●再びの次元役に喜び「期待値以上でお返ししたい」

俳優の玉山鉄二が、Amazon Original映画『次元大介』(10月13日より世界独占配信)で9年ぶりに次元大介を演じた。小栗旬主演の実写映画『ルパン三世』(14)でも同役を演じ、再現度の高さと好演が話題を呼んだが、今回も再現度高く、大人な魅力が増したダンディな次元を表現している。玉山にインタビューし、再び次元を演じた感想や本作での役作り、さらに、次元に感じる男の美学や自身の理念などについて話を聞いた。

玉山鉄二 撮影:蔦野裕

○■『ルパン三世』は「プレッシャーと戦いながらやっていた」

ルパン三世の無二の相棒で早撃ちの天才であるガンマン、次元大介を主役に据えた本作。長年連れ添った愛銃コンバット・マグナムに不調を感じた次元が、時計屋を営む“世界一のガンスミス(銃職人)”を探して数年ぶりに日本を訪れるところから物語は始まる。

本作の配信が決定した際、「お話をいただけて本当に光栄でうれしかったです」「また次元を演じられる! とはしゃぐ自分をいかに押さえつけられるかと頑張っていました」と喜びを表現していた玉山。

「1回演じた役を評価いただけて、もう一度演じることができるというのはうれしいですし、期待値以上でお返ししたいという気持ちにもなります。実現するために一生懸命動いてくれたプロデューサーに感謝しています」と語る。

9年前に『ルパン三世』で初めて次元を演じた際は、プレッシャーがあったという。

「『ルパン三世』という大作で、それぞれ役に対するプレッシャーと戦いながらやっていたので、小栗旬くんも含めてみんなで運命共同体じゃないですけど、よく旬くんの部屋でお酒を飲みながらいろんな話をしていました」

今回はプレッシャーはそこまでなく、楽しみな気持ちが強かったそうで、「オリジナルストーリーという立ち位置で、次元を主人公に物語が進んでいく中で、どういう次元が出てくるのか僕自身も楽しみにしていました」と振り返る。





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○■みんなが抱いている次元像を壊さないように役作り

本作で次元は、悲しい過去から言葉を発することができなくなってしまった少女・オト(真木ことか)と出会い、ガンスミスの千春(草笛光子)、次元、オトの疑似家族のような暮らしの中で、オトの過去が徐々に明らかに。そんな矢先、悪名高いスラム・泥魚街のボスで伝説の元殺し屋アデル(真木よう子)とその右腕・川島(永瀬正敏)がオトを連れ去り、次元は要塞と化した街からオトを救うため孤独な戦いに身を投じる。

玉山は、本作の魅力について「オトちゃんという1人の女の子を守り抜く中で新しい次元が見え隠れする部分じゃないですかね」と述べ、「子供とのシーンが多い中、ヒューマン的な部分でどういう次元が出てきて、お客さんにどういう次元を提示できるのかなと、そこを楽しみながらやっていました」と語る。

次元をどのように作り上げたのか、役作りについても聞いた。

「次元は雑味がなく無駄な部分がないので、何かを足していく作業ではなく、そぎ落としていく作業をしました。そして、銃さばきの所作や座り方の佇まいなども気をつけました」

みんなが抱いている次元像を壊さないように、現場では細かなところまで話し合いながら撮影を進めたという。

「皆さんが各々に持っている次元像があり、次元はこういう風な手さばきで相手を仕留めるとか、許せる範囲と許せない範囲があると思います。例えば、僕は次元の汗や力んだ顔、必死な顔などはあまり見たくない。イメージ的に言えば、熱はあまり感じたくない。そういった部分で、動きだけではなくセリフも含めて『次元はこうはしない』『これ以上はやめておこう』などと話し合いながら作っていきました。その繰り返しで、楽器の音を細かく合わせるような作業でした」

●自分自身と向き合い、そぎ落としたものとは?

次元との共通点や共感するポイントを尋ねると、「同じ男として、無駄なものをそぎ落とす美学みたいなものはかっこいいと思います」と回答。

「かっこよくなりたい、こうありたいというマインドになると、自分に何か足すことばかりに意識が行きがちになりますが、そうではなく引いて雑味を消すというのは大人の男としてかっこいいなと思います。僕自身、向上心や承認欲求がすごく強いわけではないので、共通している部分があるのかもしれません。自分なりの哲学や理念という力強さを持ちつつ、余計なものをそぎ落とすというのが大人の男として大事な部分ではないかなと思います」



自身の核として大事にしている理念については、「媚びないことや、自分が感じるセンスの部分を揺るがせないことであったり、自分のアンテナに関して自分自身を信用するとか、そういったことが活力の一部になっていますし、自分の理念として持っているつもりです」と説明。「悩んだり苦しんだり、いろいろ経験する中で自問自答し、少しずつそういう答えに近づいたのかなと思います」と語った。

そして、“そぎ落とす”作業について、「足すほうが楽。なぜかと言うと今までの自分を否定しないから。そぎ落とすということは、今までの自分を多少否定し、そこと向き合わないといけない」と述べ、自身は「向上心や、こうなりたいという思い」をそぎ落として今の自分に変わっていったという。

○■よりリアルを求めドキュメンタリーやニュースを視聴

また、「いろんな役を演じるにあたって視点が変わった」と告白。よりリアルを求めるようになっているそうで、「フィクションをあまり見なくなりました。いろんな人の人生を覗きたいという興味があるので、ドキュメンタリーや昔のニュースを見ています」と明かす。

「我々はフィクションを見て無意識に、こうやられたらこういうリアクションを取るというのが体に染みついてしまっている。例えば、人に刺されるシーンでよく『うわ〜!』と演じる。でも、自分が刺される芝居があって昔のニュースや刺されている現場の映像を見たときに、そういう反応ではなかったので、フィクションとして誰かが演じたものが刷り込まれているだけだなと。ドラマや映画で見てきたものと実際の違いを知って、よりリアルな方向に興味が行ったのかなと思います」

これからさらにリアルな演技に磨きがかかっていきそうだが、今後の俳優業については「こうなりたいとか、こんな役を演じたいとか、何もないです。オファーをいただけたら期待以上で返すということしか考えてないですね。毎回その繰り返しです」と語る。

そして、本作を楽しみにしているファンに向けて、「アニメのときの次元の立ち位置と違い、次元の視点で物語が進んでいく中で新たな次元が見え隠れします。そこに注目していただきたいですし、おっさんのアクションを楽しんでもらえたらうれしいです」とメッセージを送った。



■玉山鉄二

1980年4月7日生まれ、京都府出身。1999年、ドラマ『ナオミ』で俳優デビュー。2005年、『逆境ナイン』で映画初主演を果たす。2009年、映画『ハゲタカ』で日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞。2014年度後期のNHK連続テレビ小説『マッサン』では、主人公の“マッサン”こと亀山正春役を務めた。近年の主な出演作はNetflix『全裸監督』シリーズ(19、21)、映画『今はちょっと、ついてないだけ』(22)、ドラマ『CODE-願いの代償-』(2023)など。Amazon Original映画『次元大介』が10月13日より世界同時配信。現在放送中のNHK大河ドラマ『どうする家康』に大野治長役で出演。