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『ジャスティス・リーグ』(17年)で正式に初登場した、エズラ・ミラー演じるフラッシュ/バリー・アレンが大活躍する映画『ザ・フラッシュ』が、16日(金)にいよいよ公開。愛する母親を救うために、過去にタイムリープしたフラッシュ。しかしそれによって現代の地球は滅亡の危機に。バットマン、スーパーガールと力を合わせ、フラッシュはどのように地球を救うのか! フラッシュ/バリー・アレン役の吹き替えを担当した細谷佳正、バットマン/ブルース・ウェイン役の山寺宏一に、本作の魅力や『ザ・フラッシュ』にまつわる様々な話を聞いた。

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■実はフラッシュの先輩です!(山寺宏一)

――もともとフラッシュには、どういう印象をお持ちでしたか?

細谷:僕がフラッシュを知ったのは『ジャスティス・リーグ』からで、その時はアニメのキャラクターのような印象で、それをバリー・アレン/フラッシュ役のエズラ・ミラーさんが、ご自身のパフォーマンスでやろうとしているという印象でした。ただ『ジャスティス・リーグ』の時の衣装が、今回の『ザ・フラッシュ』のような格好いいスーツじゃなくて。スーパーマン、バットマン、ワンダーウーマンなどは格好いいのに、「何で彼だけ取って付けたみたいなスーツなんだろう?」というのが一番大きな印象でした(笑)。

山寺:Netflixで配信しているTVシリーズよりもずっと前に、『超音速ヒーロー ザ・フラッシュ』というTVシリーズがあったことは、皆さんご存じでしょうか? そこでフラッシュ役を演じていたのが、ドラマ版の『THE FLASH/フラッシュ』でバリーのお父さん=ヘンリー・アレンを演じているジョン・ウェズリー・シップで、その吹き替えをやっていたのが、誰あろう僕なんです!

細谷:僕、知らなかったです。

山寺:でしょ(笑)! こういうインタビューをたくさん受けていますけど、そのことについて誰にも触れてくれないから、「本当にやったのかな?」って自分でも不安になっちゃいましたけど、実はフラッシュの先輩です(笑)!

細谷:観たい。これを機会に劇場でも流してくれないかな。

――『ザ・フラッシュ』は、『ジャスティス・リーグ』から独り立ちして単体での作品です。4年越しの公開となりましたが、そのあたりについてはどうですか?

細谷:『ジャスティス・リーグ』をやった時に、『アクアマン』の映画が公開されることも同時期くらいに発表されてて。その時に、今作『ザ・フラッシュ』で音響監督を務めてくださった三好慶一郎さんと、「フラッシュ(の映画化)もあるかもね」って話していたんです。なかなか発表されなくて、「本当にあるのかな?」って思っていたんですけど、公開することができて本当に良かったです。

■山寺さんは、僕が声優になるきっかけです(細谷佳正)

――今作では、異なる時代の二人のバリー・アレンが登場して、細谷さんは一人二役のような感じですが、吹き替えでの苦労を教えてください。

細谷:2人同時にアフレコするんじゃなくて、現実世界のバリー・アレンを録ってから、マルチバースのバリーを録るという方法をとったんですけど。本国の制作陣が海外でいろんな言語に吹き替えられることに関してナーバスになっているという情報を聞いたんですね。本当に素晴らしいエズラ・ミラーさんのパフォーマンスを日本語に吹き替えることでクオリティが保てるのかということを気にされていたと思うんです。本当は主人公のバリーAを最後まで録ってからマルチバースのバリーBを録りたかったんですけど、本国がバリーAとBが絡んでいるシーンを観て精査したいと。本来はバリーAを最後まで録ってからバリーBを録るというほうが効率的なんですけど、バリーAを録ってBが出て来たらそのシーンのバリーBを録ってと、結構大変でした。初日のアフレコが終わった時は夜中の12時くらいだったんですけど、まだ録り終ってなかったです。

――山寺さんは一人で何役もやるという経験をされているので、そういう苦労も理解できるのではないですか?

山寺:映画の中で向こうの俳優が何役もやっていたので、それで何役も吹き替えするということはありましたけど、『ザ・フラッシュ』みたいに自分と自分が向き合うみたいなものは無かったですからね。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』では時代の違う2人のマーティを演じたことがありましたけど、その時はタイムパラドックスを回避するために、マーティ同士が会っちゃいけないルールがあったんです。でも『ザ・フラッシュ』のバリーはガンガン会って絡んでいるから、大変さが全然違うなと思いました。他にもエディ・マーフィやマイク・マイヤーズの作品で、何役かやるということがありましたけど、それは特殊メイクで違う人物になっていたから、声色も使えるし別人としてやれたし。今回のように、別の世界線だけど同じ人間というのは、非常に微妙な違いしかないと思うから、何倍も大変だったと思いますね。全く変わっているほうが、それはそれで大変さがあるけど、極端に変えればいいけど今回のバリーは、繊細な演技の違いが要求されて、本当に難しかったと思います。それをやった細谷くんは、さすがです!

細谷:ありがとうございます。僕が声優になるきっかけとなる方なんで、山寺さんは。

山寺:その話、もうしちゃう? たくさんして(笑)!

細谷:23年かかりました。僕が声優を志したのは、山寺さんがアニメ『機動戦艦ナデシコ』で演じられた北辰というキャラクターがワープしたシーンを観て、「これをやりたい」と思ったからなんです。当時声優のことは詳しくなかったんですけど、山寺さんのことは好きで、『新世紀エヴァンゲリオン』の加持リョウジとか、『カウボーイ・ビバップ』のスパイク・スピーゲルとか知ってて。『カウボーイ・ビバップ』は男1でもいいから出たいなって。でもこの仕事を始めて、全然ご一緒する機会がなかったんですよ。先輩が「今日、山寺さんに会ったよ」とか言うんですけど、僕は「山寺さんって、そんな簡単に会える人なんですか?」って感じだったんですよ。こうして一緒にお仕事をするまで、23年かかりました。

山寺:ありがたいです。自分がいかに歳を取ったかということを、実感させられますね(笑)。でもすごく嬉しいですね、そんな風に言ってもらえるなんて。先日朗読劇でも共演して、その時に初めてこの話を聞いたんですけど、その時はサービストークで言ってくれているのだろうと思っていました。それで、家に帰ってWikipediaを見たら、しっかり書いてあって。「本当だったんだ〜!」と思って(笑)。

細谷:本当です(笑)

■完成したものを劇場で観て、そこで初めて楽しめる(山寺宏一)

――細谷さんは、同じキャラクターを演じるにあたって、何か事前に準備されたことはありましたか?

細谷:台本をもらって映像でリハーサルしないと内容はわからないので、前もって何か準備するっていうことはなかったです。三好音響監督にアフレコに入る前に試写を見ておいた方がいいって言われてて。情報漏洩を防ぐために、僕らがリハーサルで使う映像は白黒で肝心なところはモザイクがかかっているんですよ。だから、準備したことといえば、試写会で色が付いた映像を観ることですね。試写会で観ておいてよかったなって思ったことは「こういう映画なんだ」ということが分かったってこと。エズラ・ミラーさんの演技は、単館映画のアート作品のような細かいお芝居で、彼がやろうとしていたことが理解できたので、僕も彼と同じところに意識をフォーカスすることができました。

――山寺さんは、これまでにも多くの作品でバットマンを演じられてきましたけど、今作『ザ・フラッシュ』におけるバットマンは、どういうところを意識しましたか?

山寺:今回は引退しているバットマンですから、シチュエーション的にはこれまでのバットマンとは少し違うのですが、とにかく我々は吹き替えですから。マイケル・キートンがどんなお芝居をして、この作品におけるバットマン/ブルース・ウェインはどういう立ち位置なのか、自分はどういう演技を求められているのか、それを一生懸命読み取ることに心血を注ぎました。マイケル・キートンも微妙で分かりやすくない芝居をする捉えどころの無い人で、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』でも、そんなに明からさまではないけど、本当にその人に見えるみたいな演技をしていて。スタンドアップコメディ出身の人だけれどナチュラルな芝居をできるのが、彼のいいところだと思って、そういうところをきめ細かく吹き替えできたらいいなという思いで演じました。だから僕が作品を楽しめるのは、完成したものを劇場で観る時で、そこで初めて楽しめるのかなって。

■”誰でもやり直しがきく”というメッセージ(細谷佳正)

――では最後に、お二人のオススメのシーンを教えてください。

山寺:現代とはちょっと違うバットマンだったり、もともとは存在しなかったスーパーガールなど、バリーの行動によって巡り会ったヒーローたちが、どう共闘してピンチを切り抜けて行くのか。過去のバリーと今のバリーがどう分かり合っていくのか、そういう過程も一つの見所だと思いますね。最終的には、そんなことよりも何よりも、親子の絆の話に帰結するんですけど…とにかくアクションがすごいし、コメディ要素もあるし。冒頭のシーンなんか本当にすごくてね。かつて僕がやっていた頃のフラッシュとは、だいぶ違うな〜って(笑)。

細谷:2人のバリー・アレンが出て来るところとか、往年のいろいろなバットマンやスーパーガールが出て来るところとか、予告だけみても見所がいっぱいなんです。でも僕は、派手な見た目をしてるんですけど、”寛容さ”みたいなものを伝えているなという風に感じました。今、著名人が何か良くないことをすると、糾弾されて社会に復帰することが難しくなりますよね。バリーは、母親への愛情が理由で決して弄ってはいけない過去に行って変えようとする。でもそれやってしまったら、世界が崩壊するかもしれない。ある視点では美しいけれど、別の視点では大罪。でもそれを許そうとするシーンもあるんですよね。例えばバットマンからもらう言葉とか。そういうシーンを観て、きっとこの映画は”誰でもやり直しがきくんだよ”ということを、万人が受け入れやすいエンターテインメントという形で伝えたいのかなと思いました。