日本に初めて飛来したボーイングが保有する試験機「エコデモンストレーター・エクスプローラー」。真っ白な激レア機ともいえるこの機の機内はどのようなものなのでしょうか。実際に入ってみました。

元はベトナム航空向けの787

 2023年6月12日と13日に、アメリカの航空機メーカー、ボーイングが保有する珍しい飛行機「エコデモンストレーター・エクスプローラー」(機番:N8290V)が初めて成田空港へ飛来しました。日本・アメリカなど4か国共同で実施した試験飛行のためですが、これにあわせ機内の報道公開も行われています。


成田空港を離陸する「エコデモンストレーター・エクスプローラー」(2023年6月13日、乗りものニュース編集部撮影)。

「エコデモンストレーター・エクスプローラー」は、ボーイングの旅客機「ボーイング787-10」をベースとした機体で、新技術を実際の運航のなかで試験する「エコデモンストレーター・プログラム」試験機の最新型です。胴体デザインや尾翼は真っ白で、機首部分に「エコデモンストレーター・エクスプローラー」の文字とボーイングのロゴマークなどが入っています。

 担当機である「N8290V」はシリアル番号からさかのぼると、ベトナム航空むけの787-10でした。過去には機体に同社の塗装をまとったこともあったものの、納入は叶わずに、現在の試験機へと変貌を遂げたとみられます。

 通常こういった試験機であれば、その特別な用途のために、一部の座席が取り外され、大型の機器などが設置されていることも珍しくありません。たとえば「エコデモンストレーター・エクスプローラー」と同様に、ボーイング社のなかで次世代技術の検証のために用いられているボーイング777ベースの「エコデモンストレーター」は、座席やカーペットが取り除かれた区画があると報じられています。

 そして、やはり「エコデモンストレーター・エクスプローラー」の機内も、少しユニークでした。

「真っ白すぎる珍飛行機」その機内へ

 この機では、ベトナム航空のものと見られるビジネスクラスとエコノミークラスが当時のまま配されているのです。ビジネスクラスは横1-2-1列でベージュをベースカラーとしたフルフラットシートが、エコノミークラスは横3-3-3列の深い色のものが、通常の旅客機と同じように全区画に設置されています。

 座席だけでなく、CA(客室乗務員)が用いる簡易キッチン「ギャレー」なども旅客機仕様のまま使用されています。試験に用いられていると見られる器材は、通常の客席が立ち入り禁止テープで区切られた箇所に設置されているようでした。


成田空港に飛来した「エコデモンストレーター・エクスプローラー」(2023年6月12日、乗りものニュース編集部撮影)。

 このように、「とても旅客機らしさの残った試験機」である「エコデモンストレーター・エクスプローラー」は、今回、計4か国の航空当局が共同した「次世代航空交通システム」の実現への取り組みへの一環で、世界初となる実際の旅客機を用いた「次世代航空交通システムに関する試験飛行」のために飛来しています。

 試験されている「次世代航空交通システム」が実運用で導入された場合、複数国の空域を飛ぶ航空機の相互間隔が適切に保たれ、地図アプリやカーナビのように、最適な経路と通過時刻をリアルタイムで調整することが可能となるといいます。その結果、到着時間の予測が容易になることで定時性が向上するほか、CO2排出量の10%削減、混雑の緩和による上空待機の軽減といった効果が期待されているとのことです。