ジャニーズ性加害問題「“拒めば冷遇される”被害者の心情につけこんだ」 特別チームが会見
故ジャニー喜多川氏の性加害問題をめぐり、ジャニーズ事務所が設置した「再発防止特別チーム」(座長・林真琴弁護士)は8月29日、ガバナンス上の問題に関する調査結果の報告書と再発防止策の提言書に関する記者会見を東京都内で開いた。
座長を務めた前検事総長の林眞琴弁護士は、21人の被害者らに対してヒアリングをおこなった結果として、ジャニー氏は1950年代から性加害を繰り返し、ジャニーズ事務所においては1970年代前半から多数のジャニーズJr.らが広範にわたって被害にあったと認定したことを明らかにした。
林弁護士は「ジャニー氏が自宅、宿泊所などで多数の未成年者に対して、一緒に入浴、愛撫、性器を弄び、口腔性交をおこなったり肛門性交を強要していたことを認めた。性加害を受ければ優遇され、拒めば冷遇されるとの認識が(被害者の間に)広がっていた。被害者の心情につけこんでおこなったもの」と評価した。
●「メディアの沈黙」を批判
林弁護士は、長年にわたって多数の被害者がうまれた背景として「マスメディアの責任ではないが、背景にはマスメディアの沈黙という状況が関係している」と、過去、報じてこなかったメディアの姿勢も次のように批判した。
「訴訟や暴露本が出て、様々な糾弾がなされた時、企業としては徹底的に調査する機会があったが、隠蔽した。文藝春秋との訴訟でも性加害の事実が認められたが、大きなメディアからの報道はなかった」
「マスメディアから強い報道、批判が出ていれば、事務所が隠蔽の対応を改め、防止するための自浄作用を働かせられたかもしれない。批判されることがない状況があったから、隠蔽を続け、性加害を継続できた」
●「被害者救済委員会の設置」を提言
報告書では〈ジャニー氏によるジャニーズJr.の思春期少年に対する性加害は、長年にわたり広範に行われていたことは紛れも無い事実である〉と、性加害の事実を認め、〈根本原因は、ジャニー氏の個人的性癖としての性嗜好異常にほかならない〉と指摘した。
〈ジャニーズ事務所が解体的な出直しをするため、経営トップたる代表取締役社長を交代する必要があると言わざるを得ず、ジュリー氏は代表取締役社長を辞任すべき〉と言及した。
また補償問題については、「多数の元ジャニーズジュニアが性加害を受けており、被害者に対して、被害回復のための措置制度を構築して、性加害の被害を受けた被害者との対話をすみやかに開始する必要がある」(林弁護士)。
具体的には〈被害者救済の公正、中立を図るため、補償について知見と経験を有する外部専門家からなる「被害者救済委員会」〉の設置を提案し、〈被害者の申告を検討して補償の要否、金額等を判断し、不服申立てを処理できるようにすべきである〉とした。
その上で「性加害が密室で行われており、客観的証拠が残りにくい性質のものである上、ジャニー氏が亡くなっていることを考えると、被害者の側に性加害の事実認定について法律上の厳格な証明を求めるべきではない」とも指摘した。
●「当事者の会」メンバーにもヒアリング
特別チームは5月26日に結成され、林弁護士のほか、精神科医の飛鳥井望氏、性暴力被害者支援をおこなっている臨床心理士で上智大学総合人間科学部心理学科准教授の齋藤梓氏ら3人が就任。被害者やジャニーズ事務所関係者等、計41名のヒアリングを行った。41名の中には現役タレントも2名含まれると明らかにした。
再発防止特別チームは調査にあたり、ジャニーズ事務所に資料の提出を要請し検証をおこなうとともに、被害者のヒアリングも重ねてきたという。
「ジャニーズ性加害問題当事者の会」の平本淳也代表、石丸志門副代表らもヒアリングを受けたことを明らかにしていた。