フロントガラスの「▲マーク」は何のため!? 「地味に気になる…」 「意味ある?」 実は凄いマークの正体とは
ホンダ車の三角形のマーク、実は特許技術だった!
ほとんどのホンダ車のフロントガラスに設けられている謎の三角形マーク。
言われなければ気が付かないほどの小さなものですが、意外にも重要な役割を持っているようです。
ホンダのクルマのフロントウィンドウを見ると、両サイドのピラーに近い場所に小さな三角形のマークがあることがわかります。
【画像】どこにあるの? ガラスの「小さな三角マーク」を写真で見る(12枚)
ドライバーの目線の高さよりも少し上の位置にあるこのマークですが、大きさはわずか5mm程度であるためほとんどのユーザーはその存在すら気が付かないかもしれません。
このマークは、2008年に登場した「フリード」を皮切りに、現在では国内外で販売されるほとんどすべてのホンダ車に採用されています。
結論から言えば、この三角形のマークには、運転中のドライバーの視線を上下に散乱させることなく安定化させるという効果があるとされています。
このマークのベースとなっているのは、ホンダが2007年に出願した特許です。
出願された資料には「本発明は、運転感覚を補助する簡易かつ安価な構造を備える車両用フロントウィンドウを提供することを目的とする」という文章とともに、三角形のマークによる効果が記されています。
当時、フロントウィンドウのドライバー補助技術としては、フロントウィンドウ下部に設置された液晶パネルの透過率を調整することで、ドライバーの視線を適切な位置に誘導するというものがありました。
しかし、ホンダが実験したところ、こうしたフロントウィンドウではドライバーによる無意味な上空方向への視線移動が観察されたといいます。
また、液晶パネルを制御するための装置などが必要となるため、高価になるという問題もありました。
さらに、ホンダはコーナーポールやカメラを用いたドライバー補助技術についても、コスト面で課題があると指摘しています。
こうした課題に対する解決策として、ホンダは水平方向を示す目印を設けることで、ドライバーの視線の散乱を抑制し運転感覚を補助することができるとしています。
加えて、この方法では両サイドに目印を備えただけであるため、安価かつ簡易にできることも特許資料では説明されています。
ちなみに、この特許は出願からおよそ5年が経過した2012年に登録されており、現在でも継続しています。
いったいなぜ?三角形のマークがドライバーを助ける理由
特許技術であるとはいえ、わずか5mm程度の小さなマークが、ドライバーの運転感覚を補助するとはにわかに信じがたいものです。
しかし、現代科学では、知覚したものと認識したものは必ずしも同一でないことが明らかとなっています。
つまり、我々は無意識のうちに多くのものを知覚しているというわけです。
この小さな三角形のマークについても、意識的に認識しているユーザーはごくわずかかもしれませんが、実際にはドライバーのほとんどが無意識のうちに知覚しているようです。
たとえば、白紙を眺めていると視線は安定しませんが、白紙に点や線を描くとその部分に視線が誘導されます。
これはほとんど無意識のうちに行われていることであり、人間の視覚のクセということができます。
三角形のマークについては、ドライバーは、両サイドに設けられた三角形のマーク同士を結ぶ直線を知覚するとホンダは説明しています。
ホンダが「仮想直線」と呼ぶ、実際には存在しないこの水平の線によってドライバーNo視線移動が安定し、対向車とのすれ違いや狭い道での左折時といった車幅感覚が重要となる場面で、ドライバーの感覚を補助する効果があるといいます。
もちろん、アラウンドビューモニターやコーナーセンサーに比べると、三角形のマークによる補助効果はごくわずかです。
しかし、費用対効果という点で言えば、そのほかの補助技術に比べて勝るとも劣らない水準にあると言えそうです。
適切な位置に「仮想直線」を示すことが三角形のマークの目的であるため、ホンダ車以外でもシールを貼るなどしてなんらかの目印を設けることで、理論上は同等の効果が得られる可能性はあります。
ただし、フロントウィンドウに対する保安基準は非常に厳しく、公的なもの以外のシールの貼付やペイントは原則として認められていません。ユーザー自身で三角形のマークを設置することは絶対にやめましょう。
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乗車中に視線が不安定な状態が続いてしまうと「酔い」につながることから、視線の安定化はドライバー以外の乗員にとっても非常に重要な要素です。
三角形のマークはおもにドライバーの視線安定化に貢献するものですが、たとえばホンダ「ステップワゴン」では、ダッシュボードのデザインを水平基調にするなどの工夫によって、ドライバー以外の乗員の視線の安定化も図られています。
こうした微細な工夫の積み重ねによって「いいクルマ」ができあがっていくと言えます。