「悪玉コレステロール」はむしろ脳にいい…医師・和田秀樹「老化を避けるためにオススメな"体に悪い食品"」
※本稿は、和田秀樹『70代、80代を楽しむためにこれだけは知っておこう!』(かや書房)の一部を再編集したものです。
■男性ホルモンが減少すると前頭葉が衰える
脳の老化は前頭葉から始まります。
前頭葉とは大脳の前部にある部位の1つであり、知能や人格、理性、言語、運動などを司っています。
ここが衰えてくると怒りっぽくなったり、気分がふさぎ込んで不機嫌になったり、意欲や好奇心が失われたり、身の回りに無関心になったりするほか、長引けばうつ状態になってしまいます。
さらには車の運転に必要な注意力や判断力といった能力の低下にもつながります。
その意欲や判断力、記憶力の衰えは、加齢による男性ホルモン(テストステロン)の分泌の減少によって引き起こされます。
■脳の衰えを食い止める「肉食」
では、その減少を食い止めるにはどうすればいいのでしょうか?
一番手軽にできることは、男性ホルモンの分泌促進効果がある食べ物を摂取することです。
男性ホルモンの分泌促進には、アミノ酸を多く含むタンパク質をとることが必要です。
そして、その理想的な食べ物が「肉」なのです。
肉にはトリプトファンという必須アミノ酸が多く含まれています。これはセロトニンという神経伝達物質の材料となり、さらに肉に含まれるコレステロールが脳に運んでくれると考えられています。

セロトニンとは別名「幸せホルモン」と呼ばれ、幸福感と密接に結びついている物質です。これが減少してくると気分が沈んだり、イライラしたり、感情の不安定さを招きます。
しかもセロトニンは加齢によって減少していく物質であり、その減少が認知症の原因となります。このように、タンパク質が不足すると様々な弊害が生じます。
肉を食べることは、セロトニンをつくる手助けにもなるのです。
■男性ホルモンが減ると記憶力が悪くなる
肉以外にも、男性ホルモンを合成するために必要な「亜鉛」を含んだ食材(牡蠣など)、末梢血管を広げて血行を促進して脳を活性化する「ビタミンE」を含んだ食材(ほうれん草など)、認知機能や筋肉の衰えを防ぐ「ビタミンD」を含んだ食材(鮭など)なども有効です。
加齢とともに徐々に食が細くなっていくので、普段の食事にできるだけこれらの食材を取り入れて、日頃から認知症予防を心がけていきましょう。
高齢者の方々は男性ホルモンが減少しがちです。これが減っていくと、物事に取り組む前向きな意欲が衰えてきます。
物事を記憶するのに役立つのが「意欲」や「好奇心」ですので、男性ホルモンの低下は、記憶力の減退につながっていくのです。
男性ホルモンが減少してきますと、短期記憶を担っている神経伝達物質「アセチルコリン」がつくられにくい状態になります。
最近の研究では、男性ホルモンが記銘力の中枢である海馬という部分に直接働きかけることも知られています。
つまり男性ホルモンが減ると、記憶力が悪くなってしまうのです。
■コレステロール値は気にしなくていい
それでは、男性ホルモンの減少にはどう対処すればいいのか?
答えは、先ほども説明しましたように、肉や魚などのタンパク質を多くとることです。
食べ過ぎると「コレステロール値が高くなるから」と気にする方もいらっしゃいますが、一般的に言われている「善玉コレステロール値」や「悪玉コレステロール値」というのは、数値がいわゆる「正常値」より少々高くても健康には関係なく、逆にコレステロール値が低いと問題が起こります。

善玉、悪玉という区別は動脈硬化にとってだけの話で、実は悪玉コレステロールと言われるものは男性ホルモンの材料になっているのです。
■コレステロール値が少し高めのほうが長生きできる
「私は胃が健康だ」「私は脳の衰えが少ない」
と言っても、胃だけで生きている人はいませんし、脳だけで生きている人もいません。
「健康の良し悪し」は総合的にしか判断できず、その「総合的」な判断には、「統計」しかないのです。
統計によると、コレステロール値が少し高めのほうが長生きできるということなので、それが最も健康的な方法という結論に至ります。
■加工食品・食品添加物を避ける必要はない
歳をとってくると、食欲が落ち、食が細くなっていく一方です。しかし、食事は軽食だけで済ませないようにしましょう。
どうしても食べる気にならない人は「好きなもの」を食べてください。
好きなものなら、食欲がなくても食べられるでしょう。肉や魚、麺類から加工食品、ジャンクフードまで何でもOKです。
身体(脳)が欲している、食べたいと思っている、その気持ちを優先しましょう。
加工食品に関していえば、発がん性物質を多く含んでいると言われるものもありますが、それを食べて実際にがんを発症する確率は、100万人に1人とか、ごく稀なスケールの話に過ぎません。いちいち怖がっていたら、何も食べられなくなります。
中国や台湾では、人工調味料をたくさん使います。中華料理には「うま味調味料」が当たり前のように入っています。

それに比べて、日本の食品添加物なんて、微々たるものです。
■「身体に良い」はずの食べ物があわないこともある
一般的に身体に良いとされている食べ物が全ての人に効果的だとは限りません。
慢性型のアレルギーは一人ひとり違うものです。私も以前検査で「海藻やそばが良い」と言われ、意識してたくさん食べていたら、逆に海藻やそばの慢性型アレルギーになってしまいました。
一般的に「身体に良い」と言われているものでも、自分にはあわないこともあるのです。
「誰にとっても良いもの・悪いものはあまりない」という考え方のほうが人生楽しく生きられます。
カレーや牛丼といった高カロリーな食事でも、あえて避ける必要はありません。そのとき食べたいものを食べればいい。夜中にラーメンを食べたければ食べればいいのです。
私はラーメン屋巡りが大好きですし、カップラーメンも食べます。
自分の身体や脳が欲するサインに対して素直に応じ、食べたいものを食べればいいのです。
■朝食はしっかりとるべき
コレステロールは脳に良い、という話をしましたが、脳に栄養を行き渡らせるために、朝食はしっかりとりましょう。朝はブドウ糖が不足しているからです。
普通、朝食と昼食の間は4時間ぐらいです。昼食と夕食の間は、だいたい7時間ぐらい。

ところが、夕食から朝食までは12時間もあります。つまり、低血糖を一番起こしやすい時間帯は、朝なのです。
ブドウ糖が不足した状態は、脳の働きには絶対良くありません。もちろん記憶力にも大きなマイナス要因です。
脳はものすごくエネルギーを消費します。1日中勉強をしていると、運動もしていないのに、お腹が空いた経験のある方も多いことでしょう。
朝、ブドウ糖が不足している脳には、できるだけ早くエネルギーを補給する必要があるのです。
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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪市生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師。2022年3月発売の『80歳の壁』が2022年トーハン・日販年間総合ベストセラー1位に。メルマガ 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」
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(精神科医 和田 秀樹)
