22時という「門限」に間に合わず、代替である北九州空港にJAL機が着陸したことで話題となった福岡空港。このルールの背景には、1970年代からついて回る「騒音」がキーワードとして浮かび上がってきます。

ジェット機時代の始まりから設定された「福岡空港の門限」

 福岡空港へ着陸できなかった便が、2023年に入って4件もあることが話題になっています。いずれも、22時までという同空港の「門限」に間に合わなかったためです。4件目となった6月11日のJAL(日本航空)331便は、同じ福岡県内にある24時間運用の北九州空港に代替着陸(ダイバート)しました。
 
 この北九州空港が「海上空港」なのも合わせると、1970年代からついて回る「騒音」がキーワードに浮かび上がってきます。


福岡空港(乗りものニュース編集部撮影)。

 市街地にほど近い福岡空港では、発着が午前7時から22時に限られており、航空会社の事情でこの22時の“門限”から到着が遅れると、事前の承認がない限り着陸が原則できません。このルールは、空港周辺の騒音への対策のためです。

 1960〜70年代、ジェット旅客機が国内で普及しだした頃、「公害」が大きな社会問題になりました。航空機の騒音も公害とされ、福岡空港周辺ではその後、訴訟も起きています。空港の拡張や新たな建設も、当時は住民の反対を受けやすく、陸地へ騒音が響きにくい海上空港がクローズアップされもして、できた空港のひとつが北九州空港でした。先述のJAL331便の代替着陸は、その効果が発揮された事例といえるでしょう。

 こうして見ると、福岡空港での「門限」破りは、1960〜70年代から引き継いだ社会情勢が背景にあり、同じ結果生まれた「海上空港」で福岡県内へ着陸できたと言えるでしょう。しかし、この代替着陸を続けることで“門限”問題は解決するのでしょうか。筆者は課題があると考えています。

「門限超えで北九州へ」は万能じゃない?

 一つは、北九州空港で支援態勢が整わない航空会社は、着陸後に再出発するといったケースになった場合、整備確認ができるかという問題が起きる可能性が考えられます。もう一つは、航空機の騒音に対する認識も変わっていかなければならないのではないか、ということです。


北九州空港。写真は深夜に到着したスターフライヤー便(乗りものニュース編集部撮影)。

 航空機の騒音は半世紀を経て、格段に小さくなりました。かつて激しい建設反対闘争が起き、長年、騒音へ厳しい目を向け続けてきた成田空港の周辺も、近年は騒音の低下や空港と地域双方の発展を見据えて、夜間の弾力的な運用を徐々に受け入れつつあります。

 かつては「陸上空港はもはや建設できない」ともささやかれた時期もありましたが、成田空港では3本目の滑走路も現実のものとなりつつあります。

 夜間は騒音がより顕著に響くため、福岡空港のように大規模市街地が近いと、見直しは一朝一夕に進まないかもしれません。しかし、今後も福岡空港で“門限”破りが起きても代替空港があるから、という認識が出来上がってしまえば、乗客が困ることが続きかねません。

 航空機の騒音がどれほど改善されたかを踏まえつつ、福岡県や九州の経済的な発展を考える場合、現在よりは弾力的に“門限”を運用することが福岡空港で可能か、検討を始めても良いかもしれません。