電車の運転士の「掛け声」の代名詞である「出発進行」。とりあえず駅を発車するときに前を指差して言ってると思いきや、実はきちんと意味がありました。

「出発進行」ってそもそも何の意味?

 電車の運転士の「掛け声」の代名詞である「出発進行」。とりあえず駅を発車するときに前を指差して言ってると思いきや、実は微妙に違うようです。


列車を運転する運転士のイメージ(2019年6月、草町義和撮影)。

 よく聞く「出発・進行」の掛け声は、「出発信号機が、青信号になっているから、列車を発車させてもOK」ということを、指差し喚呼したもの。

 運転士の指差し喚呼の対象は、窓の外の信号機や速度標識から、車内の表示灯、持参の運転時刻表までさまざまです。ミスなく仕事を行うため、必要な情報を勘違いなく漏れの無いように、どの業界でも意識して行うよう努められています。

 鉄道信号機の情報には、「何の信号機が」「どんな点灯(現示)をしているか」で構成されます。たとえば信号機の種類は、以下のようなものがあります。
・閉塞信号:線路上を一定距離で区切り、そこに列車を原則1編成しか入れないとされる「閉塞」に、入っていいか入ってはダメかなどを司る。どの場所の閉塞信号かは番号で区別され、「第3閉塞信号」など。
・場内信号:駅の構内に入っていいかどうかを司る。
・中継信号:次の信号がカーブの先で見えない場合など、あいだに便宜的に設置される信号。
・出発信号:駅を出発していいかどうかを司る。すぐ近くに列車がいたり、分岐器(ポイント)が違う方向に向いていたりする場合は、電車を入れないように赤信号を点灯させる。

 また信号の現示は、色ではなくその意味で喚呼されます。赤なら「停止」、黄色なら「注意」、黄色2灯なら「警戒」、青なら「進行」などとなります。また中継信号は1色しかなく、その並び方で意味を表します。

 運転室の後ろから見ていると、これらを組み合わせた喚呼として、「第1閉塞・進行」「中継・進行」「場内・注意」などいろいろ聞こえてきます。もちろん、ダイヤ乱れなどで前に列車が詰まっている場合など、黄色信号でひとまず発車する場合は「出発・注意」と喚呼することになります。

 ちなみに、「出発進行」を言わないこともあります。たとえば、簡素な駅で線路の分岐もないために出発信号機そのものが設置されていない場合です。なお、その場合でも発車時喚呼は「戸締め・点(ドアが閉まった合図灯が点灯したのを確認)、発車・14時37分45秒定時(時刻表を確認)」といったものが欠かせません。

 さらに、最近はATC(自動列車制御装置)の導入で、そもそも屋外に信号機が立てられていない路線も増えてきました。速度規制や進行の可否は運転台に標示されるため、「窓の外への指差し確認」も次第に当たり前ではなくなっていきます。