信号機のない円形の交差点「ラウンドアバウト」が増加していますが、大都市ではあまり見かけません。一方、似たような構造の「ロータリー交差点」は、都市部でもまれに見られます。両者の違いは何でしょうか。

ラウンドアバウトとロータリーの違いとは

 信号機のない円形の交差点「ラウンドアバウト」(環状交差点)が続々と登場しています。日本では2014(平成26)年にその通行ルールが定められて以降、全国的に整備が進み、2022年3月末時点では全国に140か所があります。
 
 ラウンドアバウトは、ドーナツの輪のような“環道”に複数の路地が接続している構造で、そこへ差し掛かったクルマは進む方向に関係なく、環道を時計回りに進まなければなりません。この構造は交通量の少ない交差点で効果的とされており、設置スペースの観点からも大都市では見かけません。交通過多だと、円形の構造がかえって交通上のボトルネックとなってしまうからです。
 
 ただし、都市部でも類似の交差点をまれに見かけます。「ロータリー交差点」です。


鷺沼駅近くにあるロータリー交差点。クルマは時計回りで進行しなければならない(2023年6月、乗りものニュース編集部撮影)。

 東急田園都市線の鷺沼駅(川崎市宮前区)から北西へ100mほど。十字路の交差点がロータリーとなっています。信号機はなく、センターサークル内は花壇です。駅も近い住宅街のため、横断歩行者もそこそこ見受けられます。
 
 通行方法は前出のラウンドアバウトと同じ。ここは十字路のため、例えば右折したければロータリーを4分の3周する必要があります。

 ここには「ロータリーあり」の道路標識のほか、進行方向を示す大きな矢印標示もあるため、交通はいたってスムーズでした。また中央にサークルという“障害”があるため、クルマは減速せざるを得ず、歩行者優先のルールも比較的守られていた印象です。

 では、ラウンドアバウトとロータリーの違いは何でしょうか。

 最大の点は、どちらのクルマに優先通行権があるかということ。ラウンドアバウトは周回するクルマが優先ですが、ロータリーはそこへ進入するクルマが優先です。

なぜロータリーを設置? 3社局へ聞いてみた

 ロータリーは進入優先のため、交差点の手前にはラウンドアバウトで見かける「ゆずれ」の道路標示はありません。道路標識も青地に白矢印の規制標識ではなく、「ロータリーあり」という先述の黄色い警戒標識です。

 ただし、この交差点は南北方向の道路に一時停止義務があります。ロータリーへ進入するクルマが優先とはいえ、停止線で一時停止しなければ違反となります。逆にラウンドアバウトの場合は、基本的に環道へ入る際の一時停止は不要とされています(意図的に一時停止を設けている場合もある)。


現場の手前50mに設置されている「ロータリーあり」の警戒標識(2023年6月、乗りものニュース編集部撮影)。

 ところで川崎市内のこの場所には、なぜロータリーが設けられたのでしょうか。道路の維持管理を担う、宮前区役所道路公園センターや川崎市地域整備推進課まちづくり局、さらには一帯を開発した東急電鉄に取材しましたが、いずれも明確な資料がなく、詳細は不明とのことでした。

 ただし東急電鉄の広報担当者は、1967(昭和42)年に同社が宅地開発に携わった当時から、ロータリーは形成されていたと話します。また、前出のまちづくり局の担当者は、推定の域を出ないと前置きしたうえで、以下のように話しました。

「イチから開発した新しい街だったからこそ、当時のトレンドとして、信号機を設けないロータリーを作ったのではないでしょうか」

 現在、ラウンドアバウトが数を増やしているように、60年ほど前はロータリーが流行ったのかもしれません。事実、かつては東京都区部の幹線道路などでもロータリー交差点は見られました。しかし交通量が増えると先述の理由で渋滞が顕在化。陸橋を建設する、信号機で制御するなど対策をし、今ではほとんどが姿を消しています。