駅の先に…謎の「ちょこっとだけ分岐する線路」何の意味? 短くても重要な″役割″とは
駅構内の線路などで「分岐して、ほんの少し先でブツ切れ」というものがあります。何のためにわざわざ分岐させているのでしょうか。
ちょっと伸ばしてすぐ行き止まり
駅構内の線路などでしばしば見かける光景が、「線路が分岐して、ほんの少し先で車止めでブツ切れ」というものです。どこかへ向かう線路でなければ、何のためにわざわざ分岐させているのでしょうか。
分岐してすぐ終わる線路。何のためにあるのか(画像:写真AC)。
実はこれ「安全側線」と呼ばれる設備です。たいていの場合、単線区間の駅などで「行き違い」や通過待ちのために一部複線となった部分(待避線)に設けられています。
たとえば対向列車と行き違うために待機する列車が、もし何らかの理由でそのまま待避線を過ぎて単線部へ入ってしまったら、前から来た列車と正面衝突が起きてしまいます。通過待ちをしている場合も、追い越しに来た後続列車に突っ込まれる危険性があります。
これを防ぐため、本来行くべきでないタイミングで本線へ入ろうとする場合、列車を本来の線路ではなく手前で分岐させたダミーの線路に敢えて行かせ、逸走しないようにします。これが安全側線なのです。駅や信号場で「このまま進んでいいですよ」を示す信号現示になったと同時に、安全側線の分岐部も、本来の方向へ行くように切り替わります。
もちろん行き過ぎて短い安全側線を超え、脱線することも考えられます。しかし、正面衝突や追突といった大惨事を回避するには、逸走した列車はあらぬ方向へやっておいたほうがむしろ安全というわけです。
この対策は大昔、運転士がきちんと信号を見落とさないかに全てがかかっていた時代のもの。現在はATS(自動列車停止装置)をはじめ、ヒューマンエラーをカバーする様々な安全対策が鉄道施設には実装されています。それにより、この「ちょこっとだけ分岐」という安全側線の風景も、次第に過去のものになりつつあります。