします。

タバやん。:結果を出せたらめちゃくちゃいいなと。『M-1』も全力でいきたいと思います!

益田:決勝のファイナルステージに行きたいです!

――漫才に力を入れるようになってコントにもプラスになっていると感じることはありますか?

タバやん。:漫才は周りの空気を読んで間をとったりするので、コントでもお客さんの雰囲気を見てやれるようになったというのはあるかもしれません。

益田:コントはお客さんのことをあまり見ませんが、漫才は見たほうがいいらしくてそうするようにしているんですが、漫才は素の自分でやるので度胸はさらについたと思います。

タバやん。:僕はいまだにお客さんを見るのが恥ずかしくて。でも場数を踏んでいったら慣れていくのかなと思います。



○■キモさを出すつもりはゼロ「僕らが面白いと思ったのがたまたま…」

――今年の『キングオブコント』で流れたカゲヤマさんの紹介VTRの中で、「パワーとキモさ」が持ち味だと語っていましたが、その持ち味は昔からずっと変わっていないのでしょうか。

タバやん。:自分たちではそのつもりじゃないんですよ! キモいと言われるようになったからそう言うようになっただけで、僕らがシンプルに面白いと思ったことがキモかったという(笑)。やりたいことはずっと変わっていないと思います。

――決勝でお尻を出した印象が強いですが、ほかにもお尻を出すネタはありますか?

益田:コントでお尻を出したのはこのネタが初めてです。

タバやん。:キモさを出そうなんて思ってなくて、僕らが面白いと思ったのがたまたまお尻を出して土下座することだったというだけで(笑)

――テーブルクロス引きのような芸も入っていましたが、あれは仕掛けなどなく実際にやられているんですよね?

益田:はい。最初の頃は失敗しまくっていて、練習してコツをつかんでいきました。

タバやん。:本番で失敗する可能性もあって、僕は「頼む失敗しないでくれ!」という思いでした。失敗したら一言入れてやるつもりでしたが、成功したほうが盛り上がるので。

――成功率はどれぐらいでしたか?

益田:決勝のときは100%でしたが、準々決勝あたりは60%ぐらいでした。あと、『キングオブコント』の技術さんに作ってもらった一升瓶がすごくやりやすかったというのもありました。成功してよかったです。

●今後の抱負とお互いへの思い

――今後はどうなっていきたいと思い描いていますか?

タバやん。:劇場で育てられたので劇場はもちろんいっぱい出たいですし、テレビのお仕事もやりたいなと。旅行番組もやってみたいですし、CMに出たいという思いもありますし、やれることは全部やりたいです。

益田:今は『M-1』に参加しているので、まずはそれを頑張って、『M-1』でも決勝のファイナルステージに行きたいです。そして、年末年始はイベントやテレビなどで去年とは違った過ごし方になると思うので、めっちゃ楽しみです。年末年始にどれだけできるのか。お笑い特番などでいっぱい活躍したいです。



――『キングオブコント』は来年も優勝を狙って出場されますか?

タバやん。:今後もチャレンジしていくつもりです。

益田:優勝したいですね。

○■タバやん。の“好き”アピールに益田「ちょっと重い(笑)」

――せっかくの機会なので、お互いへの思いもお聞かせください。

タバやん。:僕はずっと益田のことが好きで、「益田」「まっさん」って常に呼ぶくらい好きなんです。常に益田好きアピールをしていますが、益田はちょっと冷たくて、僕のことを好きなのか聞きたいです。

益田:好きだけど思いがちょっと重いかなと(笑)。恋愛だと追いかけたいタイプなので、ガッと来られると……というのはありますが、ありがたいです。

――タバやん。さんは、益田さんのどんなところが好きですか?

タバやん。:ノリが楽しくて本当に面白いんです。コンビ組んだらビジネスパートナーになると言いますが、僕はずっと、中学の頃から一緒に遊んでいた友達だと思っています。でも、益田は好きと全然言ってくれなくて。

益田:15年一緒にバイトもしていましたし、今も2人で飯に行きますし。

タバやん。:でも飯も僕が誘うほうが多くて、しかもけっこう断られるんです。僕は益田に誘われたら基本断らないと決めているのに。



――なんだからラブラブなカップルにインタビューしている気分に。益田さんも、タバやん。さんの好きなところを教えてください。

益田:僕のことを好きでいてくれるところじゃないですか(笑)

タバやん。:じゃあ好きでいいってことじゃん(笑)

――相方さんとしてはいかがですか?

益田:キモさが芸風というように最近なってきていますが、キモさにあざとさがない。わざとキモくしているなというのが一切なく、内面から出ていて、しかもそれをやり切れるカッコよさは相方として頼もしいなと思います。

○■「おじいちゃんになってもずっとやっていたい」

――相思相愛な感じが伝わってきましたが、ずっとこの関係でお笑いをやっていきたいと考えていますか?

タバやん。:僕はおじいちゃんになってもずっとやっていたいという思いですが、益田はちょっとずつ離れようとしている気がして、そこは心配です。

益田:ずっとやっていきたいと思っていますが、僕ら2人とも太っているので、長く続けるためにお互い健康でいようねというのはあります。

――痩せたらネタのキモさが減るという可能性は…?

益田:痩せても大丈夫です!

タバやん。:痩せても変わらずキモい!?

益田:任せてください!

■カゲヤマ

タバやん。(1985年7月15日生まれ、東京都出身)と益田康平(1985年8月19日生まれ、東京都出身)によるお笑いコンビ。中学の同級生で2人ともサッカー部に所属。2008年、タバやん。が益田を誘う形で2人そろってNSC東京校(14期)に入学し、2009年にコンビを結成。コンビ名の由来は、2人とも好きだという歌手の影山ヒロノブに由来。結成15年目にして『キングオブコント2023』で決勝に初進出し、準優勝を果たした。