「何をしてもうまくいかない人」が「何の不満もない人」よりも持っている、素晴らしい可能性とは?
「アイデアが思いつかない」「企画が通らない」「頑張っても成果が出ない」と悩む方は多くいます。その悩みを解決するために「個人のセンス」も「やみくもな努力」も必要ありません。人に認められている「優れたアイデア」から自分の脳内に「再現性のある回路」をつくればいいのです。『発想の回路 人を動かすアイデアがラクに生まれる仕組み』の著者、クリエイティブディレクター中川諒氏による「いつも結果を出す人」の秘伝の思考技術を紹介します。
「うまくいかない」ときの工夫から世界が変わる
アイデアは閃きではなく、いつも工夫から生まれます。
そして工夫の出発点は、「うまくいかない状況」です。
うまくいっていないからこそ、その状況を脱するために人は工夫しはじめます。
たとえば日本を代表するプロダクトも、最初は小さな工夫から生まれています。
世界生産累計台数1億台を超えて、電動機つきモビリティ生産台数世界最高記録を樹立したホンダの「スーパーカブ」。
この発明もホンダ創業者の本田宗一郎氏が、買い物帰りの妻が重い荷物を載せて自転車で走っている姿を見て、戦後不要になって大量に余っていた陸軍の無線用のエンジンを補助動力として自転車に装着してみたという工夫から生まれました。
世界販売台数1億163万台を記録した家庭用ゲーム機、任天堂Wii。
コンセプトワークを手がけた玉樹真一郎氏の『コンセプトのつくりかた』(ダイヤモンド社)によると、テレビゲームが家庭の中で悪者扱いされていたことが発想の出発点になったそうです。
悪者扱いの原因となっていたのが、家族の誰か一人がテレビゲームをするとリビングのテレビを独占し、家族の分断を生むことでした。
そこで開発チームは「鍋を囲むようなゲーム」というコンセプトをつくります。家族みんなで鍋をつつくように、誰でも参加できるゲームや世界観づくりを工夫したことが、Wiiの大ヒットの要因となりました。
ホンダのカブや任天堂のWiiなど、日本にとどまらず世界中で愛されているこれらの商品。できあがって成功しているアイデアだけを見ると、自分も同じアイデアが出せるとは到底思えません。
しかし、それらの素晴らしいアイデアも、小さな工夫が出発点だったのです。そう考えると、少し勇気が湧いてくるのではないでしょうか。
うまくいっていない状況は、強いアイデアを生みます。
それは自分だけでなく、他の人たちも同じことで困っている可能性があるからです。
自分の困りごとは、誰かの困りごとである可能性が高い。
だから工夫から生まれるアイデアは強くなるのです。
「アイデアを出してください」と言われると、どこから考えていいか迷ってしまうものです。
しかし、「どうすれば毎日がもう少しうまくいくと思いますか? 工夫できることを考えてみてください」と言われると、頭は動き出します。
自分の目の前の困りごとに対する、小さな工夫を考える。
そう聞くと、アイデアをつくることも簡単に感じてきませんか?
少しでもそう感じることができれば、あなたはもうアイデアを考えるスタートラインに立っています。
(本記事は中川諒著『発想の回路 人を動かすアイデアがラクに生まれる仕組み』から抜粋し、一部を改変・編集したものです)