特別塗装が施されたドイツ空軍のユーロファイター戦闘機が2023年4月、イスラエル上空を飛ぶために派遣されました。今回のミッションは友好関係の醸成だったようで、過去にはイスラエルの戦闘機がドイツ上空を飛んだこともあったようです。

ドイツとイスラエルの友好を示す特別塗装機の名は?

 ドイツ空軍は2023年4月下旬、イスラエルの建国75周年を記念する祝賀飛行へ参加するため、3機のユーロファイター戦闘機と1機のA330MRTT空中給油・輸送機を同国へ派遣しました。

 イスラエルの建国は西暦(グレゴリオ暦)では1948年5月14日となっていますが、ユダヤ暦ではイヤル月5日となっていることから、それを祝う記念日は毎年異なります。今回は4月26日が該当することから、2023年の建国記念日はその日に行うことと定められていました。


イスラエル空軍のF-16戦闘機(奥)とともに飛ぶドイツ空軍のユーロファイター「イーグル・スター2.0」(画像:ドイツ空軍)。

 建国記念日には毎年、イスラエル空軍も戦闘機など各種軍用機を飛ばして独立を祝います。その際、国内の各都市を巡回するように飛行しますが、それには外国の軍用機もセレモニー的に参加することが多く、今回ドイツ空軍の機体が派遣されたのも、このパレード飛行に参加するためでした。

 なお、パレード参加に際して、ドイツ空軍はドレスアップした特別塗装(正確には模様がプリントされたフィルムのラッピング)された1機のユーロファイターを用意。「イーグル・スター2.0」と命名されたその機体には、主翼上面にドイツとイスラエルの国旗が描かれ、垂直尾翼にはイスラエルの国名とともに「75」という数字が大きく掲げられています。

 現地の報道によると、「イーグル・スター2.0」は建国記念日の当日にイスラエル空軍の戦闘機と編隊を組み、テルアビブやエルサレムといった大都市の上空を飛行。エルサレムではヤド・ヴァシェム(ホロコースト記念館)、イスラエル議会議事堂の上空も飛んだそうです。

「エア・アンバサダー」で来日した独空軍総監、今回もイスラエルへ

 ドイツ空軍というと、昨年(2022年)にインド・アジア地域への大規模展開訓練「ラピッド・パシフィック2022」を行った際、その訓練を象徴する特別塗装のユーロファイター戦闘機「エア・アンバサダー(空飛ぶ親善大使)」を用意し、訓練の最終工程では航空自衛隊の百里基地にも飛来して、話題になったのが記憶に新しいところです。

 今回の「イーグル・スター2.0」も、「エア・アンバサダー」と同じくドイツ空軍が用意した特別塗装機です。ただ、その名前からわかるとおり、じつは2代目で、初代「イーグル・スター」は2021年にイスラエルで行われた「ブルー・フラッグ 2021」演習にドイツ空軍が参加するときに準備されたものだそう。今回の「2.0」はそれに続くものであり、ドイツ空軍にとっては、ドイツとイスラエルの交流を象徴する存在として用意したもののようです。


特別塗装機「イーグル・スター2.0」とともに写真に収まるドイツ空軍総監インゴ・ゲルハルツ中将。昨年は「エア・アンバサダー」を操縦して百里基地へも飛来している(画像:ドイツ空軍)。

 実はドイツ空軍とイスラエル空軍の交流は、軍事演習を通じて以前から行われており、イスラエルで実施される「ブルー・フラッグ」演習にドイツ空軍は2017年から参加しています。一方のイスラエル空軍も、2020年にドイツで実施された「ブルーウイングス2020」演習に参加すべく、ドイツ本国に戦闘機を派遣しており、このように両国の戦闘機は相互に行き来することで、軍事演習を通じて信頼関係を醸成しているといえるでしょう。

 なお昨年、ユーロファイター戦闘機を自ら操縦して来日したドイツ空軍総監インゴ・ゲルハルツ中将も今回のイスラエル展開に参加しており、セレモニー参加後に展開部隊がドイツ本国へと帰還する際には、やはり「イーグル・スター2.0」の操縦かんを自ら握って、3回の空中給油を含む6時間もの長距離飛行を無事こなしたそうです。

 ドイツ空軍が「エア・アンバサダー」や「イーグル・スター2.0」のような特別塗装機を用意し、活用している様子を見ていると、他国に特別塗装機を派遣し軍事的な交流を図ることが、結果として国家間の信頼を醸成する働きをしていることがわかるのではないでしょうか。