日本の野球哲学は「米国より進んでいる」 元大洋ポンセ、長時間練習には疑問符「あれだけやると…」
ポンセ氏連載第3回、教える立場になって感じる日本野球の強み「本当に素晴らしい」
時代を超えた長寿キャラクター「マリオ」似の口ひげをたくわえた風貌で、横浜を沸かせたプロ野球選手といえばカルロス・ポンセ氏。9月に来日し「THE ANSWER」の取材に応じた。日本での5年間の選手生活は、その後の人生にも大きく役立っているという。3回連載の最終回では、日本野球の素晴らしさを力説。その上で当時の“カモと苦手”にも話は及んだ。(取材・文=THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太、取材協力=一般社団法人日本プロ野球外国人OB選手会)
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ポンセ氏は1986年に大洋へ入団し、90年までの5年間プレーした。通算119本塁打の強打を誇り、87年に打点王、88年には本塁打と打点の2冠を獲得。一方で現役最後の1年はほぼ1年間のファーム暮らしも経験した。その経験をもとに、日本野球の優れている点をこう語る。
「日本人の訓練と、その結果得られる自制心は本当に素晴らしい。アメリカよりも優れていると思います。特に教える立場に立った時に、米国よりも日本のほうが教えやすいんです」
日米で比較されることが多い「野球の質」を、ポンセ氏はこう表現する。
「米国では昔も今もホームラン、ホームラン、ホームランです。だから打率が.200で、30本塁打を打つけど三振も200個というような打者が現れる。日本は違います。様々な方法でランナーを進めたりして競う野球をやっている」。野球はチームで勝ち負けを争うスポーツだと考えた時に「そういう哲学は、日本のほうが進んでいる」と言い切る。
長時間の練習には疑問符「投手も野手も疲れてしまうよ」
その中で、日本特有の長時間に及ぶ練習を、ポンセ氏も大洋時代に経験している。「たしかに長かったね」と苦笑いを浮かべ「試合前にあれだけやると、投手も野手も疲れてしまう。でも、徐々に短くなっているのではないかな? 日本人もメジャーに行った選手が監督になったりしている。今後もどんどん変化していくと思うよ」。試合で最高のパフォーマンスを発揮できるよう、集中力を高められる方向に向かっていくのではと予想している。
日本野球の質の高さは現役時代から感じていた。苦手に感じていた投手を聞くと「マキハラ(=寛己、元巨人)だよ!!」と即答だ。
「ボールの出てくる角度もスピードも良くて、本当に打ちづらかった。フォークボールもあったしね。メジャーレベルの投手だったと思うよ」
では、逆に打ちやすいなと感じていた相手として、意外な大投手の名前を挙げる。
「オオノ(=豊、元広島)だね。手が上に上がった時に、なぜだかわからないけどボールが見やすかった気がするんだ。逆にカワグチ(=和久、当時広島)は打てなかった。同じ左だけど、ボールが伸びている気がしてね。なぜかというと分からないんだけどね」
ポンセ氏は現在、米フロリダ州に住んで少年野球の指導を行っており、そこでは日本での経験も存分に生かされている。「妻も子供も日本が、横浜が好きだしね。とにかく楽しく過ごさせてもらった」。マリオの愛称をもらった5年間の思い出は、決して色あせない。
(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 /Keita Hatori)