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「日本ではハリウッド映画のロケ撮影ができない」という不名誉が、過去のものになるかもしれない。日本側は制度改正を進め、ハリウッドからも熱視線が注がれているのだ。

日本でのロケ撮影を試みる海外のプロダクションにとって、一元化されていない各関係窓口への煩雑な許可手続きは現実的なものではなかった。加えて、言語の問題や契約ノウハウの不足など、課題は日本側に山積していた。日本が舞台であるにもかかわらず、日本での撮影を諦めた作品例は枚挙にいとまがなく、これらはより対応力に優れ、かつ税優遇制度なども充実した海外にロケ地を奪われていた。

ヒット作に日本の地が登場すれば、世界中に国の魅力を発信できる。『ロード・オブ・ザ・リング』のロケ地で知られるニュージランドは、フィルムツーリズム(ロケ地や舞台を巡る観光旅行)などで5億8,000万ドル以上の経済効果を生み出した。

日本には、いくつもの好機を逃してきた反省がある。VIPO(映像産業振興機構)は「国内映像産業の振興・地域経済の活性化・外国人観光客の誘客を目的として、海外制作会社等が国内で実施する映像制作(ロケ撮影等)を支援する」事業者への補助金制度(通称JLOX)を用意した。日本で撮影・制作する海外の映像作品の制作費一部を支援するものだ。国際的な大型プロダクションにおける日本での経費の2分の1を上限に、最大10億円の資金を提供する。

先駆けて、アメリカ制作の映画『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』(2021)や、ドラマ「TOKYO VICE」(2022)が日本でロケ撮影を行っていた。実は『スネークアイズ』は、ロケ誘致実証調査の役割も兼ねた企画で、メディアに向けた制作記者会見では内閣府副大臣(当時)の平将明も出席し、経済効果への期待を語った。

「アジアの勝機は、韓国と日本にある」と、ハリウッドの著名な映画プロデューサーのE・ベネット・ウォルシュは話している。「最近では『TOKYO VICE』が、日本で素晴らしい経験をしました。ああいったプロダクションへの機会は、まだあるはずです。マーベル映画が韓国で撮影されたこともありましたが、それもまだほんの表面をなぞっただけです」。「日本でのチャンスは過小評価されてきました。クルーの基盤は発展していますし、言語の壁も変わってきている。東京オリンピックがあったおかげで、よりアクセスしやすくなりつつあります」。

ウォルシュはこれまで、『キル・ビル』シリーズや『君のためなら千回でも』(2008)『グレートウォール』(2016)、最近では『MEG ザ・モンスターズ2』で、中国での撮影、あるいは共同製作を行った。しかし最近では、中国での規制強化や、経済成長に伴うコスト増のため、状況が少し難しくなっているという。

直近では、『ジョン・ウィック:コンセクエンス』や『グランツーリスモ』の一部のシーンが日本で撮影され、全世界に公開された。新たな優遇制度が機能することによって、今後はハリウッド映画で日本の光景を目にする機会がさらに増えるかもしれない。

Source:Deadline(1,2),経済産業省,VIPO