YouTubeでは動画投稿時に「広告を表示するか」や「表示する広告の種類はどれにするか」などを、クリエイター側が選べるようになっていました。このうち「表示する広告の種類を選ぶ機能」が削除され、適宜自動で表示されるようになることが明らかになっています。

Simplifying & Improving Ad Controls - YouTube コミュニティ

https://support.google.com/youtube/thread/233723152



YouTube is going to remove some ad controls for creators - The Verge

https://www.theverge.com/2023/9/6/23862198/youtube-ad-controls-creators-remove



YouTubeは動画投稿ツールであるYouTube Studioで広告を有効にする際の方法を簡素化して改善するために、クリエイターコミュニティ内のベストプラクティスを拡張し、クリエイターの収益を最適化すると発表しました。

そのための施策のひとつとして、今後数カ月でYouTube Studioにおける広告コントロール機能を簡素化すると発表しています。YouTubeでは広告フォーマット(プレロール広告、ポストロール広告、スキップ可能な広告、スキップ不可の広告)を個別に選択して、自身の動画にどの広告を表示するかを選択することが可能でした。しかし、新しく収益化するクリエイターと既存のクリエイターの両方にとって、この広告フォーマット選択機能は「混乱を招くものであった」として、この機能を削除するとYouTubeは説明しています。

YouTubeはヘルプセンターにある「YouTubeの広告フォーマット」というページも更新しており、広告フォーマット(プレロール広告、ポストロール広告、スキップ可能な広告、スキップ不可の広告)を選択するオプションを2023年11月で廃止することに決めたと説明しています。

YouTube の広告フォーマット - YouTube ヘルプ

https://support.google.com/youtube/answer/2467968



これにより、今後新しくアップロードされる動画では、動画の前後に表示される広告を有効あるいは無効にするオプションのみ選択可能となります。過去にアップロードされた動画では既存の広告フォーマットが保持されますが、今後は動画の収益化設定を編集しようとすると、広告をオンまたはオフにするオプションのみ表示され、広告フォーマットの選択画面は表示されなくなります。

ただし、動画の途中に挿入されるミッドロール広告についてはクリエイターは引き続き完全な制御が可能になるとのこと。ミッドロール広告の挿入タイミングを手動で選択したり、自動広告挿入機能を有効にしたりすることが可能です。

動画の前後に表示される広告のフォーマットをクリエイターが選択できなくなるわけですが、2022年に公開された「収益化が有効になっているYouTube動画」の90%以上が、4つのフォーマット(プレロール広告、ポストロール広告、スキップ可能な広告、スキップ不可の広告)すべてを有効にしていたとYouTubeは説明しており、広告フォーマットの選択が不可能になったことの影響を受けるクリエイターはごく少数であると説明しています。

さらに、YouTubeはライブ配信における広告機会を拡大するために、ミッドロール広告に関するいくつかの新機能を発表しました。

・ミッドロール広告がライブコントロールルームに表示される前に、広告が表示されるまで60秒のカウントダウンが設けられます。これにより、クリエイターはカウントダウンがゼロになる前に広告をスキップすることが可能となります。

・ミッドロール広告とライブディスプレイ広告が10分間表示されないようにするオプションを備えた、新しい遅延広告ボタンが導入されます。

・広告をスキップしたり遅延したりした場合、クリエイターはいつでも「広告を挿入」ボタンを使用して、手動でミッドロール広告を挿入することができます。

加えて、YouTubeは長尺動画のミッドロール広告挿入を最適化するためのオプションも追加しました。記事作成時点では、クリエイターは長尺動画にミッドロール広告をいつ表示するかを決定するオプションを2つ持っています。ひとつはYouTubeが推奨する自動広告挿入機能で、もうひとつはクリエイターが手動で広告の挿入タイミングを設定する手動広告挿入機能です。

今後数カ月以内にクリエイターはこれら2つのオプションを組み合わせてミッドロール広告を最適化する3つ目のオプションを利用できるようになるとのこと。「推奨事項を組み合わせることで、視聴者に広告を表示する最も適切なタイミングを選べるようになり、クリエイターと視聴者の双方にメリットをもたらすことになります」とYouTubeは説明しています。

・おまけ

YouTubeはテレビ画面上で再生されるYouTube動画に挿入される広告を改善するための施策を発表しています。YouTubeによると、毎日7億時間以上のYouTubeコンテンツがテレビ画面で再生されているそうです。

YouTube is redesigning the streaming experience for viewers and advertisers

https://blog.google/products/ads-commerce/youtube-is-redesigning-the-streaming-experience-for-viewers-and-advertisers/



イギリスのマーケティング企業であるKantarが行った「動画視聴者を対象にした調査」によると、動画視聴者の半数以上がテレビ画面で最初に開くアプリに「YouTube」を挙げたそうです。別の調査企業であるNielsenが公開したレポートでは、YouTubeがコネクテッドテレビでのストリーミング総再生時間においてトップのシェアを数カ月連続で占めていることが明らかになっています。このように、テレビを使ってYouTubeを視聴するユーザーの数は年々増加しています。

ユーザーのYouTubeの視聴方法も変化しており、ショート動画の「YouTubeショート」はすでに毎月20億人以上のユーザーに視聴され、モバイル端末での動画の総再生時間におけるYouTubeのシェアは今もトップのままです。大画面デバイスでのYouTubeの視聴時間も増え続けており、アメリカのコネクテッドテレビでのYouTubeの総再生時間の65%が「21分以上の長尺コンテンツの再生によるもの」であることが明らかになっています。

こういったYouTubeの視聴方法の変化に伴い、「YouTube上で表示する広告も進化させる必要がある」とYouTubeの広告担当ディレクターであるロマーナ・パワール氏は言及しました。

YouTubeはより新鮮でインタラクティブなテレビ体験を開拓しており、ストリーミング総再生時間において強力なリーダーシップを発揮し、コネクテッドテレビでのストリーミング中に可能な限り最高のエクスペリエンスを視聴者に提供できるように、将来に向けた構築を進めているとのこと。

その一環として、YouTubeは2022年に広告エクスペリエンスを刷新。2023年5月にはスキップ不可の30秒広告を導入し、コネクテッドテレビファーストのフォーマットを発表しました。

ついにYouTubeがスキップ不可の30秒広告を開始へ - GIGAZINE



また、コネクテッドテレビでもショッピングが可能になる広告もスタート。テレビとスマートフォンを接続し、動画再生はテレビで、コメントはスマートフォンでといったように、セカンドスクリーンとしてスマートフォンを使用することが可能になっていますが、このときにテレビだけでなくスマートフォンにも広告を表示する業界初の電話送信メカニズムも導入されました。

さらに、フィード広告を大画面表示できるようにしたことで、視聴者がストリーミング中に動画の再生を中断することなく広告を操作してアクションを起こすことが可能になったとも説明しています。

また、ユーザーは見ているコンテンツに応じて異なる広告エクスペリエンスを期待しており、テレビ画面上の長尺コンテンツに対しては、視聴者の79%が「動画全体で配信される動画広告ではなく、グループ化された動画広告(複数本の動画広告が一気に流れるケース)」を好むそうです。このような調査データをベースに、YouTubeは大画面でよりシームレスな視聴エクスペリエンスを生み出すために、広告時間を減らしたり長くしたりするなど、視聴者の動画再生体験が中断されないような新しいオプションを評価しているとのこと。

さらに、広告フォーマットの多様化を受け、視聴者に広告があとどの程度流れることになるのかをより分かりやすく表示する方法を模索していると、パワール氏は明かしました。YouTubeの調査によると、視聴者の大多数は広告休憩の合計残り時間と配信される広告の数を知りたいと考えているそうです。そのため、コネクテッドテレビ向け広告では、間もなく「再生中の広告の残り時間」と「再生される広告の数」を表示するようなUIが導入されることになるそうです。



パワール氏は広告関連のアップデートについて、「数十の市場にまたがる数千人の視聴者からのリアルタイムフィードバックに基づいて構築されたものである」と説明しています。