by Prachatai

ゲイ、バイ、トランスジェンダー、クイアなどの人々向けの出会い系アプリ「Grindr」が、従業員による労働組合の結成に対する処罰として、リモートワークを制限する職場復帰ポリシーを発表しました。ポリシーの導入によって、2023年8月末までに178人の従業員のうち、約45%の約80人がGrindrを退職したことが報じられています。

Grindr Punishes Staff for Union Drive With RTO Order, Union Complaint Says - Bloomberg

https://www.bloomberg.com/news/articles/2023-08-04/grindr-punishes-staff-for-union-drive-with-rto-order-union-complaint-says



Grindr loses nearly half its staff to strict return-to-work rule - Los Angeles Times

https://www.latimes.com/business/story/2023-09-07/grindr-loses-nearly-half-its-staff-to-strict-return-to-work-rule



Grindr loses half its workforce over return-to-office mandate

https://nypost.com/2023/09/07/grindr-loses-half-its-workforce-over-return-to-office-mandate/

Grindrでは2023年7月20日に、約100人の従業員が労働組合を結成する計画をアメリカ労働当局に提出しました。労働組合の結成理由として、テクノロジー業界での従業員解雇の流れやLGBTQの人々に対する政治的攻撃から身を守るためといった事由が挙げられています。従業員はGrindrに対し、既存の福利厚生を維持しつつ、新たな福利厚生を提供することなどを要望したとのこと。

一方でGrindrは2023年8月4日に、労働組合の結成に携わった従業員に対し、「発表から60日以内にリモートワークを制限し、対面型のオフィスに週2日出社する」ことを義務付ける職場復帰ポリシーを発表しました。Grindrはポリシー変更を受け入れない従業員に対し、2週間以内の退職を求めました。

その結果、Grindrの全従業員178人のうちほぼ半数にあたる約80人がGrindrを退職したことが報告されています。アメリカ通信労働組合(CWA)のエリック・コルテス氏は「今回の職場復帰ポリシーに伴う従業員の退職によって、Grindrは存続が危ぶまれるほど人員不足に陥り、Grindrを利用するユーザーにとってのアプリの安全性やセキュリティ、安定性に対して疑問が生じています」と指摘しています。



CWAは「今回のリモートワーク制限は、従業員同士で自分たちの労働条件についての議論を行うことを沈黙させることが目的です」と主張しています。また「Grindrによる職場復帰ポリシーの制定や従業員の退職が違法な報復に相当する」として、2023年9月1日に全国労働関係委員会(NLRB)に苦情を申し立てています。

Grindrでソフトウェアエンジニアを務めるジャック・アルト氏は「2020年に発生した新型コロナウイルスの感染拡大以降、私たちGrindrはリモートワークでうまく機能してきました。今さら対面型のオフィスに出社する必要はないと思います」と語っています。

一方でGrindrのジョージ・アリソンCEOは「今回の職場復帰ポリシーによってチームの規模はこれまでよりも縮小されるでしょうが、私たちが本当に望む職場環境になるはずです」と主張。さらにアリソン氏によると、Grindrで発生する人件費はAppleやGoogleなどのアプリ配信プラットフォームに支払う料金に次ぐ「膨大なコスト」とのこと。アリソン氏は「今回の従業員の大量退職によって会社の運営費用にプラスの影響を与えるはずです」と述べています。



Grindrの広報担当者は「労働組合による主張にはGrindrにとってメリットがありません」と述べています。また「私たちは残されたチームとともにGrindrのビジネスを前進させ続け、ユーザーの世界と生活をより自由で豊かにしていく自信があります」と述べ「2023年10月以降、週2日の出社が義務付けられたハイブリッドモデルでの業務が開始され、チーム全体の生産性と連携がさらに向上されるはずです」と主張しています。